第8話 大きなスライムと1500年祭
エリカさんにアマノレッド王国について教えてもらった次の日、今日は”蒼雷の剣”のみなさんを大きなスライムのいた湖に案内することになりました。
「久しぶりの地上での依頼だからな。これくらいがちょうどいいだろう。」
「大きなスライムの討伐が終わったらもうちょい奥に言っておきたいな。」
「森の中って苦手だからほどほどにしてほしいわ。」
「トーン君は、木の上を移動してくれていいですからね。道中の魔物は私たちが対処するから。」
「ありがとうございます。」
木の上を移動しながら、”蒼雷の剣”の前を移動していると、ゴブリンが3体いるのを”気配察知”で感知しました。
「ゴブリンか、アービ、頼む。」
「ハイハイ。”サンダーショット”。」
アービさんの得意な雷魔法がゴブリンを3体貫きました。
「魔石は私が取りますね。”アーススパイク”。」
ニールさんが土魔法で、死んだゴブリンを貫いて魔石が飛び出し、ブラウさんがキャッチしました。
「”ウォーター”。これで綺麗になったな。」
「ゴブリンなんかにこんなに魔法を使っていいのかよ?」
「何を言っているんだアズラク。ゴブリンなんかに武器を消耗させる方がもったいないだろ。それに、ここら辺には、弱い魔物しかいないからな。」
「確かに。だがちょっとぐらい俺も運動しておきたいぜ。」
「トーン君。アズラクの武器って用意できるかい?」
「アズラクさんが背負っているのと同じ形でいいですか?」
「おう。頼んでいいか?」
アズラクさんが斧を手に取って見せてくれました。
「はい、できるだけ似ているものを作ります。」
木の上から降り、アズラクさんの斧を見ながら、斧の形をした石を出していきます。
「これで大丈夫ですか?」
アズラクさんに斧を持ってもらいます。
「大分軽いな。重くできるか。」
斧を受け取って、石を圧縮して形を変えずに重くしていきます。
「これぐらいでいいですか?」
「おう、これぐらいでいいな。」
アズラクさんは石の斧を振りながら答えました。
「トーン君は木の上に戻ってくれ。次の魔物はアズラクに頼む。」
「任せてくれ。」
再び、湖に向けて移動していると、次はゴブリンを5体感知しました。
「ゴブリンが5体か。アズラク。」
「おう。」
アズラクさんがゴブリンに向けて、石の斧を構えて走っていきます。
「ギャッ!ギャッ!」
ゴブリンの1体が、アズラクさんに気づいて叫びましたが、アズラクさんの斧によって、5体まとめて真っ二つになりました。
「まあまあだな。」
「石の斧は使えそうか?」
「ここらの魔物を狩るくらいなら余裕だな。街に戻るまで使っていいか?」
「はい。大丈夫です。石は余裕がありますので。」
「そうか、装備の消耗をせずに済むからな。助かる。」
その後も、フォレストウルフを4体斧で倒してマジックバックに入れ、しばらく移動すると、大きなスライムがいた湖が見えてきました。
「あそこに大きなスライムがいます。」
湖の近くに大きなスライムがいるのが見えました。
「そうか、アービ。」
「ええ。”アイスショット”」
アービさんの放った”氷魔法”が大きなスライムを貫くと、大きなスライムが崩れました。
「魔石が飛んで行ったな。取ってくる。」
あっさりと大きなスライムを倒し、ブラウさんが魔石を取りに湖に近づきました。
「残念。魔石は湖の中に落ちたようだ。」
「あちゃー。威力が強すぎちゃった。」
「少し待ってくださいね。」
ニールさんが湖に近づく来ました。
「トーン君。”魔力感知”で魔石がどこにあるかわかりますか?」
”魔力感知”に集中すると、動かない魔力の塊を感知しました。
「はい、感知できます。」
「”アーススパイク”」
湖の中から石が生えました。
「あの石からどれくらい離れていますか?」
「斜め右の奥の方ですね。えーと、アズラクさんの斧2本分くらいかな。」
「”アースライズ”」
湖から土が盛り上がり、その上に魔石が乗っていました。
「よっと。」
ブラウさんが助走をつけてジャンプし、魔石が乗っている土に乗りました。
「ニール。頼む。」
「”アースライズ”」
ニールさんとブラウさんの真ん中あたりに、土が盛り上がりました。ブラウさんが戻って来ると、土は湖の下に戻りました。
