魔女の言うことをどこまで信じるのかはあなた次第です
シャルロッテがひとり画廊に戻ると、夕飯の準備をしたヨハンが待ちかまえていた。
「おかえり。あれ? あの悪魔は!?」
キョロキョロと周りに視線を飛ばすヨハンに、シャルロッテは苦笑する。
慣れもあるのか、子どもならではの適応力か、シャルロッテ同様にヘレパンツァーに対するヨハンの警戒も解かれつつあった。
むしろ画廊に飾られた絵に興味を示すヘレパンツァーに、ヨハンは親近感さえ覚えている。
「ちょっとお使いにいってもらっているの」
その証拠にヨハンの眉尻が残念そうに下がる。微笑ましい反面、あまり親しみをもたれるのも問題だ。あくまでも自分たちは悪魔と魔女だ。そしてこの世界のラスボスに君臨する予定である。
「ねぇ、ヨハン」
「どうした?」
食卓につき、シャルロッテは早々に切り出す。
「画廊を閉めない?」
蒸かした芋にフォークを刺しながら尋ねると、逆にヨハンは口に運ぼうとしていた豆類をこぼしそうになる。
「はぁ? なんでだよ。そりゃ今、客はほとんど来ねぇけど……」
「それで、ある噂を流してほしいの」
自分のペースで話を進める魔女に少年は眉をひそめる。さらには、流してほしい噂の内容を聞いたとき、ヨハンの顔はますます渋くなった。
不信感を露わにするもののシャルロッテは素知らぬ顔だ。
「お前、実はうちの画廊を潰すのが目的なんじゃねーの?」
「かもね」
さらりと回答されヨハンは息を呑む。シャルロッテは紫色の瞳を細め、妖しく微笑んだ。
「潰れたら潰れたで呪いにますます信憑性が増すでしょうし」
今になって向かい合わせに座るこの魔女が恐ろしいと感じた。自分は気を許しすぎていたのか、このまま関わり続けていいものか。
ヨハンは握りこぶしを作ってシャルロッテの視線を受け止める。
魔女の言うとおりにして、なにが待っているのか。この状況がひどくなる可能性もある。そうなると画廊は終わりだ。
食卓がしばし沈黙に包まれた後、ヨハンは意を決して口火を切った。
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