第10話 鼓舞と祝福の効果と夢

 ”蒼雷の剣”のみんながダンジョンから戻ってきた次の日、早速”鼓舞”と”祝福”の効果について聞くために、”蒼雷の剣”のみんなが泊っている宿の部屋に集まりました。


 「早速、スキルを僕たちにかけてみてくれ。」


 ブラウさんとアズラクさんが泊っている部屋は、僕が泊っているギルドの宿舎の部屋よりも広いので、5人入っても余裕が少しありました。


 「はい、かけてみます。まずは”鼓舞”!」


 ”蒼雷の剣”のみんなに”鼓舞”をかけると、何かが体から抜けていく感じがしました。


 「うん、これはしばらくはトーン君自身には使わない方がいいね。」


 「確かに、今ならどんな魔物も倒せるような気がするから危険ね。」


 「だが、強くなっている気がするぞ。」


 「これは、光魔法にある、強化魔法に近いですね。おそらく、筋力・魔力・敏捷が上がると思われます。」


 「まだ1だから効果が低いのだろう。一手で複数のステータスを上げれるのは強力だから、寝る前に使ってスキルレベルを上げるといい。次は”祝福”っを頼む。」


 「はい。”祝福”!」


 また、何かが体から抜けていく感じがしました。


 「みんな、何が変わったかわかるか?」


 「わからん。」

 「わからないわ。」

 「わかりません。」


 みんなも何が変わったかわからないようでした。


 「そうか。ならしばらくは”祝福”のスキルレベルを上げた方がいいだろう。運は上がってもわからないが、それ以外にも上がるステータスがあるかもしれないからね。」


 「ちょっと待ってください。鑑定石を使ってみませんか?」


 そう言うと、ニールさんがブラウさんのマジックバックから鑑定石を取り出しました。鑑定石は金貨5枚でも買うことができます。ギルドの鑑定石の値段は、魔石を取引する際に、契約しているため安く手に入れているらしいです。


 「確かに、何かしら変化があればこれでわかるはずです。トーン君は後ろを向いてもらっていいですか?」


 「はい、後ろを向いてみます。」


 後ろを向きました。


 「それでは、”鑑定”。」


 「これは、運上昇(微)と異常耐性(微)、属性耐性(微)、MP自然回復上昇(微)ですね。もうこちらを向いても大丈夫ですよ。」


 「どれくらいの上昇なのですか?」


 「この上昇量はほとんどないのと変わらないわね。」


 「そうですか。」


 「いや、これはとんでもないスキルかもしれないな。異常耐性は”光魔法”でも難易度が高くて、スキルレベルは6はないと成功しないはずだ。属性耐性は”光魔法”にはなくて、聖女・教皇の固有たったかな?」


 「他にもあったと思うけど、有名なのはそれよね。」


 「後はMP自然回復上昇も”光魔法”にあったか?」


 「ええ、わたしはまだ使えませんが、スキルレベルが上がれば使えるようになりますね。」


 「ようするに、”祝福”は運だけでなく、スキルレベルが高くないとできないことが最初からできるのか。」


 「そうだな。これは有用なスキルだ。頑張ってスキルレベルを上げれば、今後の冒険者活動に欠かせないものになるだろう。」


 「ありがとうございます。これもメロディーラビットの魔石喰わせてもらったおかげです。頑張ってみんなに”祝福”を長時間かけれるようにします。」


 「無理をしないようにね。そういえば君の誕生日はいつだったかな?」


 「僕の誕生日は5月1日です。」


 「そうか、なら少し早いが誕生日プレゼントとしてこの魔石をやろう。」


 ブラウさんが、マジックバックから魔石を10個出しました。


 「もらえませんよ。メロディーラビットの魔石ももらいましたし。」


 「あれは僕たちにも有用だと思って君に喰ってもらったものさ。これは僕たちからの誕生日プレゼントとしてぜひ、もらってくれ。」


 「おう、その魔石を喰えば冒険者としても強くなれるからな。」


 「そうね、トーン君が強くなれば、私たちも安心できるからぜひもらってほしいわ。」


 「ええ、私たちが心配せずに済むぐらい強くなってくれると助かります。」


 「ありがとうございます。魔石を喰ってみんなに心配されないぐらい強くなります。」


 「トーン君。頑張ってくれ。」


 「はい。頑張ります。」


 ”蒼雷の剣”のみんなに挨拶をして部屋を出た後、自分の部屋に戻って魔石を食べました。何の魔石かは教えてもらえませんでしたが、10日後の鑑定石で鑑定すれば、覚えたスキルが何かわかるから楽しみです。今日も常設依頼を受け、銅貨11枚を稼いで寝ようとしました。


