第58話
「ユースケ様、ご足労いただいて申し訳ありません」
「気にするな。自分で手に負えないなら俺を呼んだのは正解だ」
勝手に対応して下手に相手を怒らせるよりかは良い。
普通の冒険者ならともかく、王女な上に聖女というよくわからないくらい偉そうな立場の人が相手ならばなおさらだ。
「それで?王女様ってのはどこにいる?」
「表のカウンターで別のヒューマンスライムが対応しています」
商品倉庫から店に行くと、聖職者だと一目見て分かる白いシスター服を着た少女がヒューマンスライムにひたすら神の教えを説いていた。
教えを説かれている当のヒューマンスライムはポカンとしている。神を信じる概念そのものが無いモンスターに宗教説いてもなぁ。
「あなたがこのお店の主人ですか?」
カウンターの奥から出てきた俺を見つけて、王女様が早速声をかけてきた。
にこりと浮かべる可憐な笑顔はとても商品を集ろうとするような悪人には見えない。
「はい。そうですが……どうしました?」
「私はこのダンジョンを攻略しに来ました。そのためにあなたのお店の商品を寄付してほしいのです」
…………寄付という名の徴収か?そもそもなんで俺がそんな事しないといけないんだ。
てか寄付って要求するものだったっけ?
「何故?」
「私は聖女です」
「はい。そうですね。で、なぜ俺があなた方に商品をただで渡さないといけないのでしょうか?」
「?」
どうにも話が噛み合わないな。
王女様は不思議そうに後ろにいる従者らしき人たちを見た。
「どうしてこの方は私たちに寄付をしないのですか?」
「…………どうやら彼はシルビス教の信者では無いようです。おい店主、君はどの神の信者なんだい?」
「どの神も信仰してませんよ」
強いて言うなら縁教?あの人絶対この世界の神様より強いでしょ。ダンジョンコアの父と拳で語り合った(一方的に)みたいだし。
「ではシルビス教に」
「いや、そういうの間に合ってます」
そう言って俺は店のドアに貼ってある【宗教勧誘お断り】と書いてある張り紙を指さした。
まさかふざけて貼ってたあれが役に立つとはな。
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