第11話 有翼騎士

遡ること2ヶ月前。銃の生産ラインが確立し始めた頃の事だ。


「ロゼ、一応設計図が出来たんだけど、これでどう?」


ユーリから渡されたのは大きな紙いっぱいいっぱいに描かれた設計図だった。


「魔法ってホント便利だよね。対地球比で足りない技術レベルを、簡単に埋めれてしまうんだから」

「ほんとう。これ、普通だったら無理。少なくとも数十年はかかるはず」


軽量で、頑丈、そして安価。モデルにしたのは二次大戦中、数々のエースを生み出したオランダ、フォッカー社製の単葉小型戦闘機、「Fokker D.ⅩⅩⅠ」戦闘機。この世界からすれば、400年以上は先の技術に匹敵する「量産型戦闘機」の設計図が、わずか一月ほどで理論的に実現可能になってしまったのだ。


「操縦系統は油圧、機構の単純化のためにフラップは0か15の二段階、脚は固定脚にしてみた。一番しんどかったのはエンジンだけど、研究局といろいろやってみて、空冷星型9気筒でも十分な馬力が出力出来たから、それを採用。ラジエーターに風魔法の真空化術式を埋め込んで冷却技能を高めて、より燃焼力の強い高純度の燃料を使えるようにした。・・・私結構頑張ったくない?」

「頑張った。でも、本番はこれから」

「そうよね。・・・じゃあ、生産局に話は通しておくね。あと1ヶ月で量産まで持っていく」


そうしてできた試製機体は私どころか設計者であったユーリも度肝を抜かれるものだった。


 全長9m、全幅13m、全高3.7mと、原型機より大型の機体に仕上がりながら、木材や布をメインに使った機体はより軽量であり、空虚重量は約1200kgに収まった。難航することがわかっていたエンジンは研究局で作られた試作型を改めて生産用に設計し直した空冷複列星型10気筒のエンジンを搭載。カタログ上は原型機とほぼ同馬力の出力を可能にした。燃料タンクは大型化した機体の中央底部に設置し、素の状態で90分の飛行が可能に。翼内に搭載した6丁の7.62mm機関銃は空中目標用に開発した徹甲曳光弾AP-T焼夷弾Iを3対2になるよう組まれた空中目標ベルトを1丁あたり500発、合計3000発を発射可能にした。

・・・はっきり言って化け物だった。


「どうしてこうなった・・・」

「ま、まあ、原型機よりは機動性と最高速と耐久性は落ちてるから・・・ね?」

「それは・・・そうかもだけど」

「それにほら! 破砕榴弾HEF開発できてないから!」


試験飛行を終えた私たち2人は、喜ぶ他開発陣とは違い、いかに性能を下げるかということ頭を悩ませていたのだった。


 3機の試作を経て、量産型一号機が完成したのは一か月前。試作二号機をもとに造られた機体は全長11,5m、全幅13,6m、空虚重量3240㎏と試作一号よ大型重量になった。大型化した上にフラップを0度、5度、10度、15度、30度の5段階にしたり、前輪を引き込み式にしたりと機能を加えた結果、重量は当初より圧倒的に増え、原型機さえも余裕で超えた。しかし、不意に起こったユーリの暴走により生まれた空冷複列星形18気筒という化け物エンジンを載せ、830馬力から1660馬力と倍まで出力を上げたことにより、速度、上昇、加速性能についてはさらに強力になった。もはや参考機体そのものがフォッカーD21からヴォートF4Uコルセアに変化したのではないかと思われるこの機体は翼内に10丁の機関銃を備え、航続距離2500㎞以上を叩き出すこととなり、さらに私たち元地球人の頭を悩ます結果となった。


 そして、それは今日、初めて外部の人の目につくこととなる。


――――


「む? なんだこの音は」


 ダルラン軍務卿の言葉で全員が耳を澄ます。遠くから聞こえてくる重低音。やがてそれ次第に大きくなり、ついにその姿を現した。


ブオォォォォン!


「なんだ?!」

「こんなときに飛竜か?!」


混乱する国王たちの上空で一機の戦闘機が風切り音を響かせながら旋回を続ける。私は聞こえてくる爆音に負けないよう、なるべく国王たちに近づいてから話す。


「空は、果てしなく広いです。平面の動きだけでなく、上下の動きが追加される飛行体の動きを予測することは困難であり、一方的な射程の暴力は地上に対し圧倒的な優位を誇ります。・・・ならその優位をどう埋めるか? 簡単なことです。こちらも空を飛べばいい。位置と速度の運動力で優位に立ち、自分たちに敵うものはないと思っている奴らに、運動力の暴力を押し付ける。


・・・航空戦力は、航空戦力を以てこれを討つ・・・


そのために私たちが極秘開発していたのが戦闘機・・・『エアーAirスペリオリティsuperiority』になります」


制空権の意を冠するそれが、上空を悠々と飛行する。

この時、彼らは一抹の希望を見出していた。


「これなら・・・あれらにも・・・」


わずかに呟かれた言葉が、この数か月後、実際に証明されることになると、私には予想がついていた。


―――――


大変長らくお待たせしました。

ホント、誰ですかね。異世界に戦闘機なんてバカみたいなこと考えたの。技術レベルの落とし所が本当に難しいですわ!(白目)


結局今回は知り合いに協力してもらいつつ単葉黎明~大戦初期のレシプロ戦闘機に落ち着きましたわ。中には複葉機や、黎明ジェット機、一気に第三世代ジェット戦闘機(F4とか)までとかの案も存在しましたわね。でも前話で軽く触れました通り同盟国陣営のワイバーンが実質的なアフターバーナーで700㎞前後まで出せる上に飛竜らしくホバリング能力もあるので「ワイバーン相手に有利に戦闘を進める」には速度性能、高高度性能の劣る複葉機では前回名前だけ出た火縄銃よろしく、技術分野の将来性に難があるという理由で却下に、黎明ジェット、第三世代ジェット機はエンジンが技術的に高度であるから、そもそもジェット機初の機体、Me262は1942年7月には初飛行してるため世界初の単葉レシプロ機から20年ほどで完成しているという点を踏まえ、近いうちに再現可能なので今じゃなくてもいいという結論になりましたの。


ちなみに完成した戦闘機Air superiorityですが、本当に機体設計はまんまコルセアでしてよ。友人3人と性能案出し合ってアレに落ち着きましたわ。ちなみに当時は明らかに機体重量にエンジン馬力が伴ってないものができたり、生産性ガン無視の重装甲戦闘機ができたり、B-36戦略爆撃機に搭載されてた4300馬力の大型エンジンを移植してきたコルセアだったりといろいろカオスで面白かったですわよ。ちなみに最後の4300馬力エンジン、航空エンジンメーカー大手のプラット&ホイットニー様のR-4360 ワスプメジャーというのですけど、。「F2G コルセア」で調べると出てきましてよ。


あ、次は番外編ですわ。投稿してなかったこの一か月の間にとあることが起きたので、それを文章化して投稿しますわ。多分・・・



・・・数日以内に出しますわ!(信頼度皆無)

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