第5話 蒼雷の剣
朝に買い物をしていたため、いつもよりも少なく、薬草2束・毒消し草1束の採取で銅貨2枚、ホーンラビットを4匹納品し銅貨6枚、合計銅貨8枚になりました。
ギルドに戻ると、冒険者パーティの”蒼雷の剣”がダンジョンから戻っていました。”蒼雷の剣”はB級のパーティであり、この街で現在トップの冒険者パーティです。
メンバーは、短髪青髪の男性ブラウ、副リーダーで幼馴染の長髪青髪の女性アービ、短髪青髪の男性アズラク、長髪青髪の女性ニールの4人です。
固有は、ブラウさんは魔法剣士、アービさんは魔法使い、アズラクさんは戦士、ニールさんはシスターであるため、バランスが取れたパーティとしてこの街では有名です。
「よう、トーン。調子はどうだ?」
「アズラクさん、こんばんは。調子はいいかな?常設依頼を受けることができていますし。」
「そうか、なら問題ないな。どうだ、一緒に飯を食わないか?」
「いいんですか?」
「ああ、長くダンジョンに籠っていたからな。リーダーも色々聞きたいようだしな。」
「ありがとうございます。」
「トーン君、久しぶりだね。」
「おっ、もう終わったのか?」
「ああ、装備の鑑定は明日には全部終わっているだろうから、換金した魔石の分配をしようじゃないか。」
「ちょうどトーンを飯に誘ったから、そこでやろうぜ。」
「そうか、ならちょうどいいね。一緒にいつものところに行こうか。」
「はい。ありがとうございます。」
「あら、トーン君も一緒に来るのね。」
「体調は大丈夫でしたか?」
「はい、ご一緒させていただきます。体調は大丈夫です。」
「なら早く行きましょう。お腹もすいているでしょ。」
「ああ、そうだな。早速行こうか。」
”蒼雷の剣”のみなさんと、ダンジョンの話を聞いたり、宝箱の中から出た装備について聞いていると、冒険者に人気の”ベアーミート”に着きました。
「蒼雷の剣か、ダンジョンから戻ってきたのか。」
「ああ、ついさっき戻ってきたのさ。いつもの部屋を頼む。」
「なら3番の部屋が空いてるぜ。」
「おススメを6人分と酒を頼む。後は果実水もだ。」
「銀貨125枚だ。酒代は後で払ってもらうぞ。」
リーダーのブラウさんが銀貨120枚を払い、3番の部屋に入りました。”ベアーミート”は2階と3階が宿屋でもあり、泊まっている人は個室を利用することができます。
個室に入るとすぐにお酒と果実水が運ばれてきました。
「久しぶりの酒はやっぱ上手い!」
「そうね、体にしみるわ。」
「ええ、飲みすぎてしまいそうですね。」
「今日は構わないさ。しばらくは休む予定だからな。」
「みなさん、お疲れ様です。」
僕も果実水を飲みながら、最近の街の様子について話していると、食事が運ばれてきました。
「そうか、冷草の依頼が来たのか。まあ、雪が降らなくなったとはいえ、まだまだ寒いからな。」
「そういえば、この時期だったっけ、風邪が流行ったのは。」
「ええ、そうでしたね。最終的に教会が動いたから、酷くはならなかったですが。」
「教会は相変わらず動かないんだな。てか、ダンジョンにいたよな。」
「ああ、教会に勤めている司祭と騎士の固有持ちを見かけたな。」
「教会は3人しかいないから、いつも1人しかいなよね。」
「教会って病気も治せるんですか?」
「そうか、確かトーン君の村は小さくて教会がなかったのか。教会には必ず1人、司祭やシスター・神父の固有を持つ人がいて病気を治すことができる固有のスキルを持っているのさ。」
「ならなんで病気を直ぐに治さないのですか?」
「教会は、女神トラデンミティを信仰しているトラデンミティ教国から来ている人たちだからね。この国の問題はこの国の人で解決するように言っているのさ。」
「なら何でこの国に来ているんですか?」
「それは、この国、アマノレッド王国とトラデンミティ教国との間で、固有の鑑定に関する取り決めをして来てもらっているのさ。固有はその人の人生に大きくか関わっているから、悪用されないようにするためにね。」
「固有の鑑定のためにですか。」
「後は、孤児院の経営もしているかな。寄付ではなく、ダンジョンで得た物で経営しているから、教会関係者はみんな強いからな。」
「そうだな、あいつらは滅茶苦茶強ええ。俺たちが4人で潜っているダンジョンもたったの2人で散歩感覚で来ているからな。」
「確か、孤児院で育った子のほとんどはトラデンミティ教国に移り住んでるんだっけ?」
「ええ、そうですね。少なくとも、王国よりも就ける仕事が多いはずですからね。」
