第18話 わたしが一番
「美鈴ちゃ〜ん、一緒に帰ろう」
玲くんがわたしのクラスまで誘いに来てくれた。
「うんっ!」
わたしは元気よく返事をして教室を飛び出す。
玲くんにとっては今までと変わらないお迎えだけど、最近のわたしにとっては玲くんのしてくれるひとつひとつが凄く大事。
お兄ちゃんに相談した日からずっと考えてた。
いつかは好きな人が出来て、わたしにも優しくて素敵な彼氏が出来るかもって…
でも、この先の、どの未来にもわたしの側にいて欲しいのは玲くんしかいない…
玲くんのいない未来なんて考えられない…
玲くんが人間とか…AIとか…
そんなの関係ない。
玲くんは玲くんだ。
だから…わたしは玲くんの【特別】になるって決めたんだ。
でも…どうしたら【特別】になれるのかな…
「なんだ、お前ら結局くっついたのか?」
お兄ちゃんを迎えに図書室まで来たら杏輔くんがいた。
「何勘違いしてんのよ!私たち兄妹みたいなもんじゃない!今だってお兄ちゃん呼びに来たんだから」
なんだか、キャンプで一緒だった杏輔くんに言われたら凄く恥ずかしくてついそんな事を言ってしまった。
「何向きになってるんだよ…ちょっと揶揄っただけだろ。大体こいつ麗を振ったんだぞ、案外理想の好みは高いのかもな」
ガーン!
そう云えば、わたし玲くんの好みとか知らないじゃん…
「杏輔くんは何か用だったの?」
「えっ?」
玲くんが何気なく訊いたら、杏輔くんの顔が見る間に赤く染まった。
なに?なに?どうしたの…?
「あれ、皆んな一緒だったの?」
図書室からお兄ちゃんと蒼香ちゃんが出てきた。
お兄ちゃん蒼香ちゃんと一緒だったんだ…
「侑季乃くんありがとう」
「うん、また来週ね」
蒼香ちゃんたちと離れてからわたしはお兄ちゃんに訊いた。
「随分蒼香ちゃんと仲良くなったね」
「ああ、実際付き合ってみるとやっぱり凄く聡明でいいやつなんだよ。今回の学習発表会は1番を狙えそうだ!」
そうだ、ウチの学校では文化祭の時、学年別で学習発表会があるんだっけ。
「なんだ、あんまり仲良いから彼女なのかと思っちゃった」
わたしはさっき杏輔くんに揶揄われた腹いせにお兄ちゃんにも同じ事を言った。
「まさか、ヒトのものを取る趣味は俺には無いよ」
却ってお兄ちゃんに笑われた。
「え〜っ、それって蒼香ちゃん彼氏がいるの?」
わたしはショックだ…
「ん〜 彼氏、候補かな」
なんだか意味ありげだな…
「い~なぁ蒼香ちゃん…」
「そんな顔しないでよ、美鈴ちゃんに好きな人が出来たら僕全力で応援するからさ」
わたしが溜息混じりでこぼすと玲くんが慰めるように言ってくれる。
いや、いや、いや…
玲くん…相手は貴方なんだってばぁ!
もう…どうしたら判ってもらえるかなぁ…
だけど…わたしじゃダメだって言われたら辛いな…
玲くんはどんな人がいいのかな…
やっぱり可愛い子?
それとも頭の良い子?
それよりスタイルの良い子かな…
わたし…どれにも当てはまらないじゃん…
「そんなガッカリした顔しないでよ。
美鈴ちゃんにだってちゃんと彼氏できるから、僕が請け合うよ」
玲くんは自分の躰をわたしの躰にビッタリくっつけて囁く。
「もう!何度言ったら判るの!女の子にくっついちゃダメだって!他の子にもしてないでしょうね!玲くんのえっち!」
あ〜〜~っ!
またやっちゃった!
いつもの調子でまた文句言っちゃったよ…
もう泣きたい…
「他ではしてないのに…」
玲のこぼした言葉は美鈴には届かない…
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