第11話 湖の異変と昼食と魔石のスキル

 ”蒼雷の剣”のみんなに魔石をプレゼントしてもらってからも、ギルドで常設依頼を受け、湖周辺まで採取に向かう日々を過ごしていると、湖周辺にスライムが増えていることに気が付いた。


 「スライムがよく見かけるようになったけど、何かあるのかな?」


 大きなスライムが湖にいたため、スライムを見かけ次第倒すようにしています。倒したスライムの死骸を湖周辺に撒いて、ヒール草などの葉が早く戻るようにしていますが、”魔力感知”によって変な感じもするようになりました。


 「なんとなく、魔力が濃くなっているのかな?毎日スライムを倒しているのに今日もたくさんいる。」


 最近は、貯めているスライムの魔石の数が50個を超えたため、ギルドに提出して、1個につき鉄貨50枚もらっています。


 「料理する道具を持ってくれば、ギルドに戻らずに湖でお昼を食べて採取や魔物を倒すのに集中できるから、相談してみよう。」


 湖周辺の魔物は、木に登れば安全に倒せるため、”気配察知”と”魔力感知”をし続ければ、安全に過ごすことができます。


 「今日も湖の奥へ行ってみよう。」


 湖の奥の森の中では、まだ手付かずの薬草や毒消し草・ヒール草があるため、採取しに行くようにしています。


 「ゴブリン6体か。棒か石を持っているから。武器スキルを持っているのがいるのかな?」


 ゴブリンは6体とも木の棒か石を持って歩いています。木の上からゆっくりと近づいていき、気づかれないように、上から石を落として、固まっていた4体をつぶし、残りの2体も1方的に石を上から落としてつぶします。


 「魔石は湖で洗えばいいか。」


 魔石を石で包んで背負い袋にいれ、ゴブリンやフォレストウルフを倒しながらも採取をして、湖で休んだ後、ギルドに戻りました。昼を食べたら、再び湖まで行き、湖の奥の森で採取を行い、ギルドに戻り、報酬を受け取りました。


 「今日の成果は銅貨20枚か。魔石を提出すれば稼げるようになるから、スライムが増えたことは都合がいいな。」


 スライムの魔石がたくさん取れるようになったため、稼げるようになりました。夕食後、ギルドでエリカさんに相談することにしました。


 「エリカさん、相談したいことがあるのですが。」


 「いいわよ。ギルドの個室に行きましょう。」


 エリカさんと一緒に個室に移動し、湖周辺で昼食を取ることについて相談しました。


 「私は危ないからしてほしくないのだけど。知っているとは思うけど、魔物はにおいで集まっているから、肉を焼いたりすれば、魔物が寄ってくる可能性があるわ。ましてや魔物を解体したときに出る血のにおいには敏感よ。」


