最終章 早咲き、それは末永く

 誰かが僕の部屋のドアをノックした。時刻は七時、まだ朝ご飯の時間までは三十分もあるし、一体誰だろうか。

「レオ様、朝早く申し訳ありません。セバスでございます。今お取込み中でしょうか?」

「セバスさんでしたか。丁度終わったところですよ、どうぞお入りください。」

「では、失礼します。」

 セバスがドアを開けると作業机に座るレオの姿と、積読された大量の本が目に入った。

「レオ様、何かを作ってらしたのですか?それにこの本の量は一体…」

「造花を作ってたんですよ、ほら。」

レオの手には本物と見間違えてしまいそうなほど繊細で鮮やかで美しい造花があった。その美しさには今まで沢山の情報を目にし、無理難題を押し付けられ、それを如才なく熟してきたセバスも圧倒されてしまうほどだった。

「これは読み終わっちゃって行き場がない本達です。一回読んだら全部覚えてしまうので、わざわざ買うのが惜しいくらいですよ。それにしたっていつまでも置いておくのも足の踏み場が無くて不便なので、今度植物学者の皆さんに論文を提出する時に一緒に寄付しちゃおうと思ってます。」

「な、なるほど…」

「それで、僕に何か用がおありなのでは?」

「そのことなんですが、先日闘病中のジェームズ様の日記が発見されまして、その日記の中に『クーフォイ家は表舞台から身を引いた方がいいだろう。一年が経過したら、レドール家にその立ち場を明け渡す。その時は済まないがトムがレドール家の長として振舞ってほしい。そして十歳になったらレオをレドール家の跡取りにしてほしい。これはただの父親、そしてただの祖父からの願いだが、トムは仕事がとても忙しい。いくら賢く優しいトムであれど、貴族としての難しく、気の休まらない振る舞いを激務で疲れた体で続けてしまっては、いつか限界が来てしまうだろう。そこで、トムの賢さと優しさ、ミリアの健気さを受け継いでいるレオをレドール家の跡取りとして任せてみてはどうだろうか。勿論レオの意思次第だが、検討してみてほしい。』と記されていました。日記にも書かれていました通り、跡取りになるかどうかはレオ様の自由です。どのようなご決断をされようと、構いません如何なる道を選んでもいいように、色々な対応を進めております。」

「やりますよ。」

「…随分とお早いご決断ですね、レオ様ならそういうと思っていましたが。」

「流石はセバスさん、バレてましたか。それで具体的には何をすればいいんです?お父様のやっていたことを見るに結構簡単そうでしたけど。」

「流石はレオ様、もしや仕事内容も…」

「はい。全部記憶してあります。ではいきましょうか。」

 こうして、レオはレドール家の長となった。随分と早咲きだが、奇跡の青い薔薇は当分枯れることはないだろう。

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青薔薇少年 アルファポリスにて重複投稿 ソウカシンジ @soukashinji

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