第2話 朝食

うん、と背伸びをする。そろそろ朝ごはんをたべなくては。暖かい足でひんやりとした床を感じながら、部屋のドアを開けた。


階段を一歩一歩踏みしめて降りていき、リビングのドアを開ける。朝早くから仕事に向かう父と、朝ごはんを作るために起きている母がこちらを向いた。

「おはよう」

と声をかける。

「おー、おはよう。」

と父。機嫌はまぁまぁだ。

「おはよう!」

と母。

父親は時間が被る時と、被らない時がある。実のところを言うと、あまり被りたくは無い。別に嫌いでは無いし、自分たちのために仕事をしてくれていることに感謝しているから、あからさまに行動に出したりはしない。(行動に出したら父の機嫌が悪くなって時間が奪われるというのもあるが。)


家族としては好きなのだ。ただ、何だか苛立ってしまう。傷つけたくは無いから、それを表に出さないようにする。それがとても疲れるのだ。まだ反抗期なのだろう、私は。


父が

「ニュース、ちゃんと見てるか?他人事じゃ無いんだからな、これも。」

とテレビの方を顎でさした。ウクライナ戦争だ。

「分かってんのか?ちゃんと。」

何だか下に見られているみたいで、嫌な気分だ。父の方こそ、ちゃんと分かっているのか?学生時代、私ほど勉強したか?



…いけないいけない。また苛立ってしまった。私は慌てて「分かってるし、ちゃんと見てるよ!」

という言葉を下の方に引っ込めた。まだまだ私は未熟なんだろう。そう思って当たり障りのない返答でその場を済ませた。やれやれ、反抗期は厄介なやつだ。


黙々と朝食を食べていると、もう父が家を出る時間になったらしい。一通りの荷物を持って、ドアを開けると同時にこちらを向いた。



「気をつけて登校するんだぞ。」



さっきまでの気持ちが晴れ、胸がかゆく、暖かくなる。単純なものだ、私の心は。

「うん、パパもね。いってらっしゃい」

そう言って食器を片付け、私は朝食を終えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

荻野 和(おぎの のどか) @kinoshita_14

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る