第30話 侑季乃と美鈴
ERROR…ERROR…ERROR…ERROR……
「侑季ちゃん! どうしよう…答えが出ない…」
玲は心痛な面持ちで頭を抱え込んで吐き出している。
「“好き”も判るし、“大事”だって判るよ…でも、それに美鈴ちゃんを紐付けると、どうしてもERRORが出るんだよ…」
玲はいつになく自分の身に起きた状態に狼狽えている。
伯祖父が海外の研究施設に行っている今、玲の躰の秘密を知り、尚且つ伯祖父の後継者になろうとしている俺が玲にとって唯一相談出来る相手だ。
「落ち着け!大丈夫だ!」
俺は玲の肩を叩き声を掛ける。
「ごめん侑季ちゃん…僕…こんな症状は初めてで…」
「心配するな、ひとつづつ問題行動を検証してみよう」
今まで伯祖父が入力した行動理念からこんなふうに外れたことは無い…
一体何が原因なんだろう…
まさか本当に美鈴が原因なのか?
「“好き”と“大事”か…美鈴は俺にとっても可愛い妹だから、好きだし、大事に思ってる」
俺はまず自分が思っていることを伝えた。
でもこの気持ちは家族に対する愛情だ。
しかし…考えてみたら玲にはどの程度の愛情を認識しているんだろうか…
恋愛感情は付加されてないし…
「……」
俺は情けない顔でしょぼくれている玲の顔をまじまじと見た。
『そう云えばクリスマスの時も似たような事があったな…』
しかし、何かきっかけがあるはずなんだが…
俺は玲にERRORを感じる前に何かいつもと違う事は無かったか訊ねると、美鈴が他の男子から告白された一連の出来事を説明された。
美鈴に告白なんて!
何考えてるんだ!
アイツはまだ子供なんだからダメに決まってるだろ!
俺は腹立たしい気持ちを落ち着かせるために深呼吸してから少し整理した。
頭の中で、不本意な考えが幾つか浮かんだが玲に確認する事にした。
「玲、お前なんで美鈴の交際を断ったんだ?」
「なんでって…美鈴ちゃんが付き合いたいと思ってなかったから」
「うん…」
まあ、この辺は想定内の答えだな…
「美鈴が付き合いたい相手が出来たらどうする?」
「美鈴ちゃんは誰とも付き合わないよ…侑季ちゃんが反対するから…」
そう断言する玲を見て、俺はやっぱり感情の違いを感じた。
「玲、俺も美鈴も人間だ」
玲の顔を真っすぐに見据えて俺は言葉を続ける。
「その時の感情で一度決めた事を簡単に変えることなんて珍しくはない。確かに美鈴は俺の可愛い妹だから、他の男なんかに渡さず家の中に囲っときたいくらいだがそうもいかないしな」
玲は怪訝そうな目を俺に向けている。
「まあ、囲っときたいのは大袈裟だけど、今はまだ美鈴も精神的に未熟でも、もし美鈴に好きな男が出来て、その未熟さを補って余りあるヤツなら、美鈴を任せても大丈夫だと思える様な信頼出来るヤツなら付き合いを許すかもしれない」
「…?!」
玲は明らかに動揺した様子で、狼狽しながらなにか自問自答しているようだった。
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