 「誕生日か。そういえば祝ってもらったこと初めてだな。家にはそんな余裕もなかったから仕方ないか。」


 僕は久しぶりに村のことを思い出しました。


 「そういえば、石が喰えるとわかったら、食事の量が減ったっけ。母さんも父さんも毎回謝っていたな。」


 僕は石を喰えば少しお腹が膨れるため、そこまで気にしませんでした。それがあって、今でも毎日、石を喰わないと安心出来なくなりました。


 「今頃村はどうなっているのかな。」


 村のことを思っていると”祝福”によってMPがなくなったのか、眠りました。






 「はぁ…はぁ…。まってよ。母さん。 」


 あたり一面雪で覆われています。足元を見ると、足が石で覆われていて、足の裏は石が広がっています。1っ歩踏むごとに、石が雪の上に乗るため、足が沈むことなく歩けます。


 「こっちよ。早く来なさい。」


 母さんが僕を読んでいます。前にいる母さんに近づこうとしますが近づけません。


 「早く来なさい。」

 「まってよ、母さん。」


 これは夢だとなんとなくわかりました。気が付くと石の籠を背負っています。その中にホワイトウルフの肉を入れていたのを思い出しました。


 「前を向いて歩くのよ。」


 前を歩く母さんは今思い出すと幻覚だとわかります。なぜなら、母さんは村にいますし、雪に沈むことなく歩いているからです。」


 「ほら、こっちに来なさい。」

 「まってよ、母さん。」


 僕は、母さんと手をつなぎたいから急いで歩いています。


 「早く来なさい、暗くなる前に。」 


 疲れていますが足は止まりません。母さんに追いつきたくて、手をつなぎたくて。


 「そろそろ暗くなってきたわ。木の上で寝なさい。」


 そう言うと母さんは消えてしまいます。涙をこらえながら木の上に石を使って登り、木の幹に石で寝ころべるだけのスペースを作って、落ちないようにして、雪が入ってこないように石で覆って寝ます。




 朝起きると、ギルドの宿舎の部屋にいるのがわかりました。


 「雪の中歩いている夢か。はぁ。」


 村を口減らしで追い出された後の夢をまた見ました。


 「いや、今は冒険者見習いとして頑張らないと。」


 今日もギルドで依頼を受けるために、向かいます。





 「エリカ。ちょっといいか。」


 「”蒼雷の剣”のみなさん。構いませんよ。個室に案内しますね。」


 個室に移動しました。


 「それで、どのような要件ですか?」


 「トーン君に問題なく魔石を渡すことができた。」


 「そうですか。これで少しは安全になりますね。」


 「ああ。メロディーラビットの魔石によって、”跳躍”と”回避”のスキルを手に入れたからな。”俊足”も持っているから、森の魔物から逃げるのは余裕だろう。」


 「あの魔石も渡せたんですよね。」


 「上手く渡せた。ちょうど誕生日が近かったから、受け取ってもらえた。」


 「そう。これで”闇魔法”と”魔力制御”が身に付くのね。」


 「そうだ。”闇魔法”で目くらましをすれば完璧だろう。どんな魔物からも逃げれるさ。」


 「はぁ…。街の依頼がもっとあればいいんだけど。孤児院の成人したばかりの子やこの街の子も入ってきたから難しいのよね。あの子たちが常設依頼を受けて森の中に入るのは不安があるから。できれば、街道周辺で済ませるようにしたいのでだけど難しいから。」


 「トーン君は木の上をスムーズ移動できるからね。まだ小さいのに、成人したばかりの子よりも常設依頼を安定して受けれる。」


 「そうなのよね。あの子の方が安心して送り出せるから難しいのよね。できれば、街の中の依頼を受けてもらいたいんだけど。中々回せないのよね。」


 「そういえば、トーン君の村は見つかりましたか?」


 「ニールさん。残念だけど見つかっていないわ。トーン君が来た方向にある4つの村を確認させたけどなかったわ。」


 「随分遠くから来たんだな。」


 「ええ。少なくとも4つの村を素通りしてこの街まで来たのも奇妙だけど、凍死せずにこれたのも不思議なのよね。」


 「4つ以上の村にたどり着くことなく、この街に着いたのか。凍死は固有が関係しているとは思うが。さすがにわからん。」


 「あとは、教国の人が食料不足によってほとんどの村人が餓死をした村を発見して、貴族が領地を没収されたことが分かったわ。」


 「なんだって!それは本当か?」


 「残念だけど事実よ。」


 「確かトーン君は口減らしで村を追い出されたのよね。」


 「そうよ。」


 「それってまさか。」


 「まだ決まったわけではないわ。それに遠いのよ。」


 「遠い?」


 「そう。少なくともこの街よりも、マアニュガルストル領のラヴァラカイ街の方が近いわね。どちらにしても今は何もできないわ。」


 「あそこか。でも何もできないって何かあるのか?」


 「1500年祭があるでしょ。残念だけど、ギルドも教皇が来るから準備を今からしないといけないから余裕はないわ。他のギルドもないでしょうし、確認は来年まで無理ね。」


 「祭りの影響か。生き残った村人はどこにいるかわかるか?」


 「わからないわ。発見したのは教国の人だから情報がこないわ。」


 「トーン君には教えない方がいいか。」


 「そうね。まだ決まったわけではないし、違ったら不安にさせるだけだから。」


 「そうだな。違うことを祈ろう。」


 「それね。話はもうないわね。」


 「ああ。」

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