第3話 嫌いな兵士

アディ。卒業おめでとう。今から君は祖国を守るための兵士となる。まずはこのコロニーを守ってもらい―――


―可哀想なアディ……兵士じゃないのよ。本当のあなたは――


――彼を有効活用せねば次の戦争で勝てない!!俺達が守るべきは人ではなく国だろう!?


―――これ以上無闇矢鱈に人を殺すのはいけないのよ!!何故わならないの!?


――――アディ……私は行くよ。君ももうすぐ兵士としての役割を果たせるようになる……


――アディ。君は、私の【大事な子】だよ――


『………ビリー。起きてビリー』


朝6時。丁度コロニーに明かりが点き始める頃だ。一番安全に見つからずに帰れる時間帯でもある。


部屋に明かりが点き、眩しさに身を捩り逃げようとするビリーだが、壁に頭をぶつけて目を覚ました。


「んん……おはようアディ」


目を覚ましたら記憶を無くしているなどということはなく、ちゃんとしっかり覚えているようだ。昨日何があったか理解している。


「あ……ああ!?」


そう、理解している。お漏らししてしまったことも。


股間の嫌な感触。あまり多くは漏らしてはいないようだがすぐに着替えたい。


「ご、ごめん!!あとでまた来るよ!!」


すぐさま部屋から出て病院から出て家へ向かう。早朝というのもあり人はあまり居なかった。


家へ辿り着くとゆっくりと家の中へ入り自室へ向かう。すぐに着替えると様々なものをカバンに入れて家を出ようとする。


「よし……これで……」


「これで……なに?」


が、残念ながら母に見つかり早朝から夕方まで説教された。お腹が減り気力が無くなりギャン泣きするまで許してはくれなかった。


ちなみにケンとサイはギャン泣き中に家へ来たので今度からは目を離さないようにしようと決意した友達想いな優しい二人である。





***





アディの居る部屋はまた暗くなり、ビリーの来た時と同じような明るさとなっていた。


『……………』


一人この部屋で過ごしていたアディだが、ビリーと出会っては時の流れが遅く感じた。この感覚は前にも感じていた事だ。すぐに慣れると思ったが、また来るよという言葉があまりにも心を締め付ける。


『………国を守る、兵士。人………ビリーはそういった人より兵器が好きなんですね』


ビリーは強くてカッコいい無機物が好きだという。その対象が兵器であり、人ではなかった。


ビリーに1度兵士は好きかと聞いた。ビリーはこう答えた。


「あんまし好きじゃないかな。兵器は使わなかったらカッコいいだけだけど、兵士は使っちゃうから。でもね!!使う姿はカッコいいんだ!!だから僕は研究者になろうと思ってるの!!実験とかで使う分には問題無いし!!」


あんまし好きじゃない。そう答えたビリーの顔は少し曇っていた。


兵士と兵器は違う。自分はビリーの嫌いな兵士である。そう考えると胸が締め付けられる。


『………なんで人なんでしょうか』


私は、AIなのに。それは言葉には出せず、プログラム上に隠した。





***





ビリーは説教された後にたくさん食べて自室に戻っていた。罰は一週間外出禁止である。当然守る気はない。スネークのように独房から逃げるつもりである。


とはいえ少しは悪いとは思っているビリー。守る気はないがバレないようにしようと考えた。バレなければいいのだバレなければ。


まずは自室へバレないように戻る方法を考えた。窓から入れたら良いと考え付き、窓の外を見ると意外と足場が多く、よじ登って戻れそうだと感じた。尚自室は2階にある。


戻る方法はわかったが居ない間はどうしようかと考えた。すぐに思いつき鍵を掛けていじけてる事にした。ちなみに今は絶賛いじけてる最中である。


これで作戦の計画は完璧だろう。


「よ〜し、そうと決まれば実行だ!!」


ビリーは早速カバンを背負い窓から出てアディの元へ向かった。どうせ明日も暇なのだ。昼間は1日中寝れると考えてアディの元で久し振りに夜更かしをしようなどと考えながら道を走る。


ビリーは今、不思議なカプセルの中に居る友達を手に入れて内心大喜びだった。自慢しようかなどとも考えていた。


そして、ビリーは森の中へまた入っていった。暗い森の中がどれだけ怖かったか忘れたのだろうか?子供とは単純なものであると後のビリーは語るだろう。

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