 まだ魔物と正面から戦えない僕にとっては難しい問題です。


 「高いところにいられれば、魔物に気づかれても問題ないんだけどね。木の上で肉を焼くのは流石に危ないから。」


 常に木の上から安全に魔物と戦ってきたので、魔物よりも高いところで肉を焼いて食べることができれば、安全です。


 「だから、やめていた方がいいわ。」


 高いところで肉を焼くことさえできれば、


 「そうだ!」


 「トーン君?突然どうしたの?」


 そう、高いところがないなら作ればいいのです。


 「エリカさん。石で高いところを作れば、魔物にばれて近づかれても安全だと思うのですが、どうですか?」


 「石で高いところを作る?」


 「そう、足元を石で回りよりも高くすれ安全になるでしょ。」


 「…そういうことね。ええそうね。それなら安全だけど。どれくらい高くできるの?」


 「うーん。試してみないとわからないかな。」


 「そう。なら、明日どれくらいまで高くできるか試した後、”蒼雷の剣”のみんなに相談した方がいいわね。彼らなら、野営の経験もあるからわかるでしょう。」


 「わかりました。明日試した後、”蒼雷の剣”のみんなに相談します。」


 「その時にでも料理について聞くといいわ。彼らの方が詳しいから。」


 「はい。今日はありがとうございました。」


 「また、気になることがあれば相談してね。」


 「はい。」


 エリカさんと一緒に個室を出たら、宿舎の部屋に戻って、もらった魔石を喰い、”祝福”をMPを使い切り寝ました。


 次の日、早速常設依頼を受け、湖まで行き、石を足元に出して高くしていきます。


 「これ以上は危ないかな。」


 肉を焼いたり、できれば寝ころんだりしたいため、石を広くなるように出し、端を落ちないように囲うと木よりも少し低いところが限界でした。


 「もう少し低くしないと、寄ってきた魔物を石でつぶすのが難しくなるか。少し低くしておこう。後はもっと石を喰うようにしよう。」


 もっと石を喰えば余裕ができるため、今後はもっと石を喰うようにしようと決めました。


 「後は、”蒼雷の剣”のみんなに相談しよう。」


 石を戻して、ギルドに戻り、報酬をもらうとエリカさんに”蒼雷の剣”のみんながどこにいるのか聞きました。


 「まだダンジョンから戻っていないわね。そろそろダンジョンから戻るころだから、戻ったら教えるわ。」


 「わかりました。」


 明日には、”蒼雷の剣”のみんなからもらった魔石を喰い終わるため、手に入るスキルが楽しみです。午後からも、湖周辺で採取を行い、見かけた石を片っ端から喰い、ギルドで報酬を受け取り寝ました。



 今日、ついに魔石のスキルが手に入ります。魔石を喰ってからギルドに向かい、鑑定を銅貨1枚で行いました。


トーン 6歳 レベル6


 HP 36

 MP 66→80

 筋力 21→22

 耐久 16

 魔力 6→8

 魔防 6

 器用 18

 敏捷 25→26


 スキル

 気配察知2 咬合1 俊足1

 魔力感知2 酸1

 悪食1 

 隠蔽2

 鼓舞1 祝福1 跳躍1 回避1

 闇魔法1 魔力制御1 


 固有

 石喰い


 MPの伸びが大きいのは、”祝福”でMPを使い切ってから寝ているからだと思います。魔石によって覚えたスキルは”闇魔法”と”魔力制御”でした。早速、ギルドの資料室に行き、”闇魔法”について調べました。


 「”闇魔法”について乗っているのはこの本かな?」


 本を読んでみると、”闇魔法”でどのようなことができるかわかりました。


 スキルレベル1ではダークボールによる攻撃やダークミストによる目くらましができ、2になるとダークアローやダークミストの範囲が広がり、3になるとダークインパクトで相手を吹き飛ばすことができるようになります。


