第28話 好きと大事
僕は美鈴ちゃんと同じクラスの男子から彼女との交際を承認して欲しいと言われた。
意味が判らず話しを訊いたら、交際は一度断わられていて、もし僕の了承が得られたら付き合えるそうだ。。
「お前が宝生にやたら付き纏っているのは知ってるが、何も彼女と付き合ってる訳じゃ無いだろ?俺はさ、自分の彼女にしたいんだよ」
美鈴ちゃんは彼氏が欲しいって言ってた。
僕がOKを出せば美鈴ちゃんに彼氏が出来る…
美鈴ちゃんに彼氏が出来るように応援するって僕は前に約束した…
僕は…
僕は美鈴ちゃんを護るための存在…
僕は…美鈴ちゃんのために…
僕の中で、上手く答えが出ない…
美鈴ちゃんは一番大事な存在…
「美鈴ちゃんが自分から付き合いたいって思ってないなら僕もOKは出せないよ」
答えが出ないまま僕はそう答えてた。
結局サッカーの勝負をする事になったけど、ボールをゴールに入れるだけなら簡単だから僕には楽勝だった。
侑季ちゃんから加減をするように言われてたけど、負けたら美鈴ちゃんがこの男に囲われると思ったら1本も譲れなかった。
「なんだよこんなに向きになって…結局お前も宝生が好きなんじゃん…
全く、紛らわしいからさっさと付き合っちゃえよ…」
自分から言い出したサッカーでの勝負に、1本もゴールを取れなかった事に可成りショックを受けてるようだった。
「僕が美鈴ちゃんを好き?」
「なんだよ、好きだから傍にいるんだろ?」
不思議そうに僕を見ている。
「美鈴ちゃんは確かに一番大事だけど…」
ダメだ…何度答えを出そうと思っても導き出せない…
「なに言ってんだよ…大事な女って事は、好きな女って事だろ?」
ERRORがまた出る…
蒼香は2時限目から教室に戻ってきた。
「大丈夫?少しは落ち着いた?」
隣の席だから俺は椅子に座る蒼香へ訊ねた。
「うん…ありがとう」
蒼香は優しい笑顔で返してくれた。
(あれぐらいで泣くなんておかしくない?)
(普段男の子から相手にされないもんで感極まったとか?)
キャハハハハハハ…と、蒼香を嘲笑する声が訊こえてくる。
「酷いな、アイツら…」
「いいよ!侑季乃くん…」
文句を言ってやろうと立ちかけた俺に、蒼香が止めた。
「自分でも恥ずかしいことしちゃったなって思ってるから…」
そんな事思う必要はないのに…
寂しそうに笑う彼女が気の毒に思えた。
蒼香は彼氏なんていらないと言ってた。男子が苦手らしい…
これから杏輔はどうするんだろうか…
俺は何となく離れた席の杏輔を見た。
ずっと頬杖をつきながら何か考え事をしているようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます