第14話 休暇明け
夏休みが終わった。
鞄には映画館で見たアニメ映画のグッズであるキーホルダーが揺れている。
あの一日を除けば、去年と同じ休みだった。基本的に家にいることが多く、勉強は宿題をやっただけだ。
夏休み明けのテストは自信がなかったが、宿題をやっていればそれなりに解ける問題だった。それでも順位が大幅に上がることは期待できないけど。
塾行くようかな……。そろそろ親にもしつこく言われそう。
受験、か。意外にも今が少し楽しくてまだ真剣に考えられない。
「柚衣、佐野君と仲良くなった?」
テストが終わり、梨花と一緒に帰る。夏休み中もLINEで少し話したが、顔を合わせてのほうが話しやすい。
「佐野君とはあまり……。椎名君とは少し話せるようになったかな。あ、彼女いること知ってた?」
「え……、あ、うん……」
梨花は嘘がつけない性格だ。
「寿里ってば、彼女いること知ってて……。どうせ長続きしないからって、チャンスが巡ってくるの待ってるんだよ」
あ。この言い方、性格悪いかな……。
「そういえば、梨花の代わりに一緒に出かけて申し訳ないって言ってた」
なんとなくフォローしてみる。
「えー、そんなことないのに! ……って言ってくれた?」
「うん。梨花が寿里を誘えばって言ってたこと伝えたらホッとしてた」
梨花と寿里は席が前後なので、たまに寿里が後ろを向いて話しかけている。わからない問題を聞いていることが多いようだ。
梨花は学年で上位の成績優秀者だ。そんな彼女とも寿里はごく自然に会話をする。
だから梨花は寿里が苦手ということはなく、むしろ好感を持っているようだ。
*休暇明け鞄に増えるキーホルダー*
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