第31話

「キャァーーー!」


「へっへっへ、いくら叫んでも無駄だぜ。ここは迷路の奥深く。誰にも聞こえやしねえよ」


「いい加減諦めろよ」


 俺が準備している僅かな時間でもう現場は、クライマックスになっていた。

 こいつら手慣れてるなあ。

 人さらいは三人、チビ、デブ、ノッポだ。溢れる三下感。

 チナは小部屋に追い詰められてノッポが部屋の前で見張りをしている。


「とりあえずさらばだ。ノッポ君」


「は?」


 おそらくノッポ君の最期の言葉の続きは誰だてめえ!だったのだろうが、首がゴトリと落ちてしまって喋ることはなかった。

 可哀想に、セリフがは?だけだなんて。


「なんだぁ?……ズティック!テメエか!よくもズティックを!」


「人の人生をめちゃくちゃにしているんだ。自分がされても文句はあるまい?」


「うるさい!死ねえ!」


 剣を抜いて走ってきたデブをスパン!上半身と下半身をお別れさせた。


「へ?」


 情けない声を上げて、自分が斬られたと知覚すると同時にテブは絶命した。

 この鮮やかな剣技は俺の技術……ではなく、あらかじめ決められた動作をスライムアーマーに覚えさせておいて、命令するとその通りに動くように設定してある。


 もちろん俺の体の可動範囲でしか動かせないし(動かせるけど骨と筋肉がバキバキになる)調子に乗って使い過ぎたら筋肉痛がひどくなる弱点はある。

 今の一撃でも振った腕がピリピリする。


「ひっ、見、見逃してくれ」


 二人を斬ってその血がポタポタと滴るままの剣を、残ったチビの首筋に当てると命乞いを始めた。


「お前の所属してる組織について吐け」


 俺が真っ黒の全身鎧なので恐ろしさが極まったのか、チビは面白いくらいペラペラと人さらいの組織について喋った。

 よし、言質は録音したぜ。後でジェノルムに渡して組織を潰してもらおう。


「なるほど、助かった」


「へ、へへっ」


「じゃあな」


 すっと剣を引くとほとんど抵抗なくチビの首は落ちた。

 こいつは助けてもらえると思ってたらしいが、俺は助けてやるなんて一言も言ってないからな。


「さて、大丈夫かい?お嬢さんって、あれ?」


 どうよ俺の活躍、と振り返るとチナは気を失ってた。チョロロロロー、漏らしてる。

 流石にただの村娘に、二人首チョンパに真っ二つの絵面は刺激が強すぎたか。


「クリーンスライム」


 気絶してから漏らしてたみたいだし、起きる前にキレイにしてあげたら気づかないだろう。見なかったことにするのが紳士だ。







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