「これで大きなスライムの討伐は完了だな。」
「ええ。これからどうする。」
「俺は奥の方に行ってみたい。地上での活動は久しぶりだからな。」
「そうだな。俺も少し奥に行こうと思う。みんなはどうする。」
「私はパス。この湖にいるわ。」
「私は行きますわ。少し運動しておきたいですので。」
「トーン君。石の剣を用意してもらってもいいかな?」
「はい。石はまだまだ余裕があるので大丈夫です。」
ブラウさんの持っている剣と同じくらいの長さの剣を先ほどの斧のように石を圧縮しながら出しました。
「うん。重さもちょうどいいな。トーン君はここでアービと一緒に待っていてくれ。」
「はい。わかりました。」
「アービ、トーン君を頼んだ。」
「わかっているわ。」
「奥に行こう。」
ブラウさん達が湖の奥の方に向かい歩いていきました。
「それじゃ、私たちはここでゆっくりしましょ。」
アービさんは湖の近くに座りました。
「湖の周りのものを採取していいですか?」
以前、この湖に来た時、ヒール草や冷草があったため、ギルドに納品しようと思い尋ねました。
「構わないわ。魔物が近づいてきたら私に言いなさい。」
「はい。」
湖の周りを確認していると、ヒール草や冷草、薬草、毒消し草が生えていたため、たくさん採取できました。
「そういえば、掘り出し物市場で玉を付けた杖が売っていたらしいわね。」
採取したものを束ねていると、アービさんに尋ねられました。
「はい、いくつか売りに来ていました。」
「それって私たちがダンジョンから戻ってきた日だったでしょ?」
「はい。そうです。」
「はぁ~。惜しいことをしたわ。もう1日早く戻っていて、朝一で行けば買えたのに。」
「昨日はなかったのですか?」
「残念。昨日は1日中寝てたわ。」
「1日中ですか?」
「ええそうよ。あれ、それじゃ、結局買えない?」
「朝一に買いに行かないと売り切れると思いますよ。」
「そうよね。はぁ~。武器屋に頼んでも入荷できないらしいし、トーン君のおかげで手に入った玉は杖に付けてもらうよう依頼したけど、1週間後なのよね。」
「結構時間がかかるんですね。」
「ええ、そうなのよ。杖にただ付けるだけじゃ効果が十分に発揮できないらしいわ。」
「じゃあ次のダンジョンでは使えないんですね。」
「そうなのよ。早く使いたいわ。」
その後も、採取したものを整理しながら話しているとブラウさん達が戻ってきました。
「いい運動になったよ。トーン君、石の剣ありがとう。」
「石の斧、助かったぜ。」
石の剣と斧を受け取って、体に戻しました。
「それじゃ、ギルドに戻ろう。」
ギルドに戻る道すがら、祭りについて教えてもらいました。
「そういえば、1500年祭は8月15日に行われるから、お金はしっかりと貯めておいた方がいいよ。」
「何かあるのですか?」
「教国から職人が何人か来て出店するらしいからね。」
「そうそう。教国から来る職人は腕がいいから、楽しみよね。」
「そうだな。俺も斧を見るつもりだ。」
「私も杖を見るわ。」
「トーン君は解体用のナイフか杖がいいだろう。間違っても近接武器は持たないように。まだ体が小さいからね。魔物と正面から戦うには大きくならないと危ない。」
「わかりました。杖ってことは魔法なら大丈夫なのですか?」
「そうだな。トーン君はMPがどんどん増えていくから、魔法でなら問題ないだろう。木の上から安全に攻撃できるのもあるかな。」
「でもね、MPを使い切るのは森の中では危ないから、あんまり使わないようにね。石を落として倒せるんだから交互で倒すようにしなさい。」
「わかりました。魔法を使えるようになったら、MPを使い切らないように交互にします。」
道中の魔物を倒しながら話していると、森を抜けました。
ギルドに大きなスライムの魔石を提出し、依頼を達成し、報酬の銀貨1枚を受け取りました。”蒼雷の剣”のみなさんも報酬を受け取り、挨拶をして今日は別れることになりました。採取したものをギルドに提出し、銅貨20枚を受け取り、食堂で昼を取りました。
午後も森に入り、採取を行い銅貨6枚を受け取り今日も無事に1日を終えました。
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