第3話 ERROR

 煌月は事故の連絡を受けて病院へ急いだ。

病院の検査くらいで玲の正体が発覚することはないが、それでも心配な事は他にも色々あった。


搬送した救急隊は玲の躰の重さに疑問を抱いてないか…

大きな外傷の無いことに疑問を抱かれないか…

玲が意識を取り戻して飛び跳ねでもしたら最悪だ…


病室を開けると、玲はベットの寝かされその周りに美鈴たちがいた。


「おじいちゃ〜んっ!」


美鈴が泣いてわたしの傍に駆け寄ってきた。


「玲くんが…車に…

わ…わたしと…お兄ちゃんは…あうっ…」

美鈴が肩を震わせて泣いている。

自分たちだけが助かったことに罪悪感を持ってるようだ…


「玲が…いきなり俺と美鈴を押したから…

だから…俺たちは…助かったけど…

残った玲が車に…」

侑季乃も悔しい顔で顔を歪ませている。必死で涙を我慢している様子が見れる。


「二人共大丈夫だから…玲は心配いらないよ」


その声かけに、美鈴だけでなく侑季乃まで泣き始めてしまった…


わたしと同様、連絡を受けて来た万梨子が二人を連れて帰った。



「玲の…あの子の具合はどうなんですか?」

わたしは普通の親が当然聞くだろう言葉を医者に訊ねた。


「結果から言えば大きな外傷はありません。

しかし、結構なスピードで撥ねられた上にガードレールに直撃しています。

ここに運ばれて来た時には意識はありませんでした。」


その程度で意識がなくなるとは思えなかったが、逆に都合は良かった。


「擦り傷や打撲などの小さな外傷はありますが、検査の結果は異常なしです。」


「病室に行って見ましたが、まだ意識は戻っていませんでした」


逆に…これほど長く意識を取り戻さない事が他の心配を連想させた。


「はい…ここに運ばれて30分くらい経った頃発語がみられて…しかし、こちらの呼び掛けも判らない様子で…意識の混濁があり…訳の解らないことを口にしていました」

「それはどんな事ですか?!」


何か疑われる様な事を言っていないかそれが心配だった。


「解りません…何を言っているのか聞き取りづらかったし、数字の羅列のようなことも口走っていて」

数字の羅列?!

「そうですか…あいつは最近算数のテストが悪くて…結構悩んでいたので…」

わたしは俯いて辛そうに振る舞った。


「混濁時の発語はそれが原因でしょう…

大丈夫心配ありませんよ」

医者は軽い譫言だとわたしに話してきたので、ひとまず安心した。



病室に戻ると、玲の意識はまだ戻っていない。


数字の羅列を繰り返していたそうだが、多分車と、ガードレールと、強い衝撃を受けた事で何か不具合が生じ、自動修復機能が作動したんだろう…


そうは言ってもここまで意識が戻らないのはやはりどこかでエラーが起きているのか…

よく調べてみないと…


だが、意識のない子どもを連れて帰る訳にはいかないからな…


わたしが困っていると、玲の躰が動き始めた。

「じぃちゃん…?」

玲が薄っすらと目を開け、映ったわたしには問いかけた。


「目が覚めたか…どんな感じだ?動けそうか?」

「大丈夫、起動は問題ないみたい」


玲の言動に違和感を覚えながら、意識を取り戻した事を伝えて、退院許可を貰い帰途についた。






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