第34話
「確かこのあたりのゲートだった気が……あぁ当たりだな」
テレポートゲートには、迷わないようにどこのゲートに繋がってるのかを冒険者が勝手に看板を付けていた。
助けたついでだからチナを村まで送り届ける為に俺は付いていくことにした。
よく考えてみたらこれってこの世界での初外出じゃね?
ダンジョンのマスター権限をコアちゃんにも渡しておこう。
「あまり変わらないです?」
ゲートに乗ってテレポートしたチナが首を傾げて聞いてきた。
「周りを見ろ。他のゲートは無いだろう。ちゃんと移動してるさ」
「本当ですぅ!」
そして、商人用の通路を登って外に出た。
久しぶりの太陽だ。え?この世界の太陽3つあるの?
やべえ、急に不安になってきた。念の為にメガネ型鑑定機を付けておこう。これはダンジョン内で使える鑑定より劣っていて、名前と簡単な説明だけが分かる。
「ユースケさんいくです。私の村はあっちですよ」
鎧を引っ張られてバランスを崩し、よろけてしまう。
グニャリとしたものを踏んだ感触がする。中学の頃犬の糞を踏んだときと同じ不快感……何だこれ?
「スライムです」
の割には耐久力がありすぎな気が……ん?こいつ俺がダンジョン周辺の見張り用に配置してるヒュージスライムが縮小してるのか。あっち行ってろ。
「どうしたんです?初めて見るものばかりって顔してるです」
「あ、いや、実は俺遠くの土地からテレポートゲートを使って来たんだ。だから色々珍しくてね」
「そうだったんですね。それはそうと早く私の村の人を助けに行きたいのです」
「おう、すまん」
結構図々しくなってないかこの子。
村へ行くと外には人が全くおらず廃村みたいだった。
「誰かいないですぅー!チナが帰ってきたです!」
チナが叫ぶと村の奥から一人の青年が走ってきた。
「チナ!無事だったのか。心配したんだぞ!勝手に飛び出しやがって!本当に良かった……」
青年は泣きながらチナを抱きしめた。
この青年にとってチナは大切な人なのだろう。
「うぅ、ゴメンですでもゾルたちは村を守らないとだめです。だったら私しかダンジョンに行ける人はいなかったです」
「だがよ……」
ゾルとチナを見るに二人は友達以上恋人未満ってところか。もう少ししたら付き合い始めそうな親密さだ。
短い恋だった。いや、口に出してないからノーカンだノーカン。
彼女たちの幸せを祈ろう。
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