第8話 Air to Air Jakt

「あー、あー、こちら『警備員ガードナー』。作戦空域に到着した。『淑女レディ』は『護衛バットマン』を連れている。どうする?」

【こちら『紳士ジェントル』。私は『淑女レディ』以外に興味ない】

「『警備員ガードナー了解。貴君のナンパ成功を祈る」


高度2400m。既に視認内にいるワイバーンに機首を向け、IRST赤外線索敵追尾システムを起動する。

この世界において無類の対空、対地能力を持つワイバーンは、腹部に可燃性の液体を大量に蓄積しており、それを空気と混合、燃焼させながら吐き出す。常に腹部に熱源を持っており、その熱はJAS 39EグリペンGEやF/A-18スーパーホーネット、Su-37スーパーフランカーなどの爆熱空冷エンジンと大して変わらない温度にもなる。

さて、今回私が愛機グリペンに積んできた空対空ミサイル、IRIS-TRB98短距離空対空ミサイルは赤外線誘導方式のミサイルであり、ロックした敵の熱源めがけて飛んでゆく。対抗手段カウンターメジャーのフレアを散布しながら自機の出力を絞り、回避するように機動をとれば避けられるわけだが、もちろんワイバーンにそんなものは飛んでいない。つまり・・・


「シーカーオープン・・・FOX2!」


放ったミサイルはロックしたワイバーンめがけて飛んでゆき・・・


命中ヒット! 撃墜スプラッシュ!」


ワイバーンと共に派手に爆ぜた。


4騎いたワイバーンの1体が落ち、他の3騎がこちらに気づき、離脱経路に進入した私を追い回してくる。さすがはこの惑星最速の生物だ。魔力保護と外付けブースターは使っているものの、時速700kmほどは出ているようだ。


「こちら『警備員ガードナー』。余程『淑女レディ』にシゴかれているみたい。ケツに噛みついてきて離れない」

【『警備員ガードナー』、大丈夫?今ならダイブで奇襲もかけられるけど】

「舐めてもらったら困るよ『紳士ジェントル』。こちらは機動性最強のグリペンに最強パイロット付きだ」


相手は最高速で直進している。対してこちらはまだ低速域。速度にも機動性にも余裕がある。適当にスライスバックとループの機動を組み合わせてあげれば・・・


「はい。後ろとった」

【いやいや、そんな簡単に言われても】

「フランカーとか、フルクラムとか、それらを押し出すのに比べたら簡単な動作」

【グラッガー、あなたラプターとかライトニングと戦ったことないでしょ? あいつらホントおかしいのよ】

「さっすが。ラプター1機とライトニング2機落とした人の言うことは違うね。あと、私Su-57撃ち落としてるから」


無線越しの会話をしながらもワイバーン3騎にそれぞれミサイルを撃ち込み、撃墜する。


撃墜スプラッシュ3! 敵航空部隊を殲滅Air Enemy destroy! 『紳士ジェントル』、『淑女レディ』がフリーになった。・・・ミサイルも打ち切りだ」

【了解。こちらも標的を照準した 。『警備員ガードナー』、作戦空域より離脱しろ】

「『警備員ガードナー』了解」


上昇反転し、エンジン出力を4割ほどに絞る。攻撃目標を視界に入れつつ空域から離脱する。途中、目標が大きく爆ぜたのが見えた。


「『警備員ガードナー』より『紳士ジェントル』へ。ナンパは成功した。『淑女レディ』は大層喜んでいる模様」

【『紳士ジェントル』了解。このまま華麗に去ることにする】

「了解。こちらもそちらも合流する」


出力を上げ、高度11000mまで上昇する。水平飛行を維持していると、右前方にグリペンに似た戦闘機が降下してくる。無線コードネーム『紳士ジェントル』の正体、ユーリの駆る戦闘機、ダッソー・ラファールC型が視界内に現れた。


【全く、何でこんな事になったのかしら】

「あなたがあんなこと言ったからじゃない。まあ、私としては助かったからいいけど」

【本当ね】


無線越しの談笑しながら飛行場に向けて巡行する。ソニックブームによる騒音を防止するため、亜音速巡行サブソニック・クルーズを維持する。


「でも、〔戦争〕始まってすぐの任務が、‘‘聖女‘‘の始末だなんてね」

【国際的影響力があって、狙いやすいもの。連合としては、さっさと始末しておきたかったのだろうって簡単に想像できるわ】


・・・そう、この戦いは約半年前・・・ユーリとの同居が始まってから動き始めていた・

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