第15話 夕焼け

 梨花と寿里の話をして歩いていると……。


 少し先にクラスのトップ女子四人組が歩いている。

 校舎を出た時は彼女たちに気づかなかったが、四人組はダラダラと喋りながら歩いていて、私たちは近づいてしまったようだ。

「梨花、ゆっくり歩こ……」


「寿里ってさー」

 四人組の一人、川瀬さんから寿里の名が聞こえてきて、思わず私も梨花も聞き耳を立てる。

「いつまで椎名のこと好きなんだろ? もう、無理っしょ」

「あはははは、わかんないじゃん。まだ望みあるかもよ」

「高校受験で椎名のこと見かけて、その時から好きらしいよ。本郷から聞いた」

「一途〜! いつか付き合えると思ってるよね。でも椎名、相手にしてないよね」

 

 ――寿里がこんなこと言われているなんて。

 寿里はトップ女子とも普通に話しているし、好かれていると思っていた。

 ……寿里が言われてるなら、私も言われてる?

 椎名君、教室でも話しかけてくれるし。私も椎名君のことを好きだと思われてるのかな……。


「こっわ。まあ、陰口言われてるとは思ってたけど」

 

 え? 立ち止まり、振り向くと寿里がいた。全部聞いていたようだ。


「寿里……気にしないほうがいいよ」

 それくらいしかかける言葉が思いつかない。

「気にする! あいつら絶対許せない! ……なーんてね」

 寿里は笑っている。

「椎名はモテるからね。私に嫉妬してるんでしょ」

「寿里ちゃん……強い」

 梨花がキラキラした目で寿里を見つめる。

「僻ませといたらいいじゃん。卒業したらもう関わりないし」

 寿里が私の目を見て言う。

「あっ、四十五分の電車来ちゃう。じゃあね」


 寿里が腕時計を見て、夕焼けの街を走り出す。

 走ったらあの人たちに追いついてしまうのでは。

 

 ――なんなの。中学の時は同レベルだったじゃない。むしろ推薦で高校受かった私のほうが上だと思ってたよ。 

 今はこんなにも差が開いてる。

 僻ませとけばいいって、自分に言い聞かせてるようで私に言ってたよね? 私が陰口言われるのが怖くて、椎名君を避けるとでも思った? ……その通りだし。

 もう完全に私を下に見てるよね。


 だけど……私は鞄のキーホルダーを見る。

 寿里の鞄にも映画館で買ったキーホルダーが揺れていたのだ。


 おそろい、か。



*夕焼けやスクールカーストって何*

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