第21話

「意外でした。マスター位の年頃だと、美女を攫ってピーやピーーしてピーーーすると思いますが」


 可愛い顔して放送禁止用語を羅列しないでもらえるか。反応に困るだろう。


「そんなことしてみろ。謎の力によって18歳以上しか行けない場所まで飛ばされるぞ、それに……」


「それに?」


「そういう事は、ちゃんとお付き合いしてだね……」


 しばらくの沈黙の後、コアちゃんがトコトコと近づいてきてなんとも言えない表情で頭をなでてきた。


「な、何だよコアちゃん」


「マスターが意外と純情だったので思わず。そのうち、うちの子の純情を弄びやがって!この泥棒猫!って怒らないといけない事態が起きそうですね」


 それ俺とコアちゃんの立場逆転してない?

いや、俺がコアちゃんの彼氏をえり好みする資格も無いけどさ……あるとしたら先輩か?


「てか何でオカン目線なんよ?」


「マスターがヘッポコなので」


 へ、ヘッポコ……自覚がある分余計に心が傷つく。


「どうせ殺す殺す言っときながらも最後は二の足を踏むでしょうから、今は私が手を下しますよ」


「……違う。それは違うぞコアちゃん。俺はお前の、ダンジョンのマスターだ。背負わなければならない責任は背負う。これは最低限のけじめだ」


 ここで人殺しをコアちゃんに任せてしまっては、俺は人として堕落してしまうような気がした。

 堕ちた人間は理性のない獣と一緒だ。自分で作ったルールも守れない獣に果たしてあの先輩はダンジョンマスターを任せ続けるだろうか?


 たとえ自己満足だとしても自分が正しいと思う事をする。縁先輩は俺がそんな思いを持ってると知って、それを助けるためにコアちゃんの新機能をくれたんだと思う。


「オォウ、うちの子がこんなに成長して、今日はお赤飯かしら」


「もう、ちゃかすなよ」


 人間モードになってからのコアちゃんは、心なしか感情表現が豊かになってる気がする。

 本当に人に見られてるような気がして悪いことができん。先輩はこれも想定してたのだろうか?


 俺は掴みどころの無い製作者の姿を思い出しながら次に来る冒険者に備える為にダンジョンの改良に取り組み始めた。






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