 スキルレベルが上がると、ボール系やアロー系は数を増やせることが可能になるようです。


 4になれば、ダークバインドによる拘束が、5になればダークフィアーによって相手を怯えさせ、6になればダークリダクションによる弱体化ができるとわかりました。


 7より上は載っていないため、もしかすると、スキルレベルを上げられた人がいないのかもしれません。


 本を読み終わるとお昼が近づいていました。エリカさんのところに行くと、”蒼雷の剣”のみんながダンジョンから戻ってきたことがわかりました。


 ”蒼雷の剣”のみんなは宿に戻っていると聞いたため、ベアーミートに行き、”蒼雷の剣”のみんなに会いに行きました。


 「やあ、トーン君。今日はどうしたんだい?」


 「ブラウさん。こんにちは。今日は相談したいことがあるのです。」


 「そうか、なら僕の部屋で聞こう。」


 ブラウさんの部屋に入ると、アズラクさんはいませんでした。


 「アズラクは武器屋に斧を見せに行ったよ。それで、相談したいことがあるとエリカには聞いているけど何かな?」


 「まずは魔石ありがとうございました。”闇魔法”と”魔力制御”のスキルを覚えました。」


 「これからは、魔法でも魔物を倒せるようになったけど、MPの消費には気を付けるようにね。後、危なくなったらダークミストで目くらましをして逃げるんだよ。」


 「はい。”闇魔法”を使っていきます。今日は湖でお昼を食べればわざわざギルドに戻らずに済むと思ったので安全か相談しに来ました。」


 「エリカから詳しく聞いていないからな。どうやって湖でお昼を食べるのかな?」


 「お昼は、足元を石で高くして食べようと思いました。昨日どれくらい高くなるか確認してみたら、木よりも少し低いくらいでした。」


 「………。そうか。」


 「ブラウさん?」


 「いや、とてもいい方法だと思う。それなら確かに安全だ。あのあたりなら、上から石をおとせば一方的に倒せるからな。大丈夫だろう。」


 「よかった。なら、持っていくべき道具は何ですか?」


 「まずは、水筒に飲み水を入れて持っていくのがいいな。後は、火をつけるための魔道具と小さなフライパンでいいかな?肉は倒した魔物を解体したものだろ?」


 「はい。倒した魔物の肉にしようと思います。水は湖の水ではだめですか?最近は湖の水を飲んでいるのですが。」


 「湖の水を飲んでいるのか?それは危な…そうか、”悪食”のスキルを持っていたんだったな。」


 「はい。体調が悪くなったことはありません。それと、フライパンの代わりって石でできませんか?」


 「……。」


 「ブラウさん?」


 「ああ…。できるな。何なら水筒も石で代わりにできるな。」


 「よかった。」


 「今僕たちが使っている野営道具を見せるよ。ダンジョンでは何拍もするからマジックバックにいつも入れているからね。」

 

 ブラウさんに野営道具を出した貰い、石で同じ形のものを作りました。


 「大丈夫そうだね。なら後は火をつける魔道具だけだね。早速買いに行こうか」


 「はい。」


 ブラウさんと雑貨屋で火をつける魔道具を買いました。


 「肉だけだと味気ないから塩を買っておくといい。」


 道具屋で塩の瓶を買いました。


 「今日はありがとうございました。」


 「トーン君。高いところにいれば基本的に安全だけど気を付けるんだよ。湖周辺では出ないはずの魔物がいたら、すぐに逃げるようにした方がいい。たまにあるからね。」


 「わかりました。見かけたら、すぐにギルドに戻るようにします。」


 「それじゃあ、気を付けて帰るんだよ。」


 「はい。気を付けて帰ります。」


 ブラウさんと別れた後、部屋に戻ったら、買ったものを石で包んで背負い袋に入れました。明日が楽しみです。今日は午後から湖で少しだけ採取してギルドに提出して寝ました。





 「ブラウ。トーンはもう来たのか?」


 「トーン君はもう来たよ。」


 「もう来たの?私も相談に乗りたかったのに。」


 「相談は、湖でお昼を食べる方法についてでしたね。」


 「ああ。湖の近くで足元を石で高くすれば昼を安全に食べれるかだったよ。」


 「足元を石で高くするってーとあれか!」


 「”アースライズ”と同じことをするのですか」


 「ああそうだ。」


 「確かに、石でも同じことできるわね。なら後は火をつける魔道具とフライパンと台が必要ね。」


 「水筒が足りませんね。」


 「いや、水筒もフライパンも台も全部石でできた。」


 「そんなことできるの!確かに、できるわね。」


 「それは便利だな。荷物がほとんどねぇ。」


 「火をつける魔道具だけですか。」


 「後は塩を買わせた。」


 「……欲しいわね。」

 「欲しいですね。」


 「トーン君はまだ6歳。明日7歳になるとはいえ、ダンジョンに連れて行くのはダメだ。」


 「わかっているわよ。マジックバックがあるから荷物の心配はないけど。」


 「彼にはソロでしばらく頑張ってもらう予定だ。間違ってもパーティは組ませない方がいい。」


 「それはどうしてですか?」


 「固有が広まれば、無理にでもパーティに入れようとする輩が現れるだろう。俺たちが目を光らせるのにも限度がある。」


 「教国から来る冒険者に注意が必要ですね。」


 「ああ、この街は教国に一番近い大きな街だからな。」


 「”魔の寝床”に挑戦して成果を出せずに、王国に帰ってきたやつらは危険だ。」


 「はぁ。教国に所属している人と違いますからね。荒れている冒険者は危険です。」


 「とにかく、トーン君が成人するまでに、トーン君を守れるこの街の冒険者パーティを増やすべきかもしれない。」


 「確かにそうすべきだな。」


 「なら、今後は信頼できそうな冒険者パーティを探すこともしていこう。」


 トーン君の固有には驚かされてばかりだ。広まれば厄介なことになるから”隠蔽”のスキルを早めに覚えてもらって正解だった。マジックバックを持っているパーティならわざわざ彼を仲間にしようとしないだろう。エリカにも相談しておこう。彼女の父親のギルドマスターは不干渉を決め込んでいて、彼の固有を聞こうとしないけど、最悪は無理やり巻き込むのも手かな。


 トーン君の今後が楽しみだ。どこまで強くなれるのかが想像できない。もしかすると彼は僕たちのパーティに収まらないかもしれない。

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