第2話 春の波

 ――翌朝。

 教室に入り、席に着く。椎名君はまだ来ていないようだ。なんだか、そわそわしてしまう。

 机の上で手を組んでボーっとしていると、椎名君が教室に入ってきた。「おっす、椎名」と男子たちが声をかけ、椎名君が「おっす」と返している。私の横を通る。なんだか緊張してきた。


「おはよう」

 椎名君は一瞬、私と目を合わせた。

「……おはよう」

 さっと椎名君は自分の席に向かう。


 挨拶してくれた。顔が熱くなった。絶対赤くなっている。今の顔誰かに見られていたら恥ずかしい。いや、完全に見られている。さっきから視線を感じている。

 そりゃあそうだ。一軍男子と底辺女子が言葉を交わしていたら、注目されるに決まっている。

 

 梨花もそのうちの一人だ。

 ホームルームが終わり、一時間目が始まる前に小声で話しかけられた。


「椎名君と挨拶してた?」

 いいな〜という眼差しで私を見つめる。

「あ……、うん。詳しくは後で話すから」

「何かあったの? 今日は一緒に帰ろ!」

「じゃっ!」と言ってパタパタと梨花が席に戻って行く。

 梨花は佐野君を知ってるかな?

 ……みんなで遊ぶのが本当なら、私は梨花を誘うしかない。


 一時間目は数学。もちろん授業になんて集中できない。

 問題を解く時間、静まり返った教室に隣の七組から英文を流暢に読む女性教師の快活な声が聞こえてくる。

 

 佐野君は英語の授業を受けているのか。


 

*流れくる英文春の波のごと*  

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