第14話 2日目

 昨日の夕食当番は俺と蒼香だった。

蒼香はクラスの中でもおとなしくて地味な子だが、よく図書室で一緒になる聡明な女の子だ。


料理も上手で正直ビックリだった。

俺がしたのは野菜の皮むきくらいで、後は全て蒼香が作ってくれた。


今回の班決めでは俺が蒼香を誘った。

サマーキャンプのプリントが配られた時、一瞬顔を曇らせたので、何となく声をかけてみたのだ。


「キャンプは嫌いなの?」


隣の席だし、取り立てて変な会話でもない。


「あんまり行った事ないから…こう云うのって、仲がいい人同士で班を作るでしょ?わたしは友達も少ないし、入れてもらえる班を探すのが大変だもん」


「なら俺たちの班に入れば?まだ6人揃ってないんだ」


偶に訪れるペアやグループでの作業は、普段単独行動のヤツには案外厄介だ。

俺は気軽な気持ちで誘った。



キャンプも2日目。

それぞれ自分たちの課題研究に時間を当てた。


美鈴と蒼香は植物。

杏輔は昆虫。

玲はバードウォッチング。

俺はキャンプ場での人の行動心理。

麗は…まだ決まっていないらしい…



「ねえ、煌月くんはどこ行くの?」


小型のリュックを背負って出かけようとしている玲に麗が声をかけた。


「僕は野鳥の分付だから今日はバードウォッチングに山へ行くよ」


「わたしも一緒に行きたいな…ダメ?」


麗が甘い声を出して玲を上目遣いで見つめている。

麗は玲との距離をつめるつもりだ!


なんて答えるのか固唾を呑んで待っていると、玲は彼女に笑顔を向けた。


「ごめんね、今日はどうしても山間の崖があるところに行きたいんだ。麗ちゃんじゃ登れないからまたこの次ね」


「じゃあ行ってくるね」と、皆に声をかけて玲は出かけて行った。

何気なく美鈴を見ると、変わった様子もなく蒼香と課題について話し合っている。


『心の中じゃホッとしてるんだろうな…』


麗の方は恨めしそうに玲の後ろ姿を見送ると、その後は一人でどこかに行ってしまった。


全く…麗のヤツ…一体何しにこのキャンプに参加したんだろうか…

まあ、三日間遊び目的でも良いんだけど…

だったらそう云う班に入れば良かったのに…


まさか玲に近づくためだけが目的なのか?

女の子のする事は本当に理解出来ない…


大体、今朝の朝食当番は俺と麗だった。

昨夜の蒼香と大違いで、平気で寝坊はしてくるし、メニューは決めてないし、包丁も満足に使えない…

料理が出来て当然とは思ってないが、せめて出来る事をして欲しいもんだ。



案の定、麗はどこで遊んでいたのか、班に戻ってきたのは夕食ギリギリになってから。

班行動が基本なんだから考えて欲しい。


夕食は美鈴と杏輔だったが、メニューは豚肉の生姜焼きにけんちん汁。


美鈴と蒼香は、崖の中腹に咲く植物の写真を貰っていた。玲のヤツが山間まで行ったのはこの写真を撮る為だったようだ。


お陰でこっちは美鈴が張り切って作った夕食にありつけた…


明日はキャンプも最終日か…

麗のヤツ、また何か仕出かさなきゃいいが…

しかも明日の夕食当番は麗と玲だ…


麗も明日はちゃんと班行動してくれるといいが…









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