第10話

 落ち着いていた。

 眺めていた。

 取り落した――するりと抜けて転がった。

 どうしようか佇んでいた。指先を見つめていた。乾いていて、指を擦ると何かがボロボロと落ちた。その感触が、これが現実である事を教えてくれる。

 亡骸が転がっていて、眺めて佇んでいた。

 妙に静かだった。

 他人がいた。

 解析データを開く――。

 首を傾ける。少し酔ったようだ。

 解析データにおいて記憶と言うものは扱いが難しい。色々な引出しがあり、情報が飛び飛びで欠けている。それは感じた五感によって記憶されている場所が違うからなのかもしれない。

 この男が誰なのか探っていた。何処の誰で何なのか。

 結論から言うと記憶を直接覗けるわけじゃないので不明だ。

 剣術に関して蓄積されたデータは見つけた。どうやら身に着けた技術に関する記憶はある程度独立して保存されているようだ。これは思考データではなくて反射的なデータであるからだろう。抽出しコピーして自分の記憶データに移す。オレの理論上では経験情報は蓄積できるはず。あくまでもオレの理論上の話だが……。

 熱剣を拾い――瞳孔が開くのを感じた。

 脳内に熱剣をどう振るっていたのかがデジャヴのように流れ、初めて持った熱剣を振り回せる自分がいた。ただ、自由自在と言うわけではない。オレと男の差を感じる。筋力の差を感じる。腕が痛い。重い。剣に振り回される。【纏】を使い始めて拮抗する。

 腕を傷めずに剣を振るう方法はある。重さに逆らわず重さを利用する。しかしその動きは制限された動きだ。不慮の事故には対応できない。綺麗に踊るのと戦うのは違う。相手は待ってくれないのだ。

 空手の型のようなものだ。長年繰り返され、体が覚えた動作を認識している。

 男の首をもち生体情報より男の痕跡を探った。

 ここ最近じゃ初めての人間と思わしき個体だ。思わずやっちまったと頭を抱えたが、先に手を出して来たのは男の方だ。何度も何度も自分を正当化している。それに意味がないことは、オレが一番良く分かっている。意味がない。

 自分の首の輪切りを見て落ち着いていられるわけねーだろ。

 いや、輪切りにしたのはオレなのだが。


 家族がいるかもしれない。

 見つけてどうするつもりだ。

 魔物がいるかもしれない。

 この個体は良くない。排除すべきだ。それは正義だ。

 家族がいるならせめて首ぐらいは返すか。

「あははっ」

 ちょっと楽しくなってきた。


 歩きながら熱剣の解析データを表示――まぁあれだな。魔力を通すと熱を発して焼き斬る剣だ。ただ一つ、この剣にオレが魔力を通しても熱剣にはならなかった。何が悪いのかしばらく魔力のオンオフを繰り返す。構造より原因があるはずだと解析データを確認する。

 どうやら個人認証のような機能が備わっている。

 解析データより認証欄を探し、式とジュシュアという文字列を見る。おそらくジュシュアというのが男の名前なのだろう。

 オレの見立てだが、宝物と宝物を似せて作られた物では言語に僅かな違いが生じる。仮に宝物に刻まれている言語を古代A共通語と名付けるとしたら、現代のものは古代B共通語と認識している。要は本物と偽物の話しだ。どれだけ似せようと古代語が略せないので真似る必要がある。しかし完璧ではないので何処かおかしく、完璧な古代A共通語に比べて歪な古代B共通語が存在してしまう。偽物の偽物が増えておかしくなる。魔力を通せばある程度効果を発揮する場合があるので一見では本物か偽物か判別できない。

 だが完璧な偽物は存在しない――とオレは考えているが否定はできない。

 解析データを翻訳する上で言語を学んだ時に知った。同じ意味の文字として複数が存在し、最初の言語が僅かに異なって伝わっている場合もある。とは言ったものの、正しい言語をオレが全て知っているわけでもない。

 ミラージュレター。古代A共通語をオレはそう呼んでいた。一つの文字が複数の意味を持ち見た姿を変える。文字自体は変わっていないのに姿が変わる。見た人間がその文字を完璧に複製できずに歪に変わる。

 この二つの言語には明確な違いがあり、この剣は古代A共通語(ミラージュレター)の痕跡が見て取れた。

 つまりこの剣、この個人認証の術式は宝物に該当すると認識する。

 宝物の再現に挑戦する者はいる。ただやはり悪意も存在する。騙すために偽物で偽る人間も存在する。昆虫だって擬態ぐらいはする。

 王国に献上されていた宝物の中にはニセモノが存在していた。当時はあまり気にしていなかったけれど。当然と言えば当然で、それを見破る専門の機関の存在を小耳に挟んだ事ぐらいはあった。


 スライムっぽいウミウシに遭遇――剣を振り回す。良く斬れる剣だ。このウミウシ型の魔物は肉厚より打撃には強いが斬撃には弱い。体が粘液体状の分厚い筋肉に覆われている性質状打撃の威力は吸収されてしまう。キノコの繊維が縦に裂けやすく、横に裂けにくいのと似たようなものだ。違うかもしれない。

 今更だが一応、解析データでストックする。


 倒したら剣のデータを開き個人認証を確認――認証データを抽出し、【賢者の帽子】の解析データを開いてペーストしておいた。この認証用術式は生体データを元にしているようだ。名前はあくまでもサインのようなもので術式に魔力が通うと、最初のスキャンで錠を作る。この錠に合う鍵(本人)でなければロックが外れない。

 改めて帽子をかぶると体をスキャンニングするように魔力が頭から足の先までを伝い、足の裏から頭の先、帽子まで戻っていくのを感じた。これで錠が出来たようだ。

 いい物が手に入った。いや、いいものなのか。まぁいいや。


 でかいハエ……アブに遭遇した。ハエなのかアブなのか、外殻が硬く、薄羽があるのに飛べないように見える。長い無数の手足を槍状に突き出して攻撃してくる。

 デジャヴ――オレはこの攻撃を初めて受けたが、受け流した記憶がある。剣術のデータなのだろうな。素で受けたら重さに耐えられなさそうな攻撃だが、【纏】があれば耐えられる。突きと言う攻撃を厄介なものだと認識する。【纏】は面への攻撃には強いが、点での攻撃には突破される可能性を感じた。

 手槍を潜り抜け四つの尖る顎の下へ――首と胴の接合面を下からぶった斬り上げる。緑の体液が飛び散り首が落ちた。その後の反応に対して顔をしかめる。ハエアブは落ちた頭を拾おうと自らの手槍で頭を貫いて胴へ接合しようとした。体にある程度の本能が見受けられる。いや、おそらく体にある魔石の反応だと察する。当然首と胴は接合されないのでやがて動かなくなった。さすがに不味そうなので食べない。いくら何でも自分で自分の頭を貫いたらダメだろ。

