第25話 射的の戦利品とガーゼのハンカチ
「あいつ何勝手に誤解してんだ?」
一緒に来ていることを、付き合ってると誤解した同級生に呆れた後、蒼香にも声をかけた。
「お前も、嫌ならはっきり断れよ」
「ごめん…あんなの…初めてだったから…」
買ってもらったハンカチの入った紙袋を両手で握り締めて蒼香は肩を落とした。
「あ…いや…別に…怒ってるんじゃない…
彼氏が欲しくないなら…ちゃんと断った方がいいと…あ…でも…こ…怖くて言えないよな…」
目の前で悄気てる蒼香に狼狽し、慌てて言い方を改めた。
「あ〜〜いたいた…」
気不味い雰囲気になった二人のところへ侑季乃が走って来る。
「杏輔なんでいきなり走ってくんだよ!」
杏輔の近くまで来ると、蒼香が一緒なのに気付く。
「蒼香、何かあったのか?」
少し俯いている蒼香に侑季乃が声をかける。
「クラスの男子に誘われて困ってるのを杏輔くんに助けてもらったの」
「そうか…今日の蒼香可愛いもんな。だからって何も言わずに走ってくなよ杏輔…」
「るせっ!」
抗議の視線に杏輔はソッポを向いた。
「それよりアイツらの射的はどうなったんだよ」
杏輔はソッポを向いたまま訊いてきた。
『全く素直じゃないなぁ…』
「あ〜、おまたせ〜〜」
噂をすれば…
美鈴と玲が戻ってきてやっと5人揃った。
「なんだその荷物」
美鈴は抱きかかえているぬいぐるみの他にも、色々な物を袋に入れて持って来たのを杏輔に指摘された。
「玲くんて凄いんだよ!失敗したのは最初の2回だけであとは全部命中なんだよ!」
射的か…まあ、それくらい玲なら簡単なんだろうな。
「蒼香ちゃんも何か買ったの?」
蒼香が大事そうに持ってる白い包みを見て美鈴が訊いた。
「これ? 杏輔くんに買ってもらったの」
「え〜 何買ってもらったの?」
含羞む蒼香に、美鈴は無邪気に訊いている。
「ん? ハンカチ…どっち買おうか迷ってたら、同じクラスの男子から声かけられちゃって…杏輔くんが助けてくれて、ハンカチも買ってくれたんだよ」
紙袋からハンカチを出すと、広げて見せながら蒼香は美鈴に説明した。
「だから言ったじゃん、今日の蒼香ちゃん可愛いから絶対声かけてくるよって!」
美鈴は自分が言った通りになったとばかり、声高に話している。
「黙れ座敷童子。蒼香が可愛いのは今に始まった事じゃないだろ!それよりいくつ取ってきたんだ」
「もう、杏輔くんてばぁ!えっと、玲くんの18回分と、わたしの残りで4回分だから…」
美鈴が暗算を始める…
が、杏輔の方が早かった。
「22個も取ったのかよ!あんな射的で!
ったく…人間技じゃないだろ!」
22個に杏輔もビックリしてるが、杏輔の言葉に俺も美鈴も焦った!
「れ…玲は昔から射的とか金魚すくいとかやたら得意なんだよ!」
「そうそう!」
今までは気にしなかったが、玲にはモノの加減と云うものを少し教えないとダメだな…
こっちの寿命が縮まる…
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