第19話 カエルの王子 前篇
二学期は文化祭と云う大きな行事があるので皆んな何かと忙しい。
お兄ちゃんは当日学習発表会があるので、毎日蒼香ちゃんと図書室で課題研究を纏めている。
わたしのクラスはお好み焼きのお店を出店する事になった。
玲くんのクラスは中々決まらないみたいで、終るまでわたしはお兄ちゃんのいる図書室で待っている。
そう云えば行くと必ず杏輔くんも図書室にいてよく会う。
「また会ったね」
「お…おう」
わたしは近くの席に場所を取ると教科書やノートを出してその日の宿題を始めた。
一問一問、問題を解き進んでいく。
「杏輔くん…」
暫くしてわたしは彼に声をかける。
「またかよ…」
「ごめん〜」
面倒臭そうな顔をしながらもわたしの隣に来て解らない問題を教えてくれる。
杏輔くんに宿題を教わっていると、玲くんがやっと来てくれた。
「遅くなってごめんね…」
「おっ、やっと来たか。美鈴、続きは彼氏に見てもらえ」
杏輔くんはわたしの頭を子どもにするみたいにポンポンと叩いて自分の席に戻った。
「もうっ、玲くんは彼氏じゃないって言ってるじゃん」
わたしは口を尖らせて、またも心にも無い事を吐く。
「これだけ良くしてもらって何贅沢言ってんだ。そんな事ばっり言ってると他の女に取られちまっても知らないぞ」
それは嫌…
嫌だけど…杏輔くんがそうやっていつも揶揄うからつい思っても無い事言っちゃうんじゃん…
「玲、お前のクラス結局何するか決まったのか?」
残りの宿題を教えてくれてる玲くんに杏輔くんが訊いた。
「劇に決まったんだけど、演目にまた時間がかかっちゃって…それでもどうにか配役まで進んだよ…」
中々クラスの意見が纏まらず、時間ばかりかかった様子を思い出したのか、困った顔で教えてくれた。
玲くんのクラスは《カエルの王子》と云う劇をする事にはなった。
玲くんの役は王子のカエル。
「魔法が解けて王子に戻るまでずっと黒子でカエルの人形を操るんだよ」
玲くんのクラスでは毎日残って小道具の製作や、劇の練習をしている。
わたしは相変わらずそれを図書室で待っている…
最後に魔法が解けた王子様を見てお姫様も王子を好きになりハッピーエンドでおしまいなのだが…
最後の場面で王子様とお姫様が抱き合って終わりにするか、そこにキスシーンを入れるかで、またしてもクラスで討論中らしい…
お姫様とのキスか…
本当にする訳じゃないから気にすることはないんだけど…
それでもやっぱり玲くんが他の女の子と抱き合ったりするのはやだな…
相手役の女の子は
眼鏡をかけた美人なんだけど、素顔は超絶可愛いと噂の子だ…
あんな子と毎日傍で練習してるなんて…
何だか胸の奥が毎日モワモワしている…
「はぁ~ぁ…」
「お前、最近溜息多いな。
もうっ!いつも杏輔くんは一言多いんだから!
「うるさいな、玲くんとはそんなんじゃないって言ってるでしょ!」
わたしは向きになって答えた。
「はい、はい…」
あ〜〜〜っ!
わたしのこの口、ホチキスで止めてガムテープで貼り付けておきたい!
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