(三)-5

 しかし、次の瞬間、間の抜けた音が部屋に響き渡った。それは膨らんだ風船から空気を抜くような、懸命に力んでいた筋肉が弛緩するかのような印象を持ちつつも、それにまるで反してほほえましい幸せな食卓シーンを一気に破壊する強大な一撃であった。しかもその音は聴覚だけでなく、嗅覚にも作用して幸福な食卓を一気に地獄絵図へと一変させたのである。その正体は、そう、である。

 一堂の動きが止まる。全員が自分の左右の人物に猜疑の目を向けながら様子を伺う。


(続く)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る