第22話 嘘
放課後、彼女に返事をするため声をかけた。
「悪いけどこの間の話し、やっぱり家族で過ごすよ」
彼女の顔が一瞬曇る。
「え…それじゃあ、わたしも一緒に参加させてくれない?」
上目遣いで強請るように懇願される。
「家族行事なんだ」
僕は答えた。
「え〜、なになに…玲くん何の話し?」
近くにいた女子が僕と上城さんのやり取りに興味が出たのか話しに混ざりだした。
「上城さんにクリスマス誘われたんだけど僕は毎年家族でするから遠慮したんだ」
当たり前のように話す玲に、近くにいた男子が驚いた。
「遠慮って…煌月、お前断ったのか?」
驚きと一緒に、少し怒気も孕んでいる。
「優先順位の問題だよ」
「いや、優先順位なら上城が1番だろ?!」
僕の答えに別の男子も声を強めて訊く。
「僕には家族が1番なんだよ。
家族が1番大事だから家族行事は大切にしたいんだ」
その言葉に周りは何も言えない。
高校生ともなれば、家族より彼氏や彼女を優先するのは普通だと思っていたから、こんなにキッパリと言われると反論に困った。
侑李ちゃんに《家族だけ》って言われたけど
それじゃあ嘘になるからな…
僕にはまだその演算は難しい…
墓穴を掘るより言い回しを変えたほうが容易く処理出来そう。
上城さんは凄い顔で睨んでいたけど、正直どうでも良かった。
だけど…《家族優先》と云うワードが何か引っかかる。
なんだろう…こんな症状初めてだな…
後で侑李ちゃんに相談してみよう…
クリスマスイブの日、美鈴は張り切って料理を作っていた。
「ふんふんふん…ふんふんふん…」
クリスマスソングの鼻歌交じりで楽しそうだ。
俺と玲は部屋の飾りつけをする。
今回、玲が言ってた症状…
〈家族優先って、嘘じゃないでしょ?
でも何か引っかかって…どこかおかしくなったのかな?〉
初めての症状に戸惑う玲へ、俺はひとつ魔法をかけた。
「何も考えずに、自分の中で優先順位を決めてみるんだ。そうしたら答えが判るよ」
飾りつけの後、俺はケーキ屋に向かう。
そこで蒼香と合流。
玲は買い物に行ってその帰りに杏輔と合流する事になってる。
二人とも偶然逢った事になる。
後で二人がウチに来た事が知られても、パーティーが終わった後だと説明出来る。
「いらっしゃい蒼香ちゃん」
美鈴は抱きついて歓迎している。
「お言葉に甘えて来ちゃった。はい、これケーキ」
蒼香は花が咲いた様な明るい笑顔で美鈴にケーキを渡していた。
「杏輔くんもいらっしゃい」
「お…おう!」
杏輔は美鈴の言葉より、さっき蒼香が見せた笑顔の方に気が行ってるみたいだった。
3人以外でする初めてのクリスマスは楽しかった。
玲は美鈴の料理を、これも美味しいから、こっちも美味しいからと言って二人の皿に料理を取り分けている。
蒼香も杏輔も美鈴の料理を美味いと褒めてくれた。
その褒め言葉に本人より玲の方が喜んでる。
どうやら魔法は効いたみたいだ。
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