 このハエ、アブなのか、個体として強い印象を受けた。

 この足、手なのか、槍状の手足の先端は鋭く、中途中途に突起や返しが見られる。引く時に武器をひっかけられたら奪われそうだ。一応データをストックしておく。

 解析データ、血液も人間にはおそらく毒だ。

 熱剣に纏わり付いた緑の液体を払い落す。

 この熱剣は硬い。強度が高い。個人認証の術式構成の難易度が高い。

 作った奴が女神様だと言うのならこの性能でも納得はできる。

 でも人間て克服する生き物だから、何処かの誰かは宝物より優れた物を作るかもしれない。ミラージュレターをどうにかできればの話しではある。


 一通り確認したので、個体【ミリアリア】の体液について考察する。

 解析データでは男は個体【ミリアリア】の体液に脳が犯されていた。

 体液の成分は構造を見てもオレにはチンプンカンプンなので中和や無効化が現時点では難しい。人体から取り除く場合【分解】で成分だけを強制剥離するしかない。

 男の痕跡を辿る――斬撃で必要最低限の通り道を切り開いた痕跡を辿る。葉や茎、通り道に斬撃の焦げ跡が残っていた。

 見つけた――個体【ミリアリア】と同種と思われる個体が複数存在する集落を目視に捕らえる。家などの文明が見られる。

 【纏】を発動。念のため姿を晒す――人類が存在しており共存の可能性を捨てないためだ。

 この個体【ミリアリア】と同種と判別した個体群は、オレの姿を認めると上から下、胸や股間付近を凝視する仕草をした。体の凹凸を確認しているのかもしれない。雄か雌か判別しているのだろうか。

 攻撃する様子はなく、ただ近づいてくる。認識阻害の魔石の影響か、それとも人型を攻撃するのを本能が躊躇っているのか、激情には駆られない。しかし近づいてきた個体の解析データを開くと、一見友好的と見られる行動が、すでに攻撃になっている事実に気づく。

 人類はこの魔物と決して仲良くなれない。

 解析データ――接触する手などの部位に体液、おそらく唾液が塗りたくられている。そしてその手でオレの体に触れて来る。剣で払う仕草をしてもお構いなしだ。

 女が一人出て来た。解析データでは人間の女だ。オレの手に持っている剣と首を見て、ペタリと地面に尻をつけた。感想としては、なんでコイツ等はこんな質素な布みたいな服しか着ていないのかと脳裏を過る。森舐めんなと考えたがオレもワンピースみたいなボロ布しか着てねーわ。


 女に首を差し出して落とす。

「ジュシュア……なんで」

「そいつに攻撃されたから殺した」

「……なんで?」

 なんでと言われても困る。家族だったらすまないと感じる。でも攻撃してきたのはこの男だ。オレはやり返しただけだ。

 とにかく話をすることになり、建物の中へ案内された。その中でも魔物が体中にベタベタと触れて来る。あまり深く考えていなかったが、大切な人間を殺した人間が現れるのはまずかったかもしれない。オレ、コイツ等の敵じゃん。

「あっ……こらっまた後でね……」

 無言になる。

 どうやら女も体液に犯されていると考えた方がいいだろう。実際解析データでは犯されている。

「そちらへどうぞ。座ってください。今飲み物を用意しますから」

 蔦を編んだ座布団――お言葉に甘えて座ると弾力があり、尻に優しかった。

 そう言えば剣の認証データを消していなかったと、次いでにジュシュアの名前を消しておいた。これでオレが魔力を通し認証すれば、いつでも熱剣として使えるはずだ。

「ジュシュアが死にましたか……」

 女は男についてゆっくりと語り始めた。

 女がオレを危険視しない。おかしい。普通に考えて剣と首を持った人間が表れたら恐怖するものじゃないか。オレだったら警戒する。しかし女や魔物にその兆候はなかった。

 何度解析データを開いて確認しても、生体情報状、オレと女のデータは類似している。女を人類であると認識せざるを得ない。何か裏があるのかと警戒はする。

 女の話しではこのジュシュアと言う男は救国の英雄なのだそうだ。剣の腕が立ち国を救ったが、容姿にコンプレックスがあり、所謂人間不信に陥って逃げたらしい。そしてこの地に移り住み、女は男を討伐することを命じられてやってきた。

 元は隊だったが皆ジュシュアに返り討ちに合い、女性以外は全滅、女もジュシュアに負けて心が折れ、そのままここで暮らしていたのだそうだ。

 背がオレより高い。肉付きの良いメリハリのある体、赤に近い黄髪ショート、肌は小麦色、日焼けした顔の皮が所々禿げかけて、彼女の本来の肌の色が薄い小麦色なのが伺える。地味だが可愛らしく何より体の陰影が嫌でも視覚を刺激し、コイツは女だと本能に訴えかけてくる。コイツが女なら何なんだよって話だが、オレは男で、こいつは女だから繁殖できると体と本能が言っている。はた迷惑な話だ。

