第5話 永遠の愛
美幸は、義雄と会って話したかった。
「元気だった」
「久しぶりに、友達と焼き肉食べに行ったよ。でも、皮肉な話になって、落ち込んだな。ベーシックインカムや人口問題や食生活など、俺と山崎聡志が熱く語って」
「この世の中、矛盾だらけ。子供を産み残すのが心配、何を信じて生きていいのか」
「仕事柄、悩みを自分の事のように考えてしまったんだね。俺も、最期と向き合う患者さんをみると、考えさせられるよ。
人類は絶滅の危機の中で、数々の幸運に恵まれて生き残った。その逆境に打ち勝った人類こそが、仲間と共に生き延びて来たんだ。
でも、こんにちの状態が最大の危機だよね。でも、二人からの幸せの世界を築こうよ」
「テロは、不平等からと当たり前のように語られる時代。こんな時代、昔からは考えられない。絶対に否定された。それが出来ないほど、世界はおかしくなっている。富の集中を是認する風潮さえある」
「地球は数十億年持つというけど、持たないわよね。産業革命以降の過ぎ去った200年。ここからの100年で異常な格差をなくした世界を作った方がいい。“金持ちイコール成功者“という経済至上主義的思想が支配する世界を変えなければいけないと思う。金持ちが現在困っている人を見捨てて、宇宙にお金をかけ、どんなに惑星を開拓しても、奪い合いはなくならない。地球を守るために宇宙を開拓するのはいいけど、世界の人々を犠牲にして得るものはないと思う」
「人間の子孫を残すのではなく、人類のやさしさや分かち合う心を残す事に一生懸命になってほしいわ」
「地球を破壊し、破壊した子孫が他の惑星へ逃れても、また同じ事をするに違いない。いま改められないなら、永遠に繰り返す」
「まずは、地球を元に戻す事を考えてほしいわね。経済成長という耳障りのいい言葉を使い、化石燃料を使い二酸化炭素をまき散らし、森林を伐採し光合成を減らし、温暖化を誘発し海の力を弱めた。海の生物だって、二酸化炭素の3分の1を吸収する力があったのに,機能が低下している。何人のために、大勢の人を犠牲にするのかしら」
「そう、おかしな時代だ。でも、人間は生きようとしている。小さな幸せを求めようとしている。やさしい心を育てようよ。幸せを信じて」
「ええ、義雄となら生きて行かれる」
「受け取ってくれる」
と言って、義雄は婚約指輪を差し出した。
「ええ」
と言って美幸は、左手を差し出した。
義雄は、美幸の薬指に婚約指輪をはめた。そして、二人は永遠の愛を誓った。
地球が壊れていく 本条想子 @s3u8k
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