第16話 最終日
花火が上がった。
湖からではないが、やはり空に上がった花火は綺麗だった。
麗がいなくなった後の俺たち5人で楽しむことになった。
蒼香と杏輔がそれぞれの部屋に帰った後、俺と玲はまだ中庭にいたので、今まで玲と麗が使っていた備品室で話しをする事にした。
美鈴は俺たちが何も言わなくてもそのままついて来た。
「とりあえず麗とどんな話しをしたんだ?」
椅子に座って案外ケロッとしている玲に俺は訊いた。
どうもこいつはこんな時の空気が読めなくて困ったヤツだ…
「他の人には恥ずかしいから聞かれたくないって言うから残ったのに、彼女に訊いてもはっきりしなくて…部屋のドアは直ぐ閉めようとするし…」
玲はその時の事を困惑気味に話してくれた。
「そのうち暑いって服を脱ぎだしたんだ」
それには俺も焦った。関心の無い顔で座っていた美鈴も、ショックだったのか思いつめた顔を玲に向けている。
「僕…暑いならエアコン入れようって言ったんだよ。そしたら…」
どうやら麗は服を脱いで迫ればこの朴念仁モドキもその気になると考えたらしい…
〈わたしに脱いで欲しくないの?
それとも自分で脱がしたい?
玲くんが脱がしてくれたらその先もいっぱいしていいよ〉
女の子の美鈴は訊いてて辛そうだ…
「それでお前はなんて答えたんだ?」
さすがに俺はこれからの事もあるので知っておきたい…
「僕と生殖行為がしたいのかって訊いたよ」
生殖行為って…なんて訊き方だ…
「でも無理だって断ったよ…僕にはまだできないもん…」
まだ…?
「中学生の頃にも一度お爺ちゃんに訊いたことがあるんだよ…
僕の生殖器使えないのかって…」
「はあ?」
俺は何だか呆れたが、美鈴は顔を真っ赤にさせて居心地の悪い顔で目線をズラした。
「美鈴、お前はもう部屋に戻れ」
これから先の話しは玲の秘密に触れる。
美鈴にはまだ言えない。
「やだっ!玲くんのこと…わたしもちゃんと知りたい!」
美鈴は俺の言葉に何かを感じたのか、真剣な顔で俺に言った。
俺は美鈴の気持ちに賭けてみることにした。
「なにを訊いても驚くなよ」
「うん…」
念を押して訊くと神妙な顔で答えてくれた。
「それで…お伯祖父さんはなんて言ったの」
「僕にはまだ早いって…
僕が独自に学習機能を使ったけど、人間関係における男女間の問題は項目が多過ぎて…
今だに解読出来ない部分もある…」
まあ…確かに…
「生殖機能は僕には当然ないから必要無いと判断したんだけど、生殖を目的としない生殖行動は多くの生物で見られるし、人間はその顕著な生き物でしょ…だからお爺ちゃんは次の繭換えの時、生殖に関するユニットを組み込んでくれるって」
繭換え…?
次のボディの交換の時か…
「そしたら生殖行動のソフトも起動するから僕の生殖器も使えるんだよ」
玲の言いたい事は判った…
でも…美鈴はどう捉えたんだろうか…
おれは美鈴の顔を窺った。
「れ…玲くんは…使える様になったら…誰とでもしちゃうんだ…」
何だか泣きそうになってる美鈴を見るのが辛かった。
「僕にはロックがかかってるんだよ」
また玲が自分の機能を暴露した。
「僕が生殖行為を行える相手は決まってるんだよ。僕と対偶関係の相手としか発動しない様にロックされてるんだ」
お伯祖父さんは、ああ見えて物凄く一途で純情な人だ。繁殖行動のパターンから一夫一婦を選んだんだろう…
「美鈴…玲の事なんだが…」
これまでの話しからちゃんと教えておくべきだと思った。
「お兄ちゃん大丈夫、前にも言ったけど…何となく…そうかな…って思ってたから…」
美鈴は少し息を溜め込んでから、玲の傍に言って手を取った。
「わたしと玲くんはこれからも変わらないよ。ずっと一緒だよ」
にっこり笑う美鈴に玲は満面の笑顔で応えていた。
当然と云うべきか…朝食当番の二人は恥ずかしくなるくらいベタベタだった…
1つ機能更新した玲を喜ぶ反面、
兄としては…物凄く複雑だ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます