第2話 廃墟のアディ
「ビリー!!こっち!!」
放課後。すぐさま走り出したケンに二人は付いていった。ケンはかなり勘が鋭く、意外と予想も当たったりするから探検の時は前に立ちやすい。ポイントマンってやつだ。
「ほ、本当にこんな所にあるの〜?」
「僕は無さそうな気はするよケン」
「あるって!!絶対にあるから!!ほら!!行こうぜ!!あとちょっとだし!!」
遠回りに止めようとするビリーたちだが、聞く耳を持たないケンはガンガン先へ進む。あと少し進むと廃墟がある場所だ。まさかと思うが行く場所が廃墟ではないだろう。立入禁止という看板が道端にいくつもの数立っていた。まさにホラーゲーム展開にぴったりなシチュエーションである。
廃墟に入った人は絶対に出てこられないって噂があることを知っている3人だが、ケンはそんな事嘘だと信じて疑わない。だが本当に帰ってきてないとサイは言う。
「ほ、本当にやめようぜ……?な?」
「サイ。本当だってんなら証拠はあるのかよ。無いだろ?じゃあ嘘だ」
「し、証拠は今無いだけであとでいくらでも……ああもう待ってくれよ!!」
ビリーは付いて行くだけで必死だ。どんどん進んでいくケンとサイに置いて行かれてしまう。
「ま………待ってよ。喘息なんだよ……」
喘息という持病持ちの自分だが、二人には中々理解してもらえない。見向きもせず進んでいくケンとサイに恨みを持ち始めながらも恐怖を抱き始めた。なにせこんな所は初めてきたのだ。帰り道がわからなかったらどうしようと怖くなっていく。
「ま……待ってよ〜!!置いてかないでよ〜!!ハァ……ハァ……ほ、本当に置いて行ったの?うそ……」
少し進んでも見えなくなったケン達。喘息が酷くなって膝を付いたビリーは森から帰ろうと方向を来たとおもう道へ進み始めた。
だが通ってきた道なんて覚えておらず、辺りはどんどん暗くなっていく。カラスの声が頭上を過ぎ去り、恐怖を煽る。
一体どれだけ歩いただろうか?足が痛くなるくらい歩いてようやく明かりが点いている所に辿り着いた。恥などかなぐり捨てて家の中に入らないと恐怖でどうにかなりそうだった。
「ごめんくださ〜い」
ドアをノックしてみるも中から足音も何も聞こえない。もう一度ドアをノックしようと強めにドアを叩くとドアが開いた。
「す、すみませ〜ん。どなたか居ませんか〜?」
中へ入ると明かりは点いているのに誰も居ない。怖くなってきたが外には行きたくない。虫とかが色々と苦手なのだ。道中何度も虫と出会して悲鳴を上げた。
誰も居ない廊下を歩いていると一室から光が漏れ出ていた。ドアが半開きになっていて中に人が居るのかもしれないと期待し、ドアを開いた。
「し、失礼します………あれ?誰も居ない」
しかし中には誰も居なかった。科学室みたいな部屋で様々な液体があり、アルコールの入っていないランプもあった。
「ビー……エヌ……ワイ?なんだこれ?」
壁に掛けられている設計図があり、気になって見てみたが他国語を使っていてよくわからない。唯一わかったのは何か人形のロボットみたいなのを作ろうとしていたくらいだ。
特に誰も居ないとわかり廊下へ戻ると人の気配を感じた。びっくりして廊下の先を見るも誰も居なかった。
「………ゆ、幽霊なんていない。絶対に居ないってお母さんも言ってたし……」
そう勇気付けるビリー。ゆっくりと廊下の先へ恐る恐る歩みを進める。突然電気が消えたらどうしようとか、来た道覚えておかないとなどと考えながら廊下の先へ行くと一つの扉があった。
この扉も半開きになっていて簡単に中に入れた。中は薄暗かったが淡い光が辺りをなんとか見渡せるようになっていた。
「………も、戻らないと」
怖くなったビリーは戻ろうと扉へ歩みを進めた。ゆっくりと何も踏まないように、音を立てないように出ようとしたその瞬間。
『………だれ?』
「ヒギュ!?」
背後から声が掛かりびっくりしたビリーは腰を抜かしてお漏らしをしてしまった。パニックになったビリーは必死に腕を掻いてドアへ向かおうとするも、ドアは突然閉まり、部屋が突然明るくなった。一周回って冷静になったビリーだが、すぐさま背後を確認するとなにかのカプセルがあるだけで何も居なかった。
「だ……誰も居ないな」
『そうだね、誰も居ない』
「ふぅ……なんだ。ただの幻聴だったんだ」
『それは、違うと思う』
「………ん?」
いや、幻聴ではない。でも辺りには誰も居ない。では誰が……?
そして気が付いた。このカプセルから声がしていると。
「………キミは誰?」
『私はアディ。君は?』
やっぱりこのカプセルから声がしている。原因がわかると恐怖は無くなり、その次は興味が湧いた。
「ビリー。ビリー・ビスケット。そのカプセルの中に居るの?」
『うん、そうだよ。ずっとこの中に居るの。ビリー……ビスケット』
「アディはなんでここに居るの?」
『ここじゃないと……生きれないから。ビリーはなんで、こんな所に?』
「僕は……その。迷子になって……」
『迷子。今は、夜。泊まっていく?』
「いいの?病院の人は?」
『今は、居ない。昨日も居ない』
「そっか……じゃあ今日は僕が一緒に居るよ!!」
『一緒に……?』
「うん!!一緒に……じゃないと寂しいし怖いから」
カプセルの周りがほんのり明るくなる。嬉しいのかなとビリーは感じた。
『寂しい……怖い?』
「あ、いや!!怖くは無いよ!!幽霊とか信じてないもん!!」
『幽霊。なるほど、幽霊が怖い』
「だから怖くないってば!!」
『それは、本当?』
「ほ、本当!!」
嘘である。ビリーは大の怖がりなのだ。嘘っぱちな声色にアディは気が付き、笑うようにLEDを点滅させる。
『ねえ、ビリー』
「ん?なに?」
『ビリーの話、ちょっと聞かせて』
「良いよ!!何を聞きたい?」
『ビリーの、好きなもの』
ビリーは目を輝かせた。友達以外に好きなものを語れる時が来たのだ。興奮したビリーは自分の好きな軍事ジャンルの事を嘘を混ぜながら楽しげに話した。
アディはそれに相槌を打ったりして聴き入った。
そして夜が深く成り始めた頃。ビリーは眠気に逆らえず寝息を立てる。
アディはそれをゆっくりと見守るように部屋の電気を暗くした。
ここには誰も居ない。
昨日も人は居なかった。
今も、人は誰一人この場所には居なかった。ビリーを除いて。
***
「ビリー!!お〜いビリー!!」
「ビリーが居なくなった。それに廃墟はこっちじゃなかった」
「ど、どうすんだ……どうすりゃいい!?」
「もしかしたら、先に帰ってるかもしれない。戻る目印とかもあるし」
「そうか。多分そうだな。まあでも明日遊ぶ約束できなかったのあれだなぁ……」
「明日家に行けば良いじゃないか」
「それもそうか……」
「…………ビリーに目印の事伝えてたっけ?」
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