0.7 お隣に養われる?
「お弁当美味しかったです。キャラ弁のクマさん」
「あれはその……。気分で作ったのですが、後々考えれば学校にキャラ弁なんて。すみません」
「いや、美味しかったし。それに誤魔化せたので結果オーライです」
小山が言いたかったのはたぶん、学校に俺がキャラ弁を持って行ったことによって二人の関係がバレるのではないかと心配したためだ。
二人の関係と言ってもただ弁当を作ってもらい夜に弁当箱を返すというだけのお隣さんな関係。
「そこまで気にしなくても。お隣なだけですし」
「そ、そうですか……。もぉ」
「ん?」
「いいえ、なんでも」
なんで令嬢様は不機嫌なんだ??
別に俺は小山の作ったキャラ弁当を学校に持って行っただけだろうに。
これだから女子というものは未知の存在なのである。
「それで美味しかったなら明日もいりますよね?」
「はい。可愛いキャラ弁でお願いします」
「キャラ弁はもう作りません!!」
なんでそんなに恥ずかしがるんだよ。
キャラ弁なんて作れるんだから尊敬ものだし、朝から相当な労力がいるだろうに。
「じゃ、お金。少ないけど受け取って」
「受け取れません!!それに、二千円もお弁当を作るのにはかかりませんし」
「でも、学校一の美少女が作ったお弁当を毎日食べられるんだから安いもんだろ」
呆れた顔をする小山は二千円のうち千円だけを取って言った。
「それじゃあ明日から朝、藤山さんのお宅でお弁当をつくらせてもらいます」
「は?! いや、なんもないし」
「調味料などはありますし、二人でお弁当の費用は出し合って私が作ります」
小山が俺の家で弁当を?……。
「あのな、知らない男子高校生の家に華奢でか弱い女子高生が軽い気持ちで上がっちゃだめなんだよ。万が一があったらどーすんだ」
「藤山さんはそんな人でないですよね」
「まぁ、そりゃ。そうかもだけど」
『大丈夫です』と顔に書いているくらい自信ありげな小山。
そりゃ俺は三次元の女には興味ないし、二次元もさほど好きではない。
期待すれば裏切られ、どれだけ願っても、頑張ってもそれは報われないということをわかっているから。
でも小山はなんか違う。なんとも表せれないこの感情がムズムズする。
「明日は早く起きてくださいね!藤山さんが起きていないと私お弁当が作れないので」
「じゃあ合鍵渡しときますね」
そう言って鍵を渡すと小山は予想外に驚いた。
「これは流石に駄目でしょう。万が一私が藤山さんの家で変なことしたらどうするんですか」
「変なことって?」
「それはとにかく変なことなんですぅ!!」
「でも……。俺はこんなに自分のこと心配してくれて弁当まで作ってくれる人が悪いことするとは思わないし、小山さんのこと信用してるから」
「べ、別に……心配など。ただ身体に悪そうなものばかり食べてるから」
「それが心配っていうんですよ。ありがとうございます」
そう言うと少し不満げではあったけど、小山は俺の手のひらから合鍵を受け取ってくれた。
「もぉ。後悔してもしりませんから……」
「ん?」
「なんでもありません!」
なんで怒っているのかわからないけど、全く怖くなくて。やっぱり可愛いと思ってしまう自分がいた。
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