第1話

僕・秦泉寺元希じんぜんじげんきは、現在1人暮らしをしながら都内の大学に通っている大学3年生だ。今は冬も終盤に来ており元希が留年しなければの話だが、来年度からは最高学年の4年生に進級する。



元希は某配信アプリでライバー(配信者)として活動していた。活動名は「じんきー」。配信を始めた時に適当に本名をいじってつけた名前だから特に深い意味はないが(笑)



小学校低学年の時、僕の小学校では各地域の子ども会ごとに最上級生の6年生を先頭に、学校に集団登校や集団下校をする決まりがあった。

しかし、僕の住んでいる地域では小学生が2人しかいなかったので毎日2人で登校していた。

6年生で最上級生の波口日菜なみぐちひなと。

入学したばかりで1年生の元希は日菜お姉ちゃんの後ろ(2人しか居ないのでほぼ隣)に並んで登校していた。


しかしこの日、元希の様子がなにかいつもと違う…

「元希くんどうしたの?体調悪い?」

日菜は僕の顔を覗き込み登校中に何度もそう聞いてくれていたが、元希の返事はいつも決まって

「ううん、大丈夫」


何度聞いても絶対に大丈夫じゃないような声のトーンでかえってくる同じ答えになにか異変を感じた日菜は、僕を連れて元希の家へ引き返すことにした。

学校の始業時間も迫っていて自分も遅れるリスクがあったのに、自分が学校に遅れて先生に怒られるよりも、同じ地域に住んでいていつも一緒に登校している1年生の体調を優先したのだ。

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