第13話 1日目

 お昼過ぎ、バスはキャンプ場に着いた。


キャンプの参加者は全部で42人。

ひと班6人だから7グループで今回のサマーキャンプを楽しむ訳だ。


注意事項などの挨拶が終わったら其々割り当てられたバンガローに散って行く。


これから3日後のキャンプ終了日迄各班で自由行動だ。

先ずは荷物を置いて皆んなで昼の弁当を食べる事にした。


「美鈴ちゃん…」


お弁当を広げてる美鈴に玲は心配そうな顔を見せる。


「心配しなくてもちゃんと玲くんの分もあるから…そんな顔しないの」


不安にしている玲に、子どもを諭す感じで美鈴が答えている。


玲はまさに子どものようにはしゃいで美鈴に抱きついた。

普段なら“うるさい”だの、“やらしい”だのと文句を言うくせに今日ばかりは美鈴のヤツもニコニコ顔になってる。


「煌月くん、わたしのも食べてみてよ」


麗がすかさず自分の弁当を持ってきてアピールを始める。


俺たち6人はテーブルに弁当を各々広げて座った。


麗、玲、美鈴と座り、向かい側に

杏輔、蒼香、俺の順だ。


俺たちは美鈴が作った弁当を小皿に取り分けて食べ始めた。


「やったぁ!僕の好きなものばかりだ!」


玲のヤツは美鈴から取ってもらった小皿の中身を見てご満悦な顔をしてる。


「美味しい!美味しい!

美鈴ちゃんのお弁当美味しい」


「煌月くん、わたしの卵焼き食べて!

わたしも自分で作ったんだよ」


美鈴の弁当を褒めまくるので面白くないみたいで、麗は玲に自分の弁当を勧めている。


「ありがとう!僕卵焼き大好き!」


麗の弁当箱から卵焼きを1つ口の中に放り込んだ玲は一瞬不思議な顔をした。


「このだし巻き卵美味しいね」


「そうでしょ? 遠慮しないでいっぱい食べて!」


しかし見てると玲が食べるのは專ら美鈴の弁当で、麗からは最初に貰ったひとつだけ。


「煌月くんのおにぎりそれなぁに」


今度はおにぎりの話題へいった。


「僕のは天むすだよ」


玲は自分の手に持っていたおにぎりを自慢げに見せている。


「この赤いの何?」


麗が怪訝な顔でおにぎりを見てる。


「人参」


美鈴の作る天むすおにぎりは、人参の千切りを片栗粉の衣で揚げ、だし醤油に潜らせたものが具にしてある。


「はあ? 何それ…せめて海老じゃないの?」


そうだよな…多分、普通はそう言われる…


「わたしのおにぎり食べてみて!牛肉のしぐれ煮が入ってるの!」


「じゃあ、僕のと交換しよう」


玲は自分の皿に入っていた天むすを麗に渡すと、彼女のおにぎりを1つ貰った。


「牛肉が甘辛くて美味しいね。僕のはどう?」


「そうね…思ったより悪くないわ。

人参も甘いしいい感じ」


「でしょう?僕は美鈴ちゃんが作るこのおにぎりと卵焼きが好きなんだ!」


玲の味覚がどう云う基準なのか…

多分、美鈴の好みに調整されてるのだろう…


美鈴の作る卵焼きは少し甘めだ

だし巻き卵では勝ち目はない。


美鈴は小皿におかわりを強請る玲に、“はいはい”と仕方なさそうに取り分けているが、あの顔は絶対機嫌がいい!

















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