 女の名前はミラジェーヌと言うらしい。貴族の娘なのだが四女なのと成人したので家名が無いらしい。親に反発して通常は嫁に行くところを騎士になったので彼女自体は貴族ではないようだ。今回の件でジョシュアを打ち取れば名誉騎士の位を授かる算段だった。名誉騎士と言うのは貴族の中でもっとも地位が低く、土地が無ければ世襲もできないまさしく名誉の貴族のことだ。

 ジュシュアの首は村のはずれで燃やされ埋葬された。

「ここの魔物は?」

「この子達は大丈夫よ。魔物だけれど敵意は無いの。人懐っこいし……」

 気づいていないのだろうな。

「これから、どうする?」

「……国にも帰れないし、もうジュシュアもいないし……ここでこの子達と暮らすわ。貴方はどうするの?」

 迷ってはいるよ。この魔物たちを殺すかどうか。

 なぜ国に帰れない。ジュシュアはもういないのだから役目は終えたはずだ。

「……良かったらあなたも一緒に暮らさない? 詳しくは聞かないけれど、訳ありなのでしょう? 一緒に……ね?」

 目がすわってやがる。縋り付くようでもあった。心が折れてしまっている。手で触れて来る。その手の表面にはおそらく魔物の体液が付着している。ナメクジみたいだな。通り道がうっすらとテカるアレだ。

「オレはジュシュアの敵だ。普通に考えて剣と首を持ってきた怪しい人間と一緒に暮らそうとは考えないものだが?」

「……そうなの?」

 そうなのと言う答えに吐き気がした。

 村の様子を見て回った。村としての体は保っているように感じる。

 農業や畜産を行っているようだけど、何処か歪だった。ジュシュアという男ありきの村だと言うのが良くわかる。畑を耕してはいるが、耕しているふりをしているような、同じ作業を永遠と繰り返しているだけのように感じる。ただ真似しているだけで意味がない。

 ……ジュシュアという男がいなくなっても、その敵を取ろうとする魔物はいなかった。

 夕食に差し出されたスープ。解析データより魔物の体液が含まれていた。

 女が本心を隠しているのを警戒している。

 【分解】でデータより体液を除去して口へ運ぶ。

「どうかな? 口に……うっ合うと、はぁはぁっいいけど」

 頭が痛くなりそうだった。

「この魔物は人の思考能力を落とし依存させる体液を持っている。お前もその体液に犯されている」

「え?」

「これからその体液を分解する。後は好きにしろ」

 事の結末はひどいものだ。

「……え?」

 解析データより体液状の依存物質を【分解】で除去する。

 すわった目に色が戻るように彼女は呆けていた。

「あたし……なんで?」

 魔物が彼女に触れ、彼女はそれをしばらく見つめて止まった後――ケロリと吐しゃ物が口から洩れた。

「おヴぇえ……」

 立ち上がり彼女の背中をさすったが余計に吐いてしまった。

 一通り吐き出すと、それから彼女は狂ったように笑いだした。狂ったように笑い出して、次いで泣きだした。泣き出して縋りついて来た。かと思えば体を抱えて震えだし、寄って来た魔物に短く悲鳴を上げて後ずさり、肌を掻きむしり始めた。血が流れるのも気にせず水場で体をひたすら洗い続け、洗う水が真っ赤になってその中で倒れた。

 村から離れ帽子の中へ彼女を運び込む。意識の無い人間を帽子の中へ引きいれるのには骨が折れた。何より灰色の人型、魔物が触れようとして来るのが地味に邪魔だった。何か過激な攻撃をしてくるというわけではなく、あくまでも触れようとしてくる。

