第4話 恐怖は病

ビリーはあれから何度もアディの元へ行っていた。友達との付き合いが悪くなったが、アディという友達のほうが大事に思えてきた。たったそれだけの理由だ。複雑さの欠片もない。


そして、今日から外出禁止は取り消され、表立って外へ出れるようになった。


そんなある時、仮面ライダーの番組を見ていると突然画面が切り替わり、ニュースに移った。


「ん?ねぇお母さん、番組変えた?」


「いいや?お父さんもお母さんも触ってないわよ」


おかしいなと思いながらニュースを見ていると早速ニュースキャスターが喋り始めた。


『番組をご覧頂いていた皆様、大変申し訳御座いません。緊急ニュース速報です。只今、国家からの全コロニーへの緊急連絡があり、中継を繋いでいる所です。えぇ……今、繋がりました』


そして画面は変わり大使館ホワイト・ハウス前で大統領が出てくる場面となった。


『えぇ、本日。我が国は国境線沿いの中立コロニーへ視察団を派遣し、異常が無いかを確認した所にえぇ……攻撃を受け、視察団全員の死亡を確認しました。その後コロニーへ警察機動部隊を送った所交戦を確認しました。その視察団へ攻撃を加えたのは独立国家【|ヘルダイブ・ジ・バルト・フェスティバル・オクマーケン《通称HBM》】であり、軍隊の展開を受け、我が国は戦争状態に移った事を宣言致します』


父が新聞をクシャッと包み、母が皿を落とした。


戦争。それは、数年前にもあったあの悲劇が繰り返されるということ。


僕はその時の記憶がフラッシュバックして吐いてしまった。





***





数年前と言うとビリーがかなり幼い頃だ。その頃戦争は収束していき終戦間際であった。しかし、とある兵器が開発された事により国は危機に陥った。


テレポートレーザー。8700度のレーザーをテレポーターによって好きな場所にテレポートさせ攻撃するという理論上宇宙の端から端までを攻撃可能な兵器を作り上げた敵国によってビリー達の住んでいたコロニーは崩壊し、友人を多数亡くした。


ビリー達は奇跡的にも家族揃って助かっていたが、崩壊したコロニーから救助船に拾われるまで2つの戦場をくぐり抜けてきた。拾ってくれた優しい軍隊の戦闘機が眼の前で破壊される光景を間近で見ていたビリーはその日から戦闘機へ憧れを、兵士へ畏怖を抱くようになった。


その後なんとか終戦したものの戦場を見た家族は安全な場所など無い事を知り、それでも最大限安全そうな場所で一生を終えたい。その一心でこのコロニーに来たというのに……


新たな戦争。あの数年前の悲劇がまた繰り返される。


人は何故?こうも愚かで不様なのだろうか……


ビリーはもう、隣に居る人を失いたくない。


「母さん。すぐに備蓄品を買い漁ってくれ。私は避難船を見てくる」


「わかりました。ビリー。今は気にせず学校に行きなさい。私達に任せて」


父と母はすぐに行動を始めた。母が吐いた跡を片付けながら大丈夫だと諭す。


「う、うん……わかった」


運が良い事は2度も続かない。そう知っているのはビリーだけではない。お母さんもお父さんも知っている。


だから大丈夫だと自分自身に言い聞かせる。眼の前には死神は現れない。常に警戒し続ければ死ぬことはそうそう無いのだと。


「いってきます……」


いつもと違いゆったりとした歩みで学校へ向かう。


だがとビリーは思う。たとて知っていたとしても避けられない死はあるのだと……知っているのだから。

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