第5話

マンションのエレベーターを降りた日菜と貴子。

「日菜ちゃん、元希はどこにいるの?」

「こっちです…」


僕たちが住んでいるマンションにはエントランスを出てすぐ右には公園がある。

元希と助けてくれた男性は、日菜が呼びに行った瞬間は公園の外にいた。ここら辺は朝の車通りは少なく、宅配のトラックがたまに通るぐらいの道だった。


しかし日菜が貴子を連れて戻ったときには二人は公園のほぼ中央、目立つところにいた。男性が血の出てる元希を運んでくれたのだろうか…。



「この男の子のお母様ですか?」

「はい、秦泉寺元希の母親の貴子です。えーと…状況がまだ把握しきれていないのですが…」

「そうですよね」

と言うと、男性は日菜が言葉を発する前に今この場で起こっている状況を説明してくれようとしたその時


「しゅうまくん!?」

「たかこせんせい!?」



男性は元希の様子を見ながら説明してくれようとしていたので母親の顔をよく見ていなかったが、見知らぬ人に急にしゅうまくんと呼ばれ、顔を上げてみると貴子先生と一瞬で気づいた。

そう、この男性は8年前、当時6年生の担任をしていた貴子が「おなかに赤ちゃんを授かったので小学校を退職したい」と校長先生に申し出た年に担任をしていた、貴子の教師生活最後の年の教え子、奥田周磨おくだしゅうまだった。

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