第9話 依頼を受ける日々・教国

 ”蒼雷の剣”のみんなを湖まで案内した次の日、いつものように常設依頼を午前・午後に受けて、銅貨を12枚稼いだ。祭りに向けてお金を貯めるために、もっと魔物を狩って持ってくる方法について考えていると、”蒼雷の剣”のみんなに会いました。


 「トーン君は今日も街の外の依頼を受けたようだね。」


 「はい。少しでもお金を貯めたいので。」


 「そうか、いい心がけだ。今日は、明日からダンジョンにしばらく潜ることを伝えに来たのさ」


 「わかりました。頑張ってきてください。」


 「ああ、6日ほど潜る予定だ。ケガしないように気を付けるんだぞ。」


 「はい、気を付けて街の外の依頼を受けます。」


 「それでは、またな。」


 ”蒼雷の剣”のみなさんに挨拶し、いつものように木剣を振った後、メロディーラビットの魔石と石を喰い寝ました。


 次の日、”蒼雷の剣”のみんなは、Bランクダンジョンに朝早くから出発しました。今日もいつもの依頼を受け、銅貨を10枚稼ぎました。


 ”蒼雷の剣”のみんながダンジョンから戻って来るまで、変わらない日々が続き、ついに、メロディーラビットの魔石10個目を朝から喰い、メロディーラビットのスキルである鼓舞・祝福・跳躍・回避を覚えたことを、鑑定石で確認しました。


トーン 6歳 レベル6


 HP 36

 MP 56→66

 筋力 20→21

 耐久 16

 魔力 6

 魔防 6

 器用 18

 敏捷 23→25


 スキル

 気配察知2 咬合1 俊足1

 魔力感知2 酸1

 悪食1 

 隠蔽2

 鼓舞1 祝福1 跳躍1 回避1


 固有

 石喰い


 早速、街の外に出て湖まで移動し、周りに誰もいないことを確認してから、スキルを試すことにしました。


 跳躍を試してみると、いつもよりも高くジャンプができ、木から木の間が短ければ、石を使わずに飛び移れるようになりました。


 次に鼓舞をしてみることにしました。


 「スキルは意識することが大事だと聞いたから、試してみよう。”鼓舞”!」


 自分に”鼓舞”をかけてみると、いつもよりも色んなことができるように感じ、動きも早くなりました。


 「”鼓舞”は強化するスキルだけど、気分が高ぶって魔物と戦えると感じてしまうから危険だな。使うのは、まだ先にした方がいいかな。」


 次に”祝福”を使ってみました。


 「”祝福”!」


 「何か変化したのかな?」


 ”祝福”は確かに発動しましたが、体に変化を感じることができなかったため、何が起こったかわかりませんでした。


 「”蒼雷の剣”のみんなに聞いてみよう。MPを消費しきるのは危ないから、今日は採取とフォレストウルフとホーンラビットを納品するだけにしよう。」


 ギルドに戻り、銅貨を受け取り、今日は寝る前に”祝福”を何度も発動することで、MPを使い切り、寝ました。







 次の日、今日はエリカさんに教国について教えてもらう日になりました。


 「今日はトラデンミティ教国について教えるわ。」


 「はい。よろしくお願いします。」


 「まず、教国は現在この国の人の固有を鑑定する役割を担っているわ。これは、この国を建国した勇者様が教国と相談して決定したことだから、変更できないことになっているわ。この鑑定では、固有だけ明らかにする鑑定石を使用しているため、ギルドで使用している鑑定石よりも使用できる回数が多くなっているわ。」


 「何で使用回数が多いのですか?」


 「それはね、鑑定できる項目を減らすことで魔石の消耗が抑えられるとわかったからよ。他にも、弱い魔法と強い魔法を魔石で使用できるようにすると、弱い魔法の方が使用回数が多くなることもわかっているわ。」


 「教国は魔王が表れる前から存在していて、”魔の寝床”を攻略して建国したのよ。」


 「”魔の寝床”って何ですか?」


 「”魔の寝床”は魔力が溜まっていて、強力な魔物が生まれやすい環境になっている場所ね。大災害によって魔力が溜まるようになって、強力な魔物が生まれるようになったらしいわね。」


 「強力な魔物ってどんな魔物がいたんですか?」


 「残念だけど、資料はここにはないから知らないわ。教国にはあるらしく、”魔の寝床”に挑戦した冒険者達なら資料を見て知っているかもしれないわね。」


 「大災害が起きる前はたくさんの国が、覇権を争っていたらしく、大災害によって、国がいくつもなくなったらしいわね。」


 「大災害って何ですか?」


 「大災害については何もわかっていないわ。ただ、トラデンミティ教国は大災害について、何度か女神様に尋ねているらしいわね。」


 「女神様と話すことってできるんですか?」


 「残念だけど、私たちはできないわ。”聖女”か”教皇”の固有がないとできないらしいわ。どちらもトラデンミティ教国でしか固有の授かった人はいないわね。」


 「固有って授かる人が決まっていたりするんですか。」


 「固有は女神さまが授けていますからね、次回は固有について話すは。教国の話に戻るわね。教国を建国した人達の出身について話すわ。彼らはね、大災害前から存在していて、大災害後にも国を維持していたトラデンミティ法国出身で、女神トラデンミティ様の神託を受けて、”魔の寝床”の攻略を行うことにした人たちなのよ。」



 「大災害後は、強力な魔物が増えて、魔物に奪われた土地を少しづつ奪い返していたんだけど、”魔の寝床”の魔物は強すぎてどの国も近づけなかったのよ。神託を受けた法国の人の一部はそれでも、女神様のために”魔の寝床”に向かい、強力な魔物たちを蹴散らして、トラデンミティ教国を建国したのよ。」


 「じゃあ、トラデンミティ法国はどうなったんですか?」


 「トラデンミティ法国はなくなったわね。トラデンミティ教国を建国した人たちに合併を持ち掛けたんだけど、何度も話し合った結果、方向性の違いによって、決裂し、戦ったのよ。でも、決着はすぐについたわ。何たってトラデンミティ教国は”魔の寝床”を攻略した強い人がいるのに対して、トラデンミティ法国はそこまで強い人たちじゃなかったからね。」


 「何で方向性が違ったんですか?」


 「それはね、トラデンミティ教国が女神様の神託を最優先とし、女神様の意向を尊重することを最重要にしているのに対して、トラデンミティ法国は女神様の神託や意向よりも、人の生存を優先して魔物から守ることを最優先にすることを掲げたからよ。その背景には、女神様が大災害に対して何もできなかったことを理由にしているわ。」


 「大災害に女神様は何もできなかったって、何があったんですか。」


 「わからないわ。当時のことは、ほとんど資料がないから、女神様の神託も内容についても詳しく残っていないわ。覚えていて欲しいのは、トラデンミティ教国は”魔の寝床”を攻略した強い人たちが興した国で、今も、”魔の寝床”のダンジョンに毎日のように通っている人たちがいるほどの強い国だと言う事よ。そして、女神トラデンミティ様を篤く進行していて、女神様の意向に沿って物事の方針を決め、神託を最優先にする国だと言う事ね。」


 「わかりました。」


 「それじゃ、今日はこれで終わるわね。しっかりと覚えておくのよ。」


 「はい。ありがとうございました。」


 エリカさんに教国について教えてもらった後、いつものように依頼を受け、寝る前に、”祝福”を何度も行い寝ました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る