第10話
チュン、チュン、チュン。
目が覚めると右腕が温かい。僕はメルを見ると、彼女がこちらを見ていたので微笑みながら言った。
「メル、おはよう」
「おはようございます♡」
「どうだった?」
「私、幸せです」
「僕も幸せ」
「あの時、カイ様に出会えて本当に良かった。もうダメかと思ってたから……」
「僕もメルを助けることができて良かったよ」
彼女はそっと僕の唇を奪う。それから布を口元に当て、恥ずかしそうに笑っていた。僕はその姿を見て何てかわいいんだろう、本当に僕の妻なの? そんなことを思いつつも大きな双丘に目がいってしまった。
「エッチ♡」
「ごめん」
「ううん。カイ様に見られるのは平気です」
コンコンコン
『カイ、朝ごはんできているわよ~、起きていたら下に降りてきてね』
母さんがドア越しに僕らに声をかけてくれた。僕らはベッドから降りてから、服を着始める。
(チュ♡)
メルはキス魔なんじゃないかと思うくらいキスをしてくる。もしかしたら今まで溜めていた思いが溢れて、こうなったのかもしれないなと思った。
◆
「うーー」
「リックおはよう」
「おはよ。頭が痛え」
「飲み過ぎなんだよ。ソプラは?」
「ああ、まだ寝てるぞ」
「そうか」
「おはようございます」
「嫁登場。夕べは楽しんだか?」
「はい、カイ様と楽しみました」
「よろし。しかしまあ、本当に嫁になれてよかったな」
「はい!」
「まっ、浮気されないように頑張ってくれ」
「……浮気」
「リック。そんなこというなよ。僕は浮気しない。メルだけだ」
「そうかぁ? 結婚する前に女遊びをしてこなかったヤツは、かえって他の女に嵌った時に危ないと思うんだが」
「ご忠告ありがとう。でもそんなことは起きないよ」
「だといいがな」
◆
家族はもう既に朝食を摂っていた。その後僕らが朝食を摂っていると、ソプラが現れる。
「おっは~。カイちゃん、メルちゃん」
「ソプラおはよう」
「おはようございます」
「で、カイちゃん、メルちゃん、どうだったの?」
「良かった。幸せだよ。ね、メル」
「はい。カイ様と一緒で幸せです」
「そっか、そっか。カイちゃんが物足りなくなったら、メルちゃんにテクニック教えるから、その時は言ってね」
(うーん。それ、メル本人の前で言うかな)
朝食を終えて、僕は父さんに、精霊の契約に関することを知っているかどうかを相談しに行った。
「父さん。相談があるんだけれど?」
「ん? 避妊方法か?」
「違う。精霊の契約方法について何か知っているかどうかを聞きたいんだ」
「うーん」
「一応、精霊の契約についての本は解析したんだけど、わからないことが多くて」
「今、その本あるか?」
「ちょっと待ってて」
僕は階段を上がり、部屋にある荷物から精霊の契約に関する本を取り出す。その後、父さんに本を渡すと、「すまん。借りるぞ」と言い、書斎へと向かった。
「カイちゃん、ここにいる?」
「いるよ。何ソプラ?」
「せっかくだからギルドにいってギルドカード更新しない?」
「あぁ。そうだね、そうしよう」
ソプラと話をしていると、リックがやってきた。
「カイ、どうせなら嫁も連れていってギルドカード作ったらどうだ?」
「そうだね。どうメル、一緒に行かない?」
「はい。お供します」
僕らは父さんが精霊に関する本を読んでいる間、ギルドに行くことにした。
◆
「ここだよ」
僕はみんなを王都冒険者ギルドまで連れていき、中に入った。
「あそこが受付」
僕らは受付に行き、受付嬢に声をかけた。
「どのような御用件でしょうか?」
「ギルドカードの更新と新規のギルドカードを作りたい」
「わかりました。では、ご新規の方はこちらの紙に必要事項を書いてください」
メルに用紙を渡し、必要事項を書いてもらう。その間にギルドカードを更新した。
「あー、あたいCのままだ。カイちゃんは?」
「Bだね。現状維持。リックは?」
「Aだぞ」
「そうなのね。あー、Bに上がったと思ったんだけどなぁ」
「ソプラっち、Cのままって当然だぞ」
「なんで?」
「オレら移動ばかりでクエストやってないじゃん」
「あっ」
「カイ様、ジョブの欄は何て書けばいいでしょう?」
「うーん。そうだなぁ」
「メルちゃんは「家事見習い」でいいんじゃない?」
「いや、嫁は「無職」だろ」
「それは無い。それだったらハーフエルフでいいわ」
「それは種族。ジョブの欄に人間って書くのと同じだぞ」
「確かにそうだわ」
「ちなみにソプラっちのジョブって何だっけ?」
「お姫様♪ じゃなくて本当は武闘家」
「ほう、じゃあ嫁はお姫様だな? カイが白馬の王子様で」
(うーん。それもどうかなぁ。あっ)
「メル。まだ契約できるかどうかわからないけれど「
「じゃあ、そうしますね」
メルが書いた紙を受付嬢に渡す。僕らはギルドカードができるまでクエストボードを眺めていた。
「ソプラさ、個人ランク上げたいよね?」
「カイちゃん、そりゃそうでしょ」
「何かいいクエストがあればいいんだけれど」
「カイ! 嫁のギルドカードができたみたいだぞ」
僕はメルと一緒に受付に行き、彼女のギルドカードを貰った。
「ランクはFランクからになります。再発行には銅貨五十枚が必要になりますので失くさないようにお願いします」
◆
帰りは何をすることもなく、寄り道せずにギルドから実家に戻った。実家のリビングには父さんがいて、僕らを待っていた。
「戻ったよ」
「おう、おかえり。精霊の契約についてある程度わかったぞ」
「ありがとう!」
「礼はまだ早い。この翻訳した文章の意味を読み解くと、上位精霊などの精霊の種類分け、それと契約のルールが書いてあるだけだ。詳しい契約のやり方は書いていない」
「そうなんだ」
「ああ、それで
「えっ、もしかしてエミル
「カイ、よく覚えていたな。彼女は近くにいるみたいだから三日後くらいにここへ来るんじゃないか?」
「やった! メル、聞いてた?」
「エルフの方ですか? なんだか緊張します」
「エミル姉なら大丈夫だよ。やさしいし」
これでメルが精霊と契約できるかもしれない。エミル姉が来るまでの間、メルだけでなく、リック、ソプラも家に泊まることになった。
「芋焼酎ってまだあります? ソプラっちが飲みたいと言ってます」
「あたい言ってない。リックちゃんが飲みたいだけでしょ」
リックとソプラは父さんに任せるとして、僕はメルに料理を教えてくれるよう母さんに頼んだ。
(メルと母さんが仲良くなりますように)
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