第40話

「で、そのままダンジョンバトルを申し込まれたと。マスター、何しに外に行ったんですか?」


「全くもって面目ない」


 ダンジョンマスターの少女はあの後、俺にダンジョンバトルを申し込んできて一週間後にすると告げて何処かに飛んでいった。


 俺の返事も聞かずに帰られて困惑したが、仕方なく村に戻って、急用ができたとだけ告げてダンジョンに戻ってコアちゃんに報告した。


 今回の外出の成果、失恋してダンジョンバトルを申し込まれた。

 これだけか……虚しいぜ。


「それはそうとダンジョンバトルかぁ。そんなの、あるとだけは聞いてたけどルールとかどうなんだ?」


「……私にその情報は記載されていません」


 コアちゃんが目をそらした。

 どうしようか。ルールを知らずに反則負けとか嫌だぞ。


「そんな時はなぜなに縁さんの時間だよ!」


「うわっ、先輩⁉急に出てこないでくださいよ」


 後ろから元気よく登場したコアちゃんの開発者、伊達メガネをかけた縁先輩は黒板を設置してチョークを持った。


「……つまり縁先輩がレクチャーしてくれるって事ですか?」


「うん。だから雄亮君と輪名……じゃない、コアちゃんだったっけ?はあ、違和感あるなぁ……二人はそこに座って大人しく聞きな」


 そういえばコアちゃんの見た目って先輩の妹と同じ、と言うかモデルにしたんだったな。やり辛そうな雰囲気になるくらいならなぜそんな設定にした?


「さて、ダンジョンバトルのルールを説明しよう。まず勝利条件は相手のコアかマスターの破壊か殺害、降参で、敗北条件はその逆。それ以外は反則とかも無いよ、何か質問はあるかな?」


 要するに何でもありってことか。


「ダンジョンバトル中、入り口やダンジョン内にいる冒険者はどうなるのですか?」


「良い質問だコアちゃん。バトル中はダンジョンの入り口同士が繋がるから本来の入り口は消える。中の冒険者はそのままバトルに巻き込まれるよ。だから冒険者を防衛戦力として使う戦法も出来るってことだね」


 でもそれをやってしまったら確実に死人が出る。うちのダンジョンコンセプト的にそれは避けたいところだ。

 ジェノルムに相談して当日はダンジョンから人を追い出すか。


「マスターを殺してダンジョンバトルに勝つメリットは?」


「うーん、正直君にはあまり無いね。破壊、殺害パターンだと、相手のDP全てが手に入るんだけど君、必要ないでしょ?」


 確かにこのダンジョンはDP収入以外特別いいところは無いからな。


「だから降参させて自分の陣営に引き込んだ方がいいよ。同盟相手にはDPの融通が簡単にできるし、盟主に逆らうと死ぬから裏切られる心配も無い」


 実験の結果、スライムは人間タイプやモンスタータイプに進化すると分裂しないのが分かったから、同盟相手からモンスターを、俺からDPをと言うやり取りができる。

 そうしたらダンジョンの戦力向上になる。


「だったら降参させて同盟を組む方針で行くか。縁先輩、他にも質問があるんですが」


「うんうん。どんどん聞いてくれたまえ」


 この後、いくつか縁先輩からダンジョンバトルについて教えてもらい、俺はバトルの下準備に取り掛かるのだった。






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