第4話
僕はリック、ソプラと共に新しいパーティー「青りんごワイン」を組んで旅に出る。次の目的地は図書館のありそうな大きめの町だ。
「あるといいな、カイ」
「うん。精霊に関する本があればいいんだけど」
「しかしまあ、ソプラっち強くね?」
「そうだね。身体能力が高いから、
「なに。あたいのことを言っているの?」
「いやいや、ソプラっちは
「リック、そんなことは言ってないぞ」
「へぇー、後で絞めてやるから」
「お前の力じゃ無理だぞ」
「何よ」
「おうよ、やるっていうのか?」
「まあまあ、二人とも落ち着いて」
そんな話をしながら進んで行くと、魔獣に遭う。
◆
「ソプラ、右!」
「どやあぁー」
「リック、ソプラの援護」
「わかってるよ。ふっ!」
『ホーリーアロー!』
◆
三人の連携はまだまだだけれど、戦闘を行うたびに良くなっているのがわかった。
町から町へ、順調に旅は進んでいく。そんなある日の宿屋で、
「おはようございます。ソプラさん」
「おはよう。メルちゃん」
「この席いいですか?」
「いいわよ。これみんなの分の朝食」
「ありがとうございます。前から思っていたんですけれど、ソプラさんって強いですよね」
「ははは、カイちゃんとリックちゃんには負けるわよ」
「最近どうなんですか?」
「そうね。カイちゃんに(戦闘面でこうした方がいいって)求められているから、期待に応えているわ」
「えっ。カイ様に(エッチなことを)求められているんですか?」
「そうよ。頑張って(戦って)いるんだけど、物足りないみたい」
「えーー! 頑張って(奉仕して)いるのに、(おっぱいだけじゃ)物足りないんですか!」
「まあね。せっかく(パーティーに)入れてもらったからね。あたいが(パーティーに)入ったことを後悔しないようにね。頑張らないと」
「(おっぱいを揉まれただけじゃなく)いれてもらった……」
「どうしたのよ?」
「ソプラさん、
(私が襲われることを嫌がって拒否しているから、カイ様はソプラさんに……)
「えっ、破廉恥? なんなのそれ?」
「だってソプラさんはカイ様とエッチなことをしているんですよね?」
「ん? していないけど――あっ、わかった。魔獣との戦いじゃなく、エッチなことと勘違いしているでしょ」
「えっ」
「はーあ。まったく、メルちゃんは何を考えているんだか。求められているって戦闘面のことよ」
(ぷしゅー)
「おはよう。メル、ソプラ」
「カイちゃん。おはよ。ねえ聞いて、メルちゃんが――」
「わわわわわわ」
「メル、どうしたの?」
「いや、あの、その、このソーセージ、苦手だなぁって。はははは」
「ああ、メルはお肉苦手なのか?」
「そ、そ、そうです。私苦手なんです」
「あたいはソーセージ好きよ」
「おっす、早いな、みんな」
「リックおはよう」
「おはようリックちゃーん。なんかね、メルちゃんソーセージ苦手みたいなの」
「ほう、(カイの)ソーセージ(を見るの)が苦手だと。嫁も大変だな」
こうして、みんな楽しく朝食を食べるのであった。
◆
「ようやく着いたね。案内版はどこかな」
僕らは目的地である町に着いて、図書館があるかどうかを調べるために、案内版を探した。
「カイ様。あれが案内板じゃないですかね?」
「それっぽいな。ありがとう、メル」
僕は案内板を見つけ、図書館の場所を探す。
(あった!)
