第37話

「なんで永愛君がここに⁉︎ どうやって私の場所がわかったの⁉︎」


「そりゃ突然いなくなられたら心配になって探すだろ」


 あまりにも突然の出来事に私は答えのわかりきった質問をしてしまったが、永愛君は私を探してくれていたのだ。


 それも必死になって、遊園地中を走り回って。


 そんなことは永愛君の返答を聞かずとも、息を切らした様子を見ればわかりきったことだった。


 私が迷子になってからすでに1時間以上が経過したが、その間永愛君はずっと私を探して走り回ってくれていたようだ。


 きっと永愛君だけではなく、みんなが私のことを必死になって走り回りながら探してくれたのだろう。


「そっ、そこまでして探そうとしてくれなくてもよかったのに……」


「そうも行かないだろ。そりゃもう子供じゃないんだから俺たちが先に帰ったところで綾原は1人で家まで帰ってこれるだろうけどさ。まだ遊園地内にいる可能性があるなら必死になって探すだろ」


「そうかもしれないけど……そうかもしれないけど! みんなの時間を奪って、その上こんなに迷惑をかけてるなんて、謝っても許してもらえないレベルの話だし、どう謝ったらいいのかもわからないよ……」


 永愛君が私のことを必死に探してくれて、そして最終的に私を見つけ出してくれたのは嬉しすぎることだし、1人で心細かった気持ちは永愛君に見つけてもらったことでどこかに消え去り安心感すら覚えている。


 それはそれとして、だ。


 私はみんなに迷惑をかけるくらいなら、もう私のことなんて放っておいて家に帰ってもらった方がいいと思っていた。

 それなのにみんなは私を探すために必死になって遊園地内を走り回ってくれた。


 要するに私はみんなにとてつもない迷惑をかけたのだ。

 この心苦しさはどうすればいいっていうの……。


 そう思っていた矢先、私は永愛君の言葉を聞いて呆気に取られてしまった。


「なんで謝る必要があるんだ?」


「--えっ?」


 なぜ謝る必要があるか、なんて、みんなに迷惑をかけてしまったからに決まっている。

 むしろなぜ謝らなくていいのか、その答えがわかる人間の方が少ないだろう。


「だって俺たち友達なんだろ?」


「それはそうだけど、友達だからって迷惑をかけたら謝罪するのは当然の話でしょ?」


 友達だからといって、例えばその友達の大切なものをなくしたりしたら謝罪しないはずがない。

 それと同じで今回だって私は永愛君たちに謝罪をしなければならない。


「迷惑をかけたら謝罪するってのは当然の話かもしれないけどさ、そもそも迷惑がかかってないなら謝罪する必要はないだろう?」


 永愛君の発言に、私は疑問符を浮かべながら訊き返した。


「……どういうこと? 絶対迷惑かけてるよね?」


「友達同士で遊びに来てさ、友達が迷子になったら探すなんてのは当然のことだろ? 今回は迷子になっただけだったから綾原は心苦しさを感じてるかもしれないけど、それが急病とかだったら迷惑になんて感じないだろ。むしろ心配に思うくらいだからな。だから迷惑かけたなんて思わないでくれ」


 なぜ永愛君はこんなに優しいのだろう。

 なぜ永愛君は私のほしい言葉をかけてくれるのだろう。


 今こんなことを思ったらまた同じことの繰り返しになってしまうのに、それなのに私は、永愛君を楠森さんに渡したくないと思ってしまっていた。


「ごめん、本当にごめんね」


 謝罪の言葉が溢れ出してくる私の隣に座った永愛君は何も言わず、ただ優しく私の背中をさすってくれていた。

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