1.4 令嬢様と梅雨明け
梅雨がやっと終わった。
でも終わったと思ってるとまた降り出すから厄介。
「渉くん!明日は外が暑くなるみたいですよ」
「え、それは非常に面倒くさい」
「渉くんはその言葉口癖ですよ……」
だって夏は暑いし汗かくんだもん。面倒くさい。
雨も嫌い。夏も嫌い。雪も冷たくて寒いので嫌い。春は花粉がしんどい。
ダメ人間な俺の身体は日本の気候に合っておらず、わがままだ。
「日本に四季なんてなかったら……」
「でも四季がこないと楽しい一年がつまらない一年になりますよ? それに最近は地球温暖化の影響もあって四季が四季じゃなくなることだってあるかもなのです」
「そういえば最近災害が多いのもそのせいなのかな。それは困る」
よくスーパーの裏や道沿いにゴミを捨てている人がいるけど本当にけしからん。
一人のマナー違反じゃ何も変わらないと思う奴はいるだろうけど、結局は一人一人の人間が皆意識していかないとこの状況は良くならない。
まぁ、こんな大口叩いてる俺も気づかないところで温暖化を手助けしてしまっているのだろうけど。
「何か考えてますね。きっとそれは渉くんのためになりますよ」
「そうかもしれない。やっぱり自然の有難みを今のうちに感じておかないとな」
「それじゃあ明日の夜は二人で散歩しましょう!」
「え、なんで」
「渉くんは最近運動不足でしょうし、体育の授業も矢島さんとずっと話しているでしょう」
体育の授業、見てくれてる? 小山恵が?
まぁ、これだけ関係ができれば見るくらい確認の上ですることか。
それに俺みたいな陰キャよりは矢島のようなコミュニケーション力のある男子の方が可能性あるだろうし。
ていうか、俺はこの前から何考えてるんだ。別に、小山恵と付き合いたいなんて思って無いくせに……。他の奴と自分を比べるなんて。
そりゃ恵は可愛くて美人で清楚で魅力的ではあるけど。
「わかった。明日晩ごはん食べてから少し歩こうか」
俺も運動不足だし、せっかく恵が誘ってくれているのに断るのは贅沢が過ぎる。
『童貞陰キャは童貞陰キャなりに生きろ』とよく実家の近所に住むおばちゃんに言われたものだ。数十年前までは町内で有名な恋愛のスペシャリストだったらしい。
「私、アジサイを見つけたいです!梅雨が終わって直ぐですし、咲いているかもなので」
「それじゃあ明るい時の方がいいよな?」
「いいえ、渉くんと見られるなら夜も最高です!」
俺はいつからか恵に少し好かれている気がする。
でもこれは童貞陰キャがよく勘違いして痛い目をみる落とし穴。思い上がるなと自分に言い聞かせた。
でも仲良くはなってきてるってくらいは思ってても良いのかも。
「それじゃあ明日は散歩行くので心の準備を!」
「俺は引きこもりニートか!」
いつの間にか明日外に出ることが楽しみになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます