(三)-6

 そして六人がいる部屋の中で、最終的に合計五人の視線が、残る最後の一人にぶつけられることになった。

 その対象は何食わぬ顔で醤油を付けたカッパ巻きの一片を箸でつまんで口に運んでいる、神和泉先生その人であった。

 残りの五人は、先ほどまでの笑顔を全面的にキャンセルし、めいっぱい皺を寄せたしかめ面を作りつつ、鼻を手で押さえていた。

「ちょっと私、失礼。おトイレへ……」

 そう言ってまず立ち上がって部屋を出たのは池上である。


(続く)

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