第29話 もどかしい想い

 〈玲くんてカッコいいよね…〉

〈美鈴ちゃんが羨ましい〉


校庭でサッカーをする玲を見て蒼香が言ってた。


蒼香は玲が好きなのかも…

そんな考えが頭を過った。


キャンプなんて行ったこともないのに侑季乃に誘われて参加してた…

今までそう云った行事に参加する蒼香を見たことが無い。


あれから俺たちは大体5人でつるむ事が多くなった…

侑季乃も玲も割といいヤツだから、俺も別に嫌じゃない。


クリスマスに皆んなで泊まった時も蒼香は親に許しをもらって参加してた。


その時、蒼香は男が苦手だと皆んなに話してくれた。それでも、友だちになった俺たちは大丈夫だとも…


そんな彼女がそもそも侑季乃に誘われてキャンプに参加するなんて…何か他に理由があったんじゃないだろうか…

俺がキャンプに参加したように…


5人で何かをするのは悪く無い。

初詣も楽しかった。


男に声をかけられてまごついてるアイツを見た時、何故か腹の奥が重くなって気が付いたら走ってた。

他の男と話してるアイツを見て、波しぶきがザワザワと立ち始めるような嫌な感覚が腹の中を満たす…


つい、他の男の前でいいカッコしたくてハンカチを2枚とも買ってやったが、笑って受け取ってくれたのが嬉しかった…


玲と美鈴は特別な気がする。

幼馴染みだから小さい時から一緒にいるのが当たり前。

そんなあの二人をどうこう出来はしない。

俺が見る限り玲は美鈴しか見えていないし、美鈴も何だかんだと言っても玲しか見ていない感じだ。


男が苦手な蒼香が玲を好きなら応援してやりたい…


大人しくて…引っ込み思案で…

アイツの眼鏡が隠れるほど長い前髪は周囲と自分を分ける壁だ…

あの前髪の奥から少しでも明るい景色を見せてやりたい…




ERROR…

ERROR…

ERROR…


ERROR…ERROR…ERROR…ERROR…ERROR…ERROR…ERROR…ERROR…


ダメだ…答えが出ない…


答えが出ないことより、

答えが出ないことによって起こるショートしそうな違和感…


このまま続けたらシステムダウンしそう…



「侑季ちゃん…」


放課後、図書室へ向かう俺に玲が声をかけてきた。こんなに早い時間に来るなんて何かあったのか?


いつもと違う様子に嫌な予感がした…


俺は取り敢えず屋上に上がった。

他人ひとに訊かれたらマズい…

誰にも訊かれず、人が来たら直ぐに分かる場所と云ったら屋上しか思い浮かばなかった。


「どうしたんだ? また何かあったのか?」


俺は恐る恐る訊ねる。


「侑季ちゃん…僕、何度やってもERRORが出るんだよ…」


玲は自分の頭を抱えて話しだした。

こんな玲は初めて見る。

俺は襲ってくる不安な気持ちを、何とか自分で落ち着かせながら玲に向き合う。


「大丈夫だ、俺に話してみろ」


肩を叩き、覗き込むように話しかける俺の顔を玲はまじまじと見つめてくる。


「侑季ちゃん…大事と好きは同意義なの?」






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