第22話

「報告書は読んだ。それで?これがあの」


「は、はい!アダマンタイトスライムであります!」


「…………」


 報告書を読んだ時はモブダたちの正気を疑ったが、だからといって実物を見せられると言葉を失ってしまう。


 俺はジェノルム。アチーラの街のギルドマスターだ。

 これでも元Aランク冒険者で、もう少しでSランク冒険者になれるとまで言われていたしその自負もあった。


 だが、五年前に利き足を失ってからは、ギルドマスターとして後輩冒険者の育成に携わっている。手合わせをしてそいつの欠点を教えたり、一緒に鍛えたりとまだまだ気分は現役だ。


 このモブダたちもその後輩で、アチーラの冒険者ギルドの期待の星であるこいつらのパーティーにさり気なくダンジョン調査の任務を勧めたらすぐに食いついた。


 未探索ダンジョン調査の任務ってのはAランク冒険者になるための必須任務なので、将来有望な冒険者には俺が直接声をかけて勧めている。


 大体は、簡単な地図を作って帰ってくるだけだが、時には面白い発見をする奴らがいる。

 だが、今回はとびっきりだ。


 アダマンタイト製の剣が一般人でも行けるような場所で手に入る上に、一月に一回ではあるがアダマンタイトそのものが作れる新種のスライム。


 スライムなんて街中に居ても相手にされないドブネズミ以下の雑魚中の雑魚だぞ。

 進化種だったとしても新人冒険者がパーティーを組めば怪我なく倒すことはできる。


 普通に考えればローリスクハイリターンな大当たりのダンジョンだ。

 しかし、ここまで手に入るものが高価では発生して数週間のダンジョンとは思えないな。


 稀に発見したダンジョンが実は発生してから数百年たっていた高難易度ダンジョンだった。なんて報告もあるが、そういったダンジョンは軒並み前人未踏の秘境にあるもんだ。


 今回のダンジョンは、近くの村の狩人がいつも通りのコースを歩いてたら見つけたそうだから間違いなく若いダンジョンのはず。


 怪しさしかないが、この通り調査して無事に帰ってきた奴がいるから立入禁止にするわけにもいかない。


 だが、元Aランクの冒険者の勘がこのダンジョンは臭いと言っている。絶対に何かあるはずなんだが、それが何なのかはハッキリとはわからない。


「……面倒なダンジョンだな」






============================




もしも少しでも面白いと思ったら、フォローやレビュー、応援をしていただけると、非常に励みになります。よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る