第16話 葛餅

 今日は土曜日。


 いつも通りベットに横になり、スマホをいじる。映画館で見たアニメのタイトルをSNSで検索にかけ、他人の感想を眺めている。でも頭に入ってこない。昨日の帰りのことを考えていたからだ。

 

 ――陰で笑われていることを知っても気にしないなんて。

 あんなことを言われても寿里は椎名君を好きでい続けるだろう。高校受験の時からって言ってたな。それにしても本郷さんから聞いたって……。寿里といつも行動を共にしているのに。実はあっちのグループに行きたがってるとか? 寿里は変わらず仲良くするのだろうか。


 椎名君は寿里のことをどう思っているのだろう。彼女いるからそんなこと考えもしないのかな。椎名君ってちょっとフワフワしてるもんな。


 私のことなんて……。


 スマホを置いて天井を見つめた。

 今までちゃんと考えようとしなかった。椎名君とはどう頑張っても友達止まりだとわかっているから、自分の中でも曖昧にしていた。

 でも、私も自分の気持ちに正直でいたい。

 彼女がいても、私は椎名君が好き。そして寿里に嫉妬している。もう認めるしかない。これ以上寿里と差が開くなんていやだから。

 

 この意志が揺るがないように、誰かに伝えなきゃ。梨花にLINEする。


〈私、椎名君のことが好き。もっと近づけるように頑張る!〉


 川瀬さんたちに何思われたっていいし。どうせ卒業したらもう会わないし! ……と寿里が言っていた。


 梨花から返信が来た。〈いいね!〉とシロクマが言っているスタンプだ。

 よしっ! 勢いよく起き上がり、YTubeで「ダイエット」と検索する。いきなりきつい運動は続かないだろうから、まずはストレッチから!


「柚衣! おやつ食べる? おばあちゃんから葛餅もらったよ」


 こんな時に母親の声。おばあちゃんも出てきた……。

 別に、親は恋をためらう理由にはならない。

 

 何食わぬ顔をして葛餅を食べるだけだ。



*秘め事や母とさらさら葛餅を*

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