第5話 柏餅

 何の進展もなくゴールデンウィークに突入してしまった。


 椎名君、遊びに誘ってくれるかも、という期待も虚しく、こどもの日の今日も自宅のベッドで横になってスマホをいじっている。

 とはいっても、休日に誘われてもメイクも服も自信がない。YTubeを見れば、初心者のメイクの仕方を教える動画は山ほど出てくる。やってみたい気持ちはあるけど、メイク道具を揃えるお金はないし、親には言えない。メイクに興味があることを知られるのが恥ずかしいのだ。


 ――早く一人暮らししたい。


 親がいなければもっと自由にやりたいことができるのに。

 親とは恋の話も、オシャレの話もしたことがない。そういった類の話はきっと親も照れくさいと思っているに違いない。

 東京の大学に進学して一人暮らしを始めれば、メイクしてオシャレして、彼氏もすぐにできる……! と信じている。

 まず親の許可を取って進学できるだけの学力を身につけなければいけないのだけど。

 

 椎名君は進路どうするんだろう。同じ大学に進学して、一緒に授業受けたり飲みに行ったりできたら……。


「柚衣、ご飯だよ! スイーツもあるよ」

 母親の声が階下から聞こえる。恋愛モード消滅だ。

 

 はぁ、高校生のうちは片思い止まりだな。

 別にオシャレするな、彼氏を作るなと言われているわけではない。

 ただ親に知られるのは照れくさいという理由だけでやりたいことができないことがある。


 他の子はできているのに。

 

 

*柏餅あまい妄想から覚めて*

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