第7話 扇風機

 内藤寿里。同じ中学校出身。同じクラスになったことはなかった。

 私が中三の時に通い始めた塾に寿里が先に通っていたのだ。友達の友達だった寿里に声をかけたのは私だ。第一志望の高校が一緒だとわかり、よく話すようになった。

 

 学校の廊下で会えば、一言二言言葉を交わした。休日、市立図書館で偶然会う日もあり、そんな時は一緒に勉強した。

 寿里は目立つタイプではなかったし、容姿も普通だったので、私は気後れせず話しかけたし、寿里も話しかけてきた。

 成績は私のほうが少し良かったのか、私は推薦で第一志望の今の高校に受かった。寿里は、推薦は落ちてしまった。


「おめでとう」と言ってくれたけど、寿里は複雑だったに違いない。もしかしたら、今の性格から考えると、当時も悔しくて仕方なかったのかもしれない。


 だんだん話すことは少なくなり、寿里に会うのが気まずくなって避けるようになった。

 でも寿里は入試の合否発表後、合格したとLINEしてくれた。

〈合格したよ! 高校でも仲良くしてね!〉

 もちろん、私もすごくうれしかった。何より、高校でも友達でいられることに安心した。


 高校で初めて寿里を見た時、彼女の見た目がとてもかわいくなっていて驚いてしまった。少し痩せていた。眉毛を整えていた。メイクを薄くだけどしていた。

 一緒にいる友達も明るいタイプの子で、男子とも気兼ねなく喋っていた。

 

 同レベルだと思っていたのに。あっという間に追い越されてしまった。

 私は廊下で見かけても気安く声をかけられなかった。寿里が私に気づけば声をかけてくれていたが、友達と話したりしていて気づかれなければそのまま素通りだ。

 中学時代のまま、「寿里」と呼び捨てで呼ぶことにも少し抵抗がある。寿里やその周りから生意気だと思われてないだろうか。


 二年生になって同じクラスになったが、もちろん一緒に行動を共にしない。いつも一緒にいるのは本郷さんと原さん。二人ともメイクばっちりキラキラ女子だ。

 

 同じクラスになって寿里が椎名君のことを好きだということを知った。


 ベッドに仰向けになって今でも友達と呼んでいいのかわからないクラスメイトのことを考えていると、扇風機からカタカタ音が鳴っているのに気付いた。そういえば、数日前から首振りに設定すると異音がする。


 勉強は十五分で投げ出していた。

 


*変われない私扇風機から異音*

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