「みんな、僕、図書館に行ってくるから街でも散策して」
「わかった。カイ、その前にお前の荷物を寄越せ。宿を探しておくから」
「サンキュー。リック」
僕はみんなと別れ図書館へ向かう。十五分ほど歩くと図書館らしき建物が見えた。
(思っていたより大きいな)
◆
図書館に入り、カウンターで精霊に関する本があるかどうかを聞く。
「地下一階の閉架書庫にありますね」
「そこには行けますか?」
「はい。この帳簿に書いてもらえれば」
「わかりました。ちなみに精霊に関する本のある場所まで、案内してもらうことはできますか?」
「はい。係りの者に伝えます」
僕は図書館の職員と地下一階の閉架書庫へと行く。暗い空間。本特有の香りが歴史ある場所だと物語っているようだ。
「ここから向こう側までのコーナーが魔法に関する書物のある所です」
「わかりました。ありがとうございます」
「では、失礼いたします」
案内しいてくれた職員が戻っていく。僕はあたりをつけて目的の本を探した。
(うーん)
探し始めて一時間が経った頃、精霊の挿絵らしき本を何冊か見つけた。
(これ、ノームっぽいな。でも文字がわからない、たぶん昔の文字だ)
僕はその中から一冊を選び、本を借りるために図書館のカウンターへ行く。
「すみません。本を借りたいんですけど」
「はい。どれですか?」
「この本です」
「すみません。この本は持ち出し禁止になっています」
「そうか。本を傷めないようにするためか」
(貴重な本みたいだしな)
「はい」
「ちなみに転記することは大丈夫ですか?」
「大丈夫です。紙とペンをお渡ししますか?」
「お願いします」
(転記は久しぶりだな)
僕はカウンター近くにあるテーブルで本の転記をし始めた。昔、教典を転記したことがあり、コツをつかんでいるから時間はそんなにかからないであろう。
◇◆◇◆
「メルちゃん、よかったね。カイちゃんへのプレゼントが見つかって」
「はい!」
私はこの町にある教会で、カイ様のために十字架のお守りを買った。きっと喜んでくれるだろう。カイ様の笑顔が早くみたくて、私は図書館へ行くことにした。
「リックさん、ソプラさん。私、図書館に行きますね」
「おう、気をつけてな」
◆
「ふふ♪ふーん♪ふふ♪ふーん♪」
「ちょっと、そこのお嬢さん」
「ん? 私ですか?」
「迷ってしまったのだが、役所までの道を知らないか?」
私は近くに案内板があるか探し、
「たぶん向こうに案内板がありますから――」
(ふぐっ、何?)
「おとなしくしろ。お前ら連れていけ」
私は口元を押さえられた後、男達に連れ去られてしまった。
◇◆◇◆
「なあ、嫁が帰ってくるの遅くないか?」
「きっと、カイちゃんとデートでもしているのよ」
「でもなあ、なんか胸騒ぎがするんだよなぁ」
「じゃあ、メルちゃんの匂いでも辿ってみる?」
「そんなことできるのか?」
「あたいにかかれば朝飯前よ」
◇◆◇◆
「あーあ、やっちゃった」
僕は本の転記が終わり、メル達のいる宿屋がどこにあるのか、知らないことに気がついた。
(仕方ない、街を歩こう。こっちかな)
僕は自分の勘を信じて歩き始める。五分ほど歩くとリックとソプラの姿が見えた。
「おーい! リック!」
僕は手を振ってから、リック達のもとへ行く。
「カイ!」
「リックお待たせ」
「嫁と一緒じゃないのか?」
「ん? メルと?」
「まずいな」
「どうしたの?」
「嫁が宿屋に帰ってこないから探していたんだよ」
「えっ」
僕はリックからそのことを聞いて驚いた。ソプラは布を嗅いでから、地面を見て
いる。
「カイちゃん。あっちに行きましょ」
「ソプラ、メルの居場所がわかるの?」
「メルちゃんのパンツの匂いと同じ匂いがあっちからするわ」
(男がパンツを嗅いでいたら変態だな)
◇◆◇◆
「ひい、ふう、みい、よう……」
「兄貴、七人です」
「そうか。もう一人馬車に乗せられるな」
「ボス。上玉を連れてきました!」
「おう、でかした」
私は今、知らない場所に連れてこられた。そこには五人の男性と縄で縛られている七人の少女達がいた。
「兄貴。この女、奴隷の首輪をしていますぜ」
「奴隷か」
「はい。処女じゃないと思います。俺らでいただきましょうよ」
「おっ、いいね。じゃあお前ら、その女の手と足を捕まえておけ」