「一時期、王国で孤児が教国に行くから、何かしているんじゃないかと貴族が文句を言ったことがあったらしいな。」
「ああ、あったな。結局、文句を言っている貴族達の目論見は教皇に看破されて降格されたんだったか。」
「目論見って何ですか?」
「それは、まあ、あれだ。俺たちも詳しく知らん。」
「発表されなかったからな。知っているのは関わった人たちだけだな。」
「まっ、碌でもないことでしょ。気にする必要はないわ。」
「そういえば、頼みたいことがあったんだ。」
ブラウさんはマジックバックから石を4つ出しました。マジックバックはCランク以上のダンジョンの宝箱からまれに出る見た目以上に物が入るバックで、持っていることが1流の冒険者の証です。
「Bランクダンジョンだから、もしかすると玉が入っている可能性がある。ぜひ、喰ってみてくれ。」
「宝石が入っているかもしれないでしょ!」
「ああ、そうだな。とにかく頼む。」
「それじゃ、早速喰ってみますね。」
1つ目を喰ってみました。
「どうだった?」
「何もないですね。」
2つ目を喰っても何もなく、3つ目の石を食べると口の中に違和感がありました。
「うっ!」
「ここに出してくれ!」
お皿を差し出してくれました。お皿の上に口の中の物を出すと黄色と青色、黒色の小さな玉が出てきました。
「すごい!ほんとに石の中に玉が入っているなんて。特に黄色の玉が手に入るなんて!」
みんなが喜んでいる間に、僕は果実水を飲んで口の中をすっきりさせます。
「ほんとに助かったよ。石は専門のところに頼んでも、失敗することがあるからね。これは報酬さ。」
そういいながら、ブラウさんは金貨を1枚取り出しました。
「いや、こんなにおいしいものをごちそうになっているのにお金はもらえませんよ。」
「これぐらい構わないさ。玉の方が遥かに高いからね。実際この大きさの玉なら1つ金貨10枚だしね。依頼料は金貨1枚。中に何もない石でも返金はなしだからね。」
「玉はほんとに高いのもあるけど、すぐに売れるから手に入らないのよ。手に入ったのは白と緑だけだしね。」
「ありがとうございます。」
金貨を恐る恐る受け取って、石で包んだあと、袋に入れました。
「便利だな、相変わらず。石で包んじまえば、金貨とはわからんな。」
「はい。この固有にはほんとに助けられています。」
「お前が成人して1人前の冒険者になった時が楽しみだ。」
「だからこそ、その固有は秘密にした方がいいね。貴族は特に信用できないから。もしもの時は、僕たちに頼るか、場合によっては教会に頼むといい。」
「そうよね、貴族には絶対に知られない方がいいわ。」
「最後の手段としてトラデンミティ教国に逃げ込むことも考えた方がいいでしょうね。」
”蒼雷の剣”のみんなの話を聞くと、貴族がとても怖い人たちであると思いました。ニールさんの言葉から、トラデンミティ教国の方が信用できるとわかります。
「絶対にばれないように気を付けます。」
「最後の4つ目の石も頼んでもいいか?」
「はい。」
4つ目の石を喰うと宝石があったようです。
「どうだった?」
「宝石がありました。出してみますね」
宝石を掌に出してみると、赤色と青色、紫色、黒色、黄色、透明な小さな丸い宝石が出てきました。
「ほんとに綺麗ね。削ったりしなくても石を取り除けるからすごいわね。」
「ええ、ほんとに綺麗ですね。」
アービさんとニールさんは宝石をうっとりとした表情で眺めています。
「Bランクのダンジョンから出る石の中の宝石は、これぐらいの大きさになるんだな。」
「思ったよりも大きいな。それじゃ、報酬として金貨1枚を渡そう。」
「ありがとうございます。」
宝石を渡して、代わりに金貨1枚を受け取りました。
「これってさ、もっと大きくできるかしら?」
アービさんが恐る恐る聞いてきました。
「宝石を喰えばその分だけ大きくすることはできますけど。」
「なら、もっと大きくしてもらおうかしら?」
「おいおい、大きくしてどうするんだよ。」
「大きい方が綺麗でしょ。ね。」
「そうですね、ぜひ大きい宝石を身に着けたいですね。」
「ダンジョンで石の中から宝石が出た時は頼んでもいいかな?」
ブラウさんは苦笑しながら僕に頼んできました。
「はい。大丈夫です。」
「そう言ってもらえると助かるよ。」
「ええ、よろしく頼むわ。」
「ぜひ、お願いします。」
「そういえば、ステータスについて聞きたいことがあるのですが聞いてもいいですか?」
鑑定によるステータスの変化について聞くことにしました。
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