 回復したほうがいいのか、しないほうがいいのか迷いながら【継いで修復する】と【依存して】を使用して彼女を快方した。

 しばらくしてうとうと――目を覚ますと彼女の姿はなく剣もなかった。帽子の外へ出る。

 赤かった。燃えて赤かった。剣がなかった――魔物の死骸が転がっていた。狂ったように笑う女がいた。狂ったように剣を振るう女がいた。ジュシュアと言う男が築いたものが、その自らの剣によって赤々と燃えていた。

 熱気が顔に当たる。根元から燃える炎は、足元よりも顔を熱して熱かった。乾いた空気だ。乾いた空気がある。なんでこんなことになっている。

 唐突だが、今唐突に、魔力で作った炎や水が、なぜ消えてしまうのかに気が付いた。

 魔力で炎自体を作っているからだ。水に関しても水自体を魔力で作ってしまっている。現在存在している空気中の水分を操ればおそらく消えない。やり方は模索するしかないけれど。

 いや、今それどころじゃないのだが、唐突にそう考え浮かんでしまった。

 いくつかあった選択肢の結果を見た気がする。自らが望んだ結末なのかもしれない。少し迷っていた。殺す事への変な抵抗(ボク)がある。だから女が殺してくれて良かった。

 目が合った女がオレに剣を向けた。

 魔術を展開するまでもない。女を見ていた。地獄のような場所に見えた。ジュシュアという男にとっては天国だったのかもしれない。

 女は弱弱しいがにやけるような苦笑いのような表情でオレを見ていた。

 申し訳なさと苦みを感じているかのような、複雑で入り乱れた表情をしていた。

 そしてゆっくりと動いて、自分のお腹を剣で刺した――。

 崩れ落ちていく女を見ていた――何が正解なのか考えていた。

 オレはなぜジュシュアを殺した――攻撃されたからだ。

 なぜ会話をしなかった――腹が立ったからだ。

 首を斬られた感触を思い出し、そっと撫でた。死ななかったからいいじゃないか。そう告げるボクとそういう話しじゃないだろうとオレが衝突する。

 オレはお人よしじゃない。対価もなしに動かない。やられたらやり返す。

 もうどうしようもない――ジュシュアと言う男は死んだ。オレに死者を蘇生させる魔術は使えない。使えたとしても復活させる気がない。この件はもう終わっている。人が死んでいる。人が死んだ。過去では赤の他人であってもそれだけで苦しかったことが目の前にある。それなのに今は何も感じない。

 愛する人を失うのは悲しいじゃないか――それを言うのは卑怯だろ。

 生きているだけでいいじゃないか――それだけでいいじゃないか。

 生きているなら何時か笑うよ。それでいいじゃないか。その場にオレ(ボク)がいなくとも、それでいいじゃないか。

 メイリアだって、何時か何処かで笑ってくれるはず――。

 そこにオレはいないけれど。いてはいけないけれど。

 いや、最初からオレなど、必要無かったのかもしれない。

 思い上がりも甚だしい。苦笑してしまう。

 死にたかったのではないのか――この女に殺されると言うのなら、それでも良かったのだろうと今更ながらに考える。

 そう納得する答えを得ても心臓はチリチリとして痛かった。

 倒れた女の側へ歩いた。チリチリとして火が赤かった。妙に温かく感じて、その火が好きだった。全てを燃やし尽くして消してくれる。オレも燃やしてくれればいいのに。

 だがこの痛みという炎に焼かれることから逃げることは許されないのかもしれない。

 抱える女にはまだ息があった――痛みと苦しみに呻く表情と、体中から汗を噴き出し赤く濡れていた。腹を切っても苦しいだけでなかなか死なないらしい。

 このまま――このまま死なせてあげるのが正解なのだろうか。

 オレは――ボクは、この結末を導いてしまった結論をどうつければいい。

 迷った挙句――オレはミラジェーヌを生かすことにした。

 でもやはり――死んだ者は生き返らせることはできないようだ。

 残ったのはオレとミラジェーヌだけだ。

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