第2話

「まじかよ。こんなダンジョン、小学生でもクリアできるぞ。そう言えばここってどんな世界だ?」


 ファンタジーなのか中世風なのか、はたまたSFか。


『魔法ありの中世ファンタジーの世界です。冒険者と呼ばれる職業があり、彼らはダンジョンコアの破壊が仕事です。ちなみに私が破壊されるとマスターも死にます』


「だめじゃん!それ絶対死ぬやつじゃん!詰みじゃん。どうすりゃいいの?」


『安心して下さい。ただいまダンジョン開場までの準備期間となっているので、1ヶ月の間は入り口は隠蔽されていて物理的に侵入もされません。開こうと思えばいつでも開けますが』


 ……一応、一安心ってとこか。

 そこで俺はスライムの説明文を思い出す。


「コアちゃん、スライムの進化条件って分かる?」


『……いろいろありますが、主に食事です。食べた物の特性を持つスライムになります』


「進化しても分裂は?」


『殆どの種ができます』


 そこまで聞いて脳裏にちらつく、進化しなければ赤ん坊に踏まれただけで死ぬというスライムの説明文。


 裏を返せば進化すれば強くなるということだ。少なくとも赤ん坊に負けることはなくなるのだろう。

 やりようによってはどうだろう。何とかなるかもしれない。


『次に階層追加です。1000DPで一階層追加され、合計100平方メートルのフロアが追加されます。しかし一階層追加するごとに必要なDPは増えていきます。ですが自力で拡張することも可能です。その場合は、一律一フロア100DPで整地のコマンドを選択すれば壁がダンジョン壁となり破壊不能となります』


 自力で拡張した場合は100平方メートル以上のフロアも作れるらしい。

 ただでさえ雑魚スライムしか召喚できないんだ。階層追加に無駄なポイントを使ってる場合じゃないな。


「掘るか……」


 ショップの雑貨類の欄を見たらピッケルとシャベルがそれぞれ15DPで売っていた。

 スライムより高い……。


「ダンジョンの現状はどうなってるの?」


『全三階層で最下層はこの部屋とつながってます。特に設定を変更しなければ、新しい階層を追加すると、最下層にこの部屋は移動します』


 スライムしかない三階層ダンジョン……そうだ!


「コアちゃん、この部屋をダンジョンの入り口に移動できる?」


『できますが、何故ですか?』


 コアちゃんから、初めて戸惑いの声が出た。

 どうやらコアちゃんは単純なAIみたいな物じゃないみたいだ。ちゃんと感情があり、思考する生き物だ。


「この部屋を使ってダンジョン攻略を手伝う店を作るんだよ。まさかダンジョンマスターが、自分のダンジョンの攻略を手助けするなんて誰も思わないだろう?」


『……なるほど、生き延びる面だけで言えば良案かと思います』


 まさに、灯台下暗し。攻略する冒険者の情報も得られるし、強そうなやつが来たら最悪売り物の食べ物に下剤なり睡眠薬なり入れてしまえばいい。


『お店の評判が落ちますからそれは本当に最後の手段ですね』


「分かってるさ。思っただけだよ。それで、この作戦だとダンジョンの階層は深く、広くないといけない。ダンジョン内にコアがないのがバレたら最終的にここが疑われるからな」


 そう言いながら、俺はシャベルとピッケルをそれぞれ五本買って、手伝い用にスライムを九匹召喚した。


「てことで俺は掘りに行ってくる。ところでDPはどうやって増やすんだ?」


『現状だと、マスターの魔力を私に注ぐか、モンスターを分解すると手に入ります。スライムは一日一回分裂するので多めに召喚しておいたほうがよろしいかと』


 すぐに1000DPを残して全てスライムにした。





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