第四話 イジメられていたからといって集中砲火を食らっているとは限らない

 凪は、学校が普通に好きである。仲の良い友達は居ないが、好きである。ぼっちで常に生活費のことを考えて内職をしているが、たまにAクラスの三人組にいじめを受けるが、好きである。好きな理由は、生きる知恵を学べるからだ。


「今日の授業、は…あ、もう受けなくても大丈夫なやつだ。さぼろ」


 まあ、好きだからと言って真面目と言うわけではないのだけど。




 凪のいる学校は、公立アスタシア学園という名前である。世界でも有数の学舎で、魔法無しで受かった凪は意外と優秀なのだ。

 アスタシアは広く、さまざまな設備がある。訓練施設、食堂、ショッピングエリアなどなど。凪とネオは、今訓練施設に居た。ネオのできることの確認と、凪の、昨日つかんだ魔力の動かす感覚を元に魔力を動かそうという目的だ。


「ネオってどんなことができるんですか?」

「いろいろできる。戦闘は大体全部できる」

「なるほど…じゃあとりあえず、訓練用モンスターと戦ってみますか」

「わかった。まかせて」


 翼をばさり、と広げるネオ。服には翼と接触した所を透過する仕組みが施されてる。そのため、自由に動かせるのだ。


『ぐぎゃぎゃぎゃ!」

『げきゃ!』

『げぎゃぎゃ!』


 ホブゴブリンが六体ほど出てくる。一般的な一対いっつい天使と同じ適正である。

 一対天使とは、翼が二枚ある天使のことだ。基本的に、天使の翼は二枚ずつ、一対ずつ生えてくる。そして翼の数が多ければ、その分力も多くなるのである。


「や」


 右足を真横に足を振った。雑に振られたそれは、空気を押し出し、弧の形で飛ばす。

 ホブゴブリン達は、なす術もなく上半分が弾け飛んだ。


「ワァ…シュゴイ…」

『グゴォォォオオオオ!!!』


 ホブゴブリン達の死体が光の粒子として消え始め、凪が驚きの声を出すと、ドラゴンが現れた。


「エ…えぇ!?Sランク!?急に!?」


 正気を取り戻した凪は、驚きの声を上げた。さっきまでCランクだったのに、急に三つ上のSランクが出てきたため、当然と言えば当然だ。


『グギャアア—————

「ナニシテル?」


 Sランクモンスター、レッドドラゴン。赤い鱗に覆われ、蜥蜴に羽が生えたような見た目の、最も有名なモンスターの一体である。ブレスの威力はもちろん高いが、それ以上に厄介なのは、高い魔力操作性と、己の渾身のブレスを受けても無傷という、その防御力にある。

 レッドドラゴンは、近くに居た凪に攻撃をしようと声を上げた。


 ドンッ!!!

「みゃ!?」


 声を上げたのだが、その直後、ドラゴンの胴体は消し飛んだ。そして、衝撃音が轟く。その音に凪は驚き声を出していた。

 何が起きたか、答えは簡単だ。状況から見て、誰でもわかるだろう。ネオがドラゴンを一瞬でワンパンしたのだ。風圧でドラゴンの体を貫き、ちょっとだけクレーターを作った。………つおい


「大丈夫?凪」

「エ、うん、大丈夫!」


 凪は思った。ネオ強すぎない?最強かよ、と。


「次きますよ!」

「わかった」


 凪は、あれこれ考えるのを、やめた。

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