第7話 悩み

 『玲くんは一体…』

一度疑いだしたら、どんな小さな事も気になりだした。


だからと云って、本当に玲が人間ではない等と本気で思っている訳では無かった。


ただ、そうでなければ説明がつかない事が数多く思い出された。


『おじいちゃんに訊いてみようかな…』


訊いたらちゃんと教えてくれるかな…

もし本当に玲くんが人間でなかったら…


こんな事、真面目に考えてるなんて…

他人ひとに言ったら笑われるよね…


いくらAIが発達して、ロボットが身近になったからって…玲くんとはまるで違う…


玲くんは殆ど人間と変わらない…


現に、ウチのクラスは誰一人疑ってる人なんていない…


そんなロボットがいるなんて聞いた事ない…

いたら…もっと話題になってる筈…


それに、そんな凄いロボットがわたしやお兄ちゃんの為だけに家にいるだろうか…


国の大きな施設とかで大事に研究されるんじゃないだろうか…


もし…玲くんが本当にロボットだとしたら…

その事は秘密の筈だ…

わたしがロボットだって気がついたら…


玲くんはどうなるの?


きっと今まで通りな筈ない…


私たちの前からいなくなるかも…


まだ中学生の美鈴には、疑問に思っていても解決する方法がみつからない。


玲くんがロボットで…

わたしがそれをバラしたら…


多分、世界中の人が玲くんを欲しがるに決まってる…


わたし…どうしたらいいんだろう…



「ごちそうさま…」

玲の事で悩んでいたら食欲もわかなかった。


「どうしたの?殆ど食べてないじゃないの」

「まだ、躰が本調子じゃないだけだよ」

美鈴は湯呑みを手に取ると、笑って母親に答えた。


「また玲に助けられたな、気をつけろよ」

兄の侑季乃がやはり心配して言った。

「うん…」



「ねえ…お兄ちゃん…」

美鈴は自分の部屋で勉強している兄に声をかけた。

「どうしたんだ?」

「ちょっと入ってもいい?」

美鈴は兄の部屋に入り長椅子に座った。


「何かあったのか?」

美鈴は兄に、自分が思っていることを話そうか迷っている。


「あの…さ、玲くんの事だけど…お兄ちゃん何か気になった事ってない?」

侑季乃は不思議な顔で妹を見る。


「まさか…お前…」

侑季乃にそこまで言われてギクリとした。


「あいつが好きなのか?」

「えっ?!」


緊張しているところへその質問である。

何だか虚をつかれた感じだ。


「あ…あの…わたし…」

「あいつだけはやめたほうがいいぞ」


侑季乃は真面目な顔して美鈴を見て言った。


「な…なんで? 何かお兄ちゃん知ってるの?」

食いつくように迫る美鈴に、侑季乃はたじろいだ。


「い…いや…ほら…親戚同士の結婚とかってあんまり良くないだろ?」


「玲くんが…人間離れしてるから?」


美鈴は思い切って切り出した。

途端、侑季乃は黙ってしまった。


「もしかして…お兄ちゃんも玲くんは人間じゃないと思ってるの?」


侑季乃は驚いた顔して美鈴の顔を見ている。


「まさか…お前も…?」





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