(イヤだ。犯される。誰か助けて)
私は木の板が張られている場所に運ばれ、男達の手により動けなくなった。
「暴れんなよ」
ナイフで服が破られる。身に着けていた服がどんどん剥ぎ取られ、大事な所が見えてしまった。
「い、イヤ! やめて!」
「いいねえ。もっと声を出せよ。泣いている顔もいいな」
(たすけて)
◇
『逃げるぞ!』
『走れません。もう無理です』
『クイックアップ!』
◇
(カイさま……)
バダーン
「メル! ここにいるか!」
(あっ)
「カイ様! 助けてください!」
◇◆◇◆
『クイックアップ!』
ソプラの先導で僕はメルのいる場所を探した。
「カイちゃん、あそこだと思う」
僕らはメルがいると思われる、倉庫へと走る。倉庫の前には二人の男が立っていた。
(見張りだな)
「リック」
「おう、任せろ」
「なんだ! お前ら!」
外はリックに任せ、ソプラと一緒に倉庫の中に入る。
バダーン
「メル! ここにいるか!」
「カイ様! 助けてください!」
「なんだ、てめぇら」
『ダブルグラビティ!』
僕は呪文を唱え、男達にかかる重力を二倍にする。
「はーーーっあ!」
動きが鈍くなった男達の顔を殴っていく。ソプラが彼らの股を蹴り上げていた。
「メル、ごめん」
「カイ様――怖かった……」
泣いているメルを抱きしめ、彼女が無事だったことに安堵した。
「カイちゃん。こいつらどうする? のびているけど」
「縄があったらどこかに縛りつけよう」
「わかった。女の子達が縄で縛られているから、それを使うわ」
「カイ。こっちは終わったぞ」
「ありがとう。リック」
「おう、それよりも嫁に服を着させたらどうだ?」
「うん」
僕は着ていたローブを脱ぎ、メルに着させる。
「ありがとうございます」
「メル、ごめんね。一緒に図書館へ行けばよかったね」
僕がメルにそういうと、彼女は破れた服を手に取り、ポケットの中にあるものを僕に渡した。
「これ――」
メルから渡された物は十字架のお守りだった。
「これどうしたの?」
「カイ様へのプレゼントです」
彼女の顔には泣いた跡があった。僕は彼女を安心させるため、めいっぱいの笑顔を彼女に向ける。
「メル、ありがとう。大切にするから」
◆
「カイちゃん、この女の子達はどうする?」
「攫われてきたと思うから、彼女達のいた場所に帰そう」
僕が女の子達にどこへ行きたいのか聞くと、七人のうち二人が教会近くにある孤児院に帰りたいと言ってきた。
「じゃあ、まず五人を送ってから孤児院へ向かうね」
◆
攫われた五人の女の子を親のいるところまで送る。彼女達の親に感謝され「是非、夕食でも食べていってください」と言われたが、申し出をお断りし孤児院へと向かった。
「シスター!!」
「あっ、帰ってきた。どこに行っていたの?」
「あたし達、悪い人達に攫われたの」
「えっ」
「この人達が助けてくれた」
◆
「ありがとうございます」
「いえいえ、当然のことをしたまでです」
僕らはシスターに招かれ、テーブル席に座る。
「朝、外へ遊びに行くって言って、帰ってこないから心配していたんです」
「そうですよね。心配しますよね。ん?」
僕はシスターの背後にある本棚に、図書館で見た文字が書かれている本があることに気づいた。
「シスター、あの本は?」
「えっ」
「上から二段目の右から三番目の本です」
「ああ、教典ですね」
「教典?」
「はい。古い文字なんで読めないんですよ」
「そうなんですか、なぜ教典だとわかったのですか?」
「教典の中で見た、絵が描かれているんです」
シスターは本を手に取り、僕に渡す。確かにこの文字はさっきまで写していた文字だ。
(そうか)
「シスター、お願いがあります」
「なんでしょう?」
「この本を貸してもらえませんか? 転記して後でお返ししますから」
「はい、いいですよ」
◆
「おい、カイ。どうしたんだ。そんなわからん文字の書いてある本を借りて」
「ああ、これは教典なんだ」
「それがどうした?」
「僕は何度も現代文字の教典を読んでいる。この本と照し合せれば――」
「れば?」
「この精霊に